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「ここは異世界だよ」編

十話めぇ~ 「ギルドに登録だ!」

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「だよな! やっぱりおかしかったもん!」

 さきほどの店でのやり取りは、誰が見ても頭に「?」を浮かべるだろう。
 絶対にびっくりするよ。入った瞬間から怒号だもんな。
 あるいは「!?」だ。

「?!」

 順番じゃねーから!!
 大切なの順番じゃねーから!!
 !と?の順番どうでもいいから!!!

 いろいろと意見はあるが、個人的には「!?」が好きかな。
 びっくりしてから「どういうことなの?」と疑問に思う感じが出ている。
 まあ、どっちでもいいが。

「でもさ、モヒカンならあれが普通なんだよ。スズキさん見たでしょ?」

 まあ、たしかに相手がモヒカンだったら、あれくらいの啖呵は必要かもしれないな。
 マッド・スズキさんなんて、いきなり火炎放射かますからな。しかも踏まれたし。

 モヒカン族は基本的に「ヒャッハー!」な人が多いので、最初に自分が格上であることを示さねば話もちゃんとできない。
 簡単な話「覇王様に敬礼!」という感じでいかないとダメなのだ。
 なめられたら終わりなのはわかる。

 でも、今度の相手は素人だ。トーシロだ。一般人だ。
 完全に強盗だと思ったに違いない。

「強盗じゃないよ。触角置いてきたもん」

 欲しくない!
 絶対にあいつは欲しくなかった!

 あんな芋虫の触角なんて役に立たないだろう。
 換金しても、日本円で千円になるかどうからしいしな。

「涙を流して喜んでいたじゃん」

 泣いてたんだよ!!!!
 明らかに怖がっていたじゃないか!
 お前が黒サイ見せるからさ。

「で、いくら入ってたんだよ」

 問題はそこだ。
 ぷるんの手には金貨がたっぷり詰まった袋がある。かなり重そうだ。

 慌てていたが、ほぼ金庫にあるお金を全部持ってきた感じだったし、嫌な予感しかしない。
 頼む、数十万単位であってくれ!

「うーん、五百万くらい?」

 やっちゃったよぉおおおお!!
 俺らもう完全にやっちゃったよ!!
 これ完全に強盗だよ!

「違うよ。押し売りだよ」

 もっと悪いわ!!
 合法的に見せかけるからもっと悪い!
 弱気な人間につけ込んだのはもっと悪質だ!

「やー、失敗、失敗。あはは」

 笑顔だ。
 ねえ、どうして笑顔なの!?

 こいつのハートの図太さどんだけだよ。
 毛が生えているってレベルじゃないぞ。

「ぷるん、謝ろうぜ。今なら間に合うって」

 そうだよ。謝ればいいんだ。
 こういう問題が起きたときってさ、やっぱり誠意をもって謝るべきだと思うんだ。

 どんなに責められても謝るしかない。
 とりあえずお金は返せば犯罪者にはならないからな。

「ん? そういえばここって警察とかあるのか?」

 日本なら警察官がいるな。まずは逮捕だ。
 だが、この異世界だとどうなんだろうか?

「モヒカン族の支配地域だったら、親衛隊がジープに乗ってやってくるよ」

 見てぇえええええええ!!
 ちょっとマジ見てぇええええ!

 ひゃっはーーー! の集団だろう?
 そりゃ見たいよな。
 汚物は消毒だ、はもう見たから、今度は「お前が飛ぶんだ」が見たいな。

「やっぱりやばいって。謝ろうぜ」
「ねえ、シゲキ君、人に謝るくらいなら死んだほうがましだと思わない?」

 思わねーよ!!
 謝ろーーーー! なあ、謝ろうぜ!

 ちょっとは反省しろ?
 どんだけ好き勝手生きてるんだ、こいつは!

「私、生まれてから謝ったことないし」
「うん、知ってる」

 それは知っている。
 よく今まで捕まらなかったと感心しているよ。

 生きていてごめんなさい、とかリアルで思ったことがあるやつはぷるんを見習え。
 真面目にやっているのが馬鹿らしくなるぞ。

「でも、今ようやく謝れるかも」

 おっ、それはいい心がけだな。
 そうそう。案外謝れば許してくれるもんさ。
 さあ、勇気を出そうぜ!!

「シゲキ君から借りたラピュタのブルーレイを売ってごめんなさい!」

 初耳!!
 今びっくりして耳が飛び出したかと思ったよ!!
 どうりで返ってこないと思ったんだよ!!

 ちょっと血管切れそうになったが、ここで切れてはいかん。
 寛容の精神で望もう。

「おかげでDVDのラピュタが買えたよ」

 俺のブルーレイィィイイイイイイ!!
 ブルーレイを売ってDVDを買うなよ!
 しかも同タイトルじゃねえか!!

「だって、PS2しか持ってないし」

 3を買えよ!
 今はもう4の時代だぞ!!

「せめて金だけは返そうぜ」
「だが、断る」

 そういうときに使うもんじゃないから!!
 それって、もっとカッコイイときに使うもんだからな!!
 言葉的には間違っていないけど、それじゃただの悪党だからな!! な!?

「シゲキ君、今思い出したんだけどさ、もう一つ方法があるよ」

 けっして謝らないらしい。
 そっちの方向は消すらしい。

「なんだよ、また悪事じゃないだろうな」

 こいつを信用するのが怖いわ。

「今度は大丈夫だって。いいからついてきて」
「本当か? 約束できるな」
「わかったよ。これからはちゃんとおとなしくするよ」

 まあ、言い争いをしていても仕方ない。信じよう。
 信じてあげねば人は成長しないからな。


 ぷるんと一緒に町中を歩く。

 正直俺はいつ捕まるのかと不安…いや、「ヒャッハー、悪い子いねーが?」とか言ってモヒカンが来るのをちょっと期待しつつ、ぷるんの後についていく。

 そして、ちょっと大きめの建造物の前に来た。

「冒険者ギルド?」

 看板にはそう書いてある。
 あー、なんかRPGやファンタジーでよくあるよな。

 ん? どうしてぷるんはここに来たんだ?
 冒険者やりたいのか?

「まさか冒険者になって逃げる気じゃないだろうな?」
「違うよ。まっとうな方法だよ」

 ぷるんは自信満々だ。
 どうしてそんなに自信があるのか俺には理解しがたいが。

「そろそろ教えろよ」
「実はさ、思い出したんだけど、冒険者になると今までの犯罪歴が消えるんだよね」


「だから、冒険者になる!!」


 そんな理由でーーーー!?

 冒険者って希望に溢れた少年とかがなるものじゃないのか!?
 あなたのお父さんは実は…みたいな流れで、冒険をしながら探すみたいなさ。

 まあ、それはレアとしてもだ、普通は異世界に飛ばされてお金を稼ぐ必要があるから仕方なく、とかがセオリーだろう!?

 犯罪者だから!?
 犯罪を帳消しにしたいからなるの!?
 俺もこの歳までいくつものゲームや物語を見てきたが、ヒロインがこんな理由でギルドに入るのは初めて聞くぞ!!

 ぷるんの話だと、冒険者は危険な職業なので荒くれ者を集めるためにこういった制度になっているらしい。
 たしかにそれなら人は集まるよな。
 集まるといっても、元前科持ちのヤーさんたちで溢れそうだが。

「さあ、入ろう」

 ぷるんは本気だ。
 謝るのが嫌だからという理由で、犯罪を帳消しにしたいがために冒険者になる。
 こいつの底が知れない。

 もしかしたら俺はとんでもないやつと一緒にいるのかもしれないな。
 こいつ、いつか世界を獲るぞ。俺もついていくか。

「あっ、ここペット禁止だった」

 入れろよぉおおおお!
 主人公入れないのっておかしいじゃねぇかよ!!
 ギルドに主人公入らない物語なんて聞いたことねえよ。

「じゃあ、ちょっと待っててね」

 仕方ない。今の俺はヒツジなのだ。
 おとなしくぷるんの帰りを待つとしよう。

「そういや、こういうときってイベント起きるよな」

 新人冒険者のいじめられている若い兄ちゃんを助けるとか、入った瞬間強面にいちゃもんつけられたりとか。
 むぅ、そうなるとぷるんが心配だ。

 あいつはヒツジ戦士だが、まだレベルは1のはずだ。
 強いのは強いんだが、あくまでビビルンとかの弱い相手に限られる。
 こうした冒険者ギルドにはレベル高い強いやつもいるよな。絡まれたらやばいぞ。

「おい、そこのかわいこちゃん!!! ちょっと顔貸せ!」

 ほらな。
 来た来た、フラグ来たよ。
 もうわかってますよ。へへっ。

「お嬢ちゃん、ここがどこだかわかっているのか? へへへ、いいんだぜ。そっちがその気なら強引にやったってよ」
「そんな、横暴です」
「うるさい! さっさと言うことを聞け!」
「やだぁああ、やめてぇえ!」

 やばい!!
 こいつは本当にやばそうだ!!
 あのぷるんがこんな声を出すなんて初めてだ!

 来た、フラグ来た!!
 ここは俺がぷるんを助けるためのフラグなんだ!

 ついに主人公フラグ来たぁああああ!

「ぷるん、大丈夫か!!!」

 俺はヒツジであることを忘れてギルドに飛び込む。
 こうなったらとことんやってやるぞ!
 俺の不死身スキルをなめるなよ!!

「ら、ラム肉をやるからぷるんを離せ!」

 そんな目で見るなよぉおおお!
 しょうがないだろう。俺にできることはラム肉を提供することだけだ。
 とりあえずジンギスカンでも楽しめよ。




 しかし、俺がそこで見たもの。







 それは、おねえ系のモヒカンに黒サイを突きつけているぷるんの姿であった。







ぷるん:「お嬢ちゃん、そんな可愛い顔してなめちゃいけないぜ。言うことを聞きな!!」

おねえモヒカン:「いやぁああ! お願い、許してぇぇ!」




 ぷるんんんーーーーーーー!!



 またお前かぁぁぁああああああ!!!




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