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「ここは異世界だよ」編

十五話めぇ~ 「レベル上げだ!」

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 ドルルル
 ガルドッグが二匹、ホワイトマッシュが二匹現れた

 ガルドッグAの攻撃
 ガキン
 ぷるんは篭手でガードした

 ガルドッグBの攻撃
 シュッ
 ぷるんには攻撃が当たらない

 ぷるんの反撃
 ドルル! 痛恨の一撃!
 ガルドッグBは七十のダメージを受けた
 ガルドッグBは死んだ

 ホワイトマッシュAの攻撃
 臭い息を吐いた
 シゲキは刺激で目が見えない

 ホワイトマッシュBの攻撃
 腐敗液を吐いた
 シゲキは鼻が麻痺した

 ぷるんの斬撃攻撃
 ズバシャッーー!
 ガルドッグAは四十のダメージ
 ガルドッグAは死んだ

 シゲキは悶えている

「目がーー! 目がぁああーーー!」
「シゲキ君、ちゃんとやってよ!」

 違うんだーー! 目がーーー!
 あのキノコモンスターの息で目が痛いーー!

 ぷるんの範囲攻撃
 ブーーーーンッ!!
 ニッキーを振り回した

 ホワイトマッシュAに二十五のダメージ
 ホワイトマッシュAは死んだ
 ホワイトマッシュBに二十八のダメージ
 ホワイトマッシュBは死んだ



「シゲキ君、何してたの?」


 ガーーーーーンッ!
 ぷるんの目が厳しい。

 だって、あいつの息が…息がぁああ!
 オッサンが寝起きの朝に感じる口の中の臭さ以上のパワーだったぞ。

 一瞬で目と鼻がやられて、のたうち回っていた俺。
 結局四匹ともぷるんが倒したんだよな。

「つーか、範囲攻撃なんてあったのか?」
「さっき覚えたみたい」

 範囲内の敵を同時に攻撃する技のようだ。
 相手の数でダメージが分散されるが、雑魚相手にはかなり使える技だな。

 俺たちは朝、正確にいえばぷるんが寝坊したので昼前からレベル上げに励んでいた。
 今の戦闘を見てわかるように、ほとんどの敵はぷるんが倒していた。

 だってしょうがないじゃんか。
 ガルドッグは速すぎて当たらないし、あのキノコの特殊攻撃は防げないし、イヤージョーは空にいるからミサイル発射したら俺無防備だし。
 結局こうして周りをうろうろして相手の注意を逸らすことしかできないんだよな。

「私は楽だけどね」

 そりゃ俺が嫌な攻撃くらってるからな。
 その間にぷるんが背後から攻撃するパターンが一つの必勝法にもなっていた。
 だが、それはあまりにもきつい。何とかしたいのだが…

「とりあえずシゲキ君もレベル3だね」

 倒した相手の経験値は直(ちょく)で入るのだが、パーティーで戦うとお裾分けがあるようで、俺もいるだけでレベルアップする。
 おかげでレベルが上がった。
 HPが10になった。MPも5になった。

「なあ、俺のMPって何に使うんだろうな」

 ずっと疑問だったんだよな。
 増毛は年齢を消費するからMPって必要ないみたいなんだよ。
 じゃあ、何に使うんだ?

「MPがあるってことは、何か他のスキルを覚えるってことじゃないの?」

 おおお! そうだよな!
 増毛や不死だけじゃ嫌だもんな!
 思えばまだレベル3だ。これからどんどん覚えるのだろう。

「気がついたんだけどさ、スキルってレベルじゃないみたいだね。私の範囲攻撃もやってみたらできたって感じだし」

 そうかもしれん。
 ぷるんのステータスを見ても使った直後にスキルが追加されている。
 現在のぷるんには「野性化」「範囲攻撃」「ナックル攻撃」が追加されている。

 ナックル攻撃は篭手で相手を殴ったあとに追加されたそうだ。
 やっぱり本来の篭手は防御が目的で、攻撃は特殊な部類に入るようだな。

「俺もいろいろとやっているんだけどな…」

 自分なりにがんばって戦っているんだが、特にスキルを覚える気配がない。
 増毛も不死も特殊だしな。普通にやっていたら気がつかないものばかりだ。

「ヒツジさんのスキルって、生存時間にもよるんじゃないのかな?」

 ぬっ! そうかもしれん!
 不死スキルは一度発動してから覚えたが、増毛スキルは時間で覚えたような痕跡がある。
 ということは長く生きていれば何か覚えるのか?

「二年以上生きたら死ぬみたいだよ」

 ラム肉ーーーー!
 ラム肉にこだわるからそういう設定になるんだよ!
 横暴!! それ作者の横暴じゃね!?

 だってあれだろ?
 ラム肉じゃなくなったら題名変えないといけないからっていうことだろう?
 だから俺をスケープゴートにするんだろう?

「あはは、うまいねー。ヒツジとスケープゴートかけてるんだねー」

 どこが面白いの!?
 人の不幸を楽しむのはやめろ!
 二年ギリギリまで生きたら何か覚えそうだが、メガンテ的なスキルを覚えそうで怖い。


 たしかサンドシャークは、このさらに先にある砂漠に出るんだよな。
 あまり距離が離れてもたどり着くまでに消耗するので、もう少し近くに行くことになった。

「くくく、あと四十匹か」

 先頭を歩く俺の背後でニッキーを握りしめてぷるんが何かつぶやいている。
 …怖い。すごく怖い。
 背後で包丁持ってぶつぶつ言っている人間がいたら、とてもじゃないが正気ではいられないぞ。

 すでにあいつは呪われているんじゃないだろうか。
 せめて俺だけはまともであろうと思う。

 ちなみに俺が先頭で歩いているのは、何かあったときのための保険だ。
 俺は最悪死んでも大丈夫だし、逆にぷるんに何かあったら俺だけでは無力だから、この判断は妥当だよな。

 ガツッ ずさーーーー!
 うあーーーー! 転んだーーー!!

 何かいろいろと考え事していたら転んだーー!
 いってぇーーー! これは痛い。

 今気がついたんだが、ヒツジって転ぶと受け身取れないんだよな。
 特に馬とかウシとかヒツジとかさ、倒れるとマジ無防備なんだよ。

 くそー、いてー。

 つーか、なんだよ、何につまづいたんだ?

 ボコッ ボコッ

 俺がつまづいたであろう突起が大きくなる。
 そして、そこから青いトカゲのようなものが二匹這いでてきた。
 長さ二メートル、コモドオオトカゲくらいだ。けっこうでかいぞ!

「あっ、引きこもリザードだ」
「なんだその名前は」

 そのネーミングセンスに異議を申し立てたいな。
 土の中に引きこもっているから名付けたんだろう?
 まあ、安易なネーミングだな。

「あまりの無職ぶりに対応しきれずに、親から見捨てられたトカゲの精鋭だよ」

 精鋭じゃねえよーー!!
 どう考えても精鋭じゃねえから!
 やめてくれよ、その精鋭の意味!

 俺は昔ニートの先輩から、無職天下一武道会なるものが開催されていることを知った。
 たしか優勝者は三十五年間一度も働いていないやつだった気がするが…
 もうやめよう。痛々しい。

「リアジュウシネ!」

 しゃべっちゃった、引きこもリザード!
 顔が青いのは普段外に出ないかららしい。

 そういう気配り無意味だからやめような!
 つーか、俺はリア充じゃねえから!
 ヒツジになった哀れな中二だぞ!

「アノコロハ、ユメガアッタ!」

 何この激しい痛みは!!
 このトカゲ、きつい! 早く終わりにしたい!

 HリザードAの攻撃
 
 Hにしたらなんだかカッコイイからさ!
 なあ、Hが引きこもりだって誰も思わないからさ!

「違う意味のHかもよ」

 やめろーーーぷるんんんーーーーーー!
 三十五年間、一人でいるなら答えはおのずとわかるな!?
 想像するのも痛々しいよ!!


 改めてHリザードAの攻撃

 尻尾を振り回した
 ぷるんは3のダメージ
 シゲキは1のダメージ


 いてっ!!
 こいつ、意外と速いぞ!
 今回はぷるんも避けきれずにしっぽのダメージを受けた。

「ぷるん、大丈夫か!」
「私に傷をつけた…」

 ぷるんの頬には赤い擦り傷が見えた。尻尾がかすったんだ。

「私に傷を…」

 ぷるんは漫画のラスボスのような台詞を吐いて呆然としている。
 カッコイイよな。俺も一度言ってみたい。中二だからいいよな?

「ぷ、ぷるん。大丈夫か?」

 どうやらショックを受けているようだ。
 そりゃそうだよな。女の子だもんな。顔に受けたらショックだよ。

 今までダメージを受けなかったことがすごいんだ。
 ただ、それはヒツジ戦士という職業の基礎能力が高いからなんだよ。

 やっぱりぷるんも女の子なんだ。あまり無理は…




「私に傷をつけたなぁああああ!!」




 ぷるんの目が赤に染まったと同時に、身体の周囲が赤く燃える。
 それがニッキーに集まっていく!

 え!? なに? どうなってるの!?
 え? これ十二英雄伝じゃないよね!?

 ぷるっと企画燃焼系作品じゃないよね!?
 戦気(せんき)!? 本当に戦気なの!?
 これまずいやつじゃね!?


 ぷるん、怒りの反撃

「シネぇぇえええええええ!」

 大恨(だいこん)の一撃!!!

 ドッゴーーーーーーン!



 HリザードAはバラバラになった



 エエエェェエエエーーーーー!!!

 ダメージ表示がなーーーーい!
 即死! 即死攻撃なの!?

 つーか、ややこしい表記になってるから!!
 「大根」と非常に似ていてややこしいから! って、なにあれ!?
 それよりぷるんがおかしいよ!!

「ふーーーふーーー! 貴様もシネぇええ!」

 同様にもう一匹のHリザードもバラバラになった。
 俺はただただその惨状を見ていることしかできなかった。
 残ったのは散らばった肉片だけだ。

 ひぃいい! グロ!! 目玉落ちてるーーー!!
 こういうの俺はあまり見慣れてないんだよなーー!!

 俺が殺されてラム肉になるとこんな感じなのか!?
 これマジできついわ!! 直視できねーよ!!
 まあ、まだトカゲだからいいが、人型だったらシャレにならんな。

「ぷ、ぷるん? 大丈夫か?」
「あはは、ちょっと興奮しちゃった」

 違う…あれは興奮というレベルではない。
 野性化…なのか?
 だが、それよりももっと激しいような…

「新しいスキル覚えたよ。ダメージ百倍返しだって」

 えぇぇえええーーーー!
 じゃあ、ダメージ三百与えたの!?
 相手が三なのに? わざわざ百倍にして返したの?

 俺が見た限りでは、あの引きこもりたちはそんなにたいしたことやってないんだよな。
 ちょっと叩いたというか、なんていうのかな。ちょっと調子に乗っちゃっただけなんだよな。

 中学生が調子に乗って筋者のベンツに傷をつけちゃったくらいなんだと思うんだ。
 「まあまあ許したれや」くらいな気持ちがあっていいと思うんだが、ぷるんのそれは子供相手にマジ切れしたヤクザレベルの仕返しだ。

「野性化している状態で攻撃されると、たまに発生するみたい」

 制御できないものばかりじゃんかよー!
 いつキレるかわからないと怖いよ。
 しかもいつの間に野性化したんだ?

「シゲキ君が倒れた時、なんだか燃えちゃってね」

 どういうことなの!?
 それは俺が獲物に見えたってことなの!?

 思わず狩りたくなっちゃったの?
 いややわ、こんな人が後ろを歩いているのいややわーーー。

「あっ、引きこもりの肉は食べられるから取っておこうね。皮は…ちょっと駄目かな」

 バラバラになったからな。
 そのまま焼けば食べられそうだが、どうせ俺は草しか食べないからどうでもいいか。

 結局俺はスキルを覚えなかったな。
 ぷるんはすごいの覚えたのにな。
 ちぇっ、俺も何か覚えたかったぜ。


「ねえ、今回もう終わりだけど最後の叫びネタはないの?」

「サザエさんじゃないんだぜ。必殺のネタなんてねえよ」

「サザエさん、いいね! アレやってみてよ!」

「しょうがないな。フリだけだぞ?」







 んがんんっ!











 シゲキは死んだ。






「シゲキくぅーーーーーーん!!」






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