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「牧場を拡張しよう」編

二十六話めぇ~ 「初素材売り」

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「それじゃ、シゲキ君にキレが戻ってきたから素材売りに行こうか」
「俺は欲しくなかった!!」

 いつもそうだ!
 俺はいつだっていらないスキルが手に入る!
 キレ芸なんて欲しくなかった!

「竹山さんrespectしてるんじゃなかったっけ?」
「おいーー! 英語!! そこだけ英語か!?」
「いや、変換で出ちゃったからさ。スペルこれでいいのかな?」

 さすがポメラさんだ。ちゃんと変換してくれるぜ。
 というかデジタルメモのポメラさんは変換神だからな。
 ポメラさん、マジrespectしてるっす!!

 そういえば前にCMで「先輩のことrespectしてますけど…」とかいうのがあったな。
 あのときは「おい、尊敬してますけどでいいだろう!」と毎回テレビにつっこんでいたのが懐かしい。
 だって尊敬のほうが一文字少ないし、漢字ならば圧倒的に文字のコスパいいしな!

 それより竹山さん、久々に見たら芸風が変わっていた気がするぞ。
 普段テレビ見ないからよくわからんが、人生いろいろあるなと思ったよ。

「素材かよー、今度は大丈夫なんだろうな?」

 そういえば素材はそこそこ溜まっている気がするな。
 この世界の基本として素材を売るのはちゃんとした生計を立てる仕事だ。
 お金を稼ぐならこれが最初に来るのはわかる。

 が、それ以前の問題として俺は素材という言葉にいい思い出がない。
 田中さんというトラウマが蘇ってしまうからな。
 あれは酷かった…。

「大丈夫。今回もちゃんとやるよ」

 今回「も」?
 ここで一つ判明したことがある。

 こいつにとって最初のアレは大成功だったらしい、ということだ。
 ビビルンの触角が五百万で売れたのだから、そりゃ大儲けといえるだろう。

「だが、それは犯罪だ!!!」
「もう時効じゃん。終わったことに囚われるなんて器が小さいね」

 お前が言うなよぉおお!
 そしてさらに思えばそのためにギルドに入ったんだよな。
 結果的には田中さんが罪を被ったので入らなくてもよかったわけだが、そもそもの姿勢が悪すぎる。

「シゲキ君、蒸し返して文字数稼ごうなんて卑猥だよ。さくさくいこう」

 文字数言っちゃったぁぁあーーーー!!
 ついにこいつ、文字数にまで言及しちゃった!

 ゲームや話数までなら許されるが、文字数言うなよ!
 つーか、ラム肉を読む暇に違うことやったほうが確実に有意義だとは言っていこう。

「シゲキ君、作品批判すると制裁されるよ」
「俺の正義の心は死なぬ!!」

「えい!!」


 ぷるんはシゲキのツノを掴んだ。

 バッキィーーー!
 ぷるんはシゲキのツノをへし折った。


「いってぇええええええええええええ!!」


 物理的制裁。


「うぉおおお、根っこごと取れたぁああああ!」

 くそ痛ぇえええ!
 俺のツノって長くないんだよ。

 なんてーか、ちょこっと顔を出したタケノコみたいなんだ。
 それを力付くでもぎ取りやがったよ!!

 長いもんなら途中で折れるんだろうが、いかんせん短い!
 それを引っ張ったから俺の頭の何かも一緒に取れたーーーー!

「うわっ、ばっちぃ。ここは削(そ)がないとね」

 ぷるんがツノの下についている俺の頭の一部だったものをニッキーで削り取る。
 びちゃびちゃと血にまみれた何かが落ちていく。
 こえーよ!! 自分のだと思うとリアルで怖いって!

「シゲキ君、これが制裁だよ」
「お前がやるんかい!!」

 なんでこいつに制裁されないといけないんだよ!!
 正直、俺のほうが制裁したいくらいだぞ!!

「もう一回やる?」

 すんませんでした!! もう逆らわないようにします!!

 ちくしょぉおおおお!!
 どうせ俺はヒツジだよ!

 HITUJI、FU~~~~!!!


「このツノも売れるか試してみようかな?」
「あっ、それは私が分析してみます」

 俺のツノを売ろうとしたぷるんにリーパが言う。
 どうやらヒツジ専門のツノ屋ってのもあるらしい。

 そういえば戦闘角(バトルホーン)専門の店もあったな。
 ヒツジはヒツジでいろいろとあるんだろう。

「…汚いですね」

 ツノを受け取ったリーパの第一声である。
 ものすごく汚いものに触れるかのように、人差し指と親指で顔を背けて掴んでいる。

 汚いって言うなよぉおおおおおおおお!!
 俺の魂(ソウル)だぞぉおおお!!


「それじゃ、素材売りに行こう!」

 ということでやってきました、アイアムタウン。
 道中はモンスターが襲ってくることもなく平穏だったな。
 ぷるんが強すぎるから敵も寄ってこないんだよな。

 思えばドラクエとかもレベル99でも空気読まないがスライム出続けるよな。
 あいつら勝てるつもりで向かってくるんだろうか。
 まあ、その後逃げるわけだが。

「おい、今度は店を間違えるなよ!」
「大丈夫だよ。モヒに教えてもらったから」

 ギルドの受付のネリー・モヒである。
 屈強な身体といかつい顔なのに西原さんばりのロリ声というギャップが売りである。

 というか略すならネリーのほうにしろよ!
 ここモヒだらけじゃねえか!

 ここはモヒカン族が多いのでモヒだけの略だとまずいのだ。
 今ぷるんがモヒと言っただけで、街を歩く人が十人くらい振り返った。

 モヒカン率八割の街だからな。ややこしいんだよ。
 俺としてはそろそろお別れしたいところなんだが…

「そうだね。素材売って準備整えたらすぐ次の街行こうか」

 おお、ついにか!
 この街はほんといい思い出がないからな。
 さっさと出ようぜ。


 素材屋は前に武器を買った市場の真ん中あたりにあった。
 テントではなくちゃんとした建物で、ギルドに近いしっかりしたものだ。
 むしろこれを中心に市場が作られているようなので、見逃すほうが難しいのかもしれない。

「ありがとうございましたー」

 素材屋の店員は丁寧なモヒだった。
 俺たちが換金を終えるとちゃんと見送ってくれた。
 たしかにぷるんが言うように素材屋の店員はモヒだったな。

 最初からここに来ていればとそう思わずにはいられない。
 それだったらTさんという犠牲者も出なかったのに…。
 もうイニシャル表示にされて過去の人扱いなのは許してくれ。
 俺にとってもトラウマだしな。忘れよう。


○今回売れたもの
・イヤージョーの耳 10個 5万円
・ガルドッグの牙 8個 7万円
・ホワイトマッシュの笠 3個 6万円
・サンドシャークの肉 40万円
・Hリザードの年金手帳 120万円



「合計で178万円だったよー」

 ぷるんが意気揚々と報告してくれた。

 ちなみにあれだ。
 金額はややこしくなるので端数は切り上げて万単位で統一している。

 さて、どうしようかな。
 いろいろと言わねばならないことはあるが、そうだな、うん。

 まず、こう言っておこうか。



「それっておかしいよ!!!」




 うむ、我ながら見事な発言だ。

 まずイヤージョーの耳。一個五千円か。これは妥当だろう。
 正直ドラキーくらいの相手だ。
 逆にあれの耳を何に使うのか問いただしたい気分だ。

「なんか料理に使うらしいよ。珍味だって」

 食うのかよ!! ゴムに使うんじゃないのか!?
 そりゃまあ、ミミガーとかあるしな。

 ちなみにミミガーとは豚の耳の皮を茹でたり蒸したりした沖縄料理だ。
 俺も昔何回か食べたことがあるが、なかなか美味かった記憶がある。
 一応、ゴム的なものにも使えるので、緩衝材や薄く切ってそのまま使うこともあるそうだ。

 日当と考えれば毎日イヤージョーを一匹か二匹倒せば生活できるのは楽かもしれん。
 が、牧場経営を考えるとお小遣い程度の値段だな。

 ガルドッグの牙は装飾品とかに使うから耳よりは高い。
 ホワイトマッシュの笠ってのは、あれだ。
 ドラクエのおばけキノコの頭の部分のアレだ。

 ホワイトマッシュのものは真っ白だけどな。
 これも高級食材らしいので一個2万円。なかなかいいな。

 次にサンドシャークの肉。
 これもボスの肉だけあってかなりのお値段だ。
 グラム単位で考えれば安いのだろうが、一度に取れる量が多いのでいいだろう。

 あいつの討伐報酬が70万くらいだと思えば大きな実りだ。
 ハンターには素材を得る権利がある。それを含めての報酬金額なのだろう。

 そしてお待ちかね。
 みんなもすでに理解していると思うが、一番最後のものが問題だ。

「いやー、儲かったねー。やっぱり今は年金の時代だよねー」

 ぷるんは喜んでいるが俺は心が痛い!!
 最近は不動産担保より年金証書のほうが価値があるらしい。

 銀行も年金があればすぐにお金貸してくれるからな。
 うちの親戚も不動産担保は断られたけど年金担保なら即OKだったし、ある意味怖い時代だ。

 年金も素材だと思えばこの報酬もありなのだろう。
 だが、それはあくまでHリザードの親のものだ!!

 しかも一年分の年金がぁああああ!!
 親御さんはどうやって暮らしていけばいいんだよ!!

「やっぱり私って運があるね。二回の素材交換で六百万超えだもんね!」
「うわー、お金って簡単に手に入るんですね。私も年金欲しいです」
「じゃあ、今度また取りにいこうか」

 違うーーーーーーーー!
 なんかそれ、俺の知ってる年金と違う!!

 いいか、年金というのはな、本当に大変なんだぞ!
 天引きされていると気にならないが、自営業でいざ自分で払うと月々けっこう痛い。

 昔は月々うん百円くらいだったらしいが、今じゃ1万6千円くらいしているし、世の中すさんでいるよな。
 まあ、これも支払い制度が変わるそうなのでまたいろいろと変わるんだろうが、面倒なことも増えそうだ。

「って、あれ? サンドシャークの素材ってもっとなかったか?」

 俺の記憶違いでなければ剥ぎ取ったのは肉、歯、ヒレ、砂肝、皮膚の五つのはずだ。
 それはどうなったんだ?

「年金が思ったよりお金になったから、あっちは加工しようかなって思ってさ」

 ああ、そういえばアイテム改造屋があるらしいな。
 素材があれば防具の生産もできるし、リーパも白ヒツジ装備が作れたはずだ。

「サンドシャーク素材だと鍛冶屋さんのほうが良いものが作れそうです」

 リーパいわく、白ヒツジ装備は基本的に白ヒツジ族専用のもので、使う素材の多くはヒツジ系らしい。
 専用武具なだけあって威力が高かったり、特殊な能力があるという。

 一方、街の鍛冶屋が持っている鍛冶スキルは種族に関係なく作れるものが多いようで、一般的な剣とか盾はこちらの担当らしい。
 たぶん俺の使っているウサドリルホーンとかも彼らが作ったんだろうな。

 そういえば俺が使っているヌーボーの防護服も、文字通りヌーボーという種類のヒツジ素材で作られているんだよな。
 これも専用装備ではないので普通の人も着られるらしいが、そのあたりはなかなか複雑だ。
 何にせよ今後のことを考えると武器改造とかもしたいよな。

「牧場を拡張して鍛冶場を作れば自分で製造できるようになるよ。鍛冶師を雇わないといけないけどね」

 うむ、そのほうが楽だな。
 いちいち街に行くのは面倒だし、何事も自前が一番だ。

「じゃっ、次は武器かな。それと移動用の足をなんとかしようね」
「そうだな」

「あれ? シゲキ君、今回のオチはないの?」


 毎回俺が死んで終わるってオチも飽きたよな。
 せっかく新章に入ったんだからオチはなしでいこうぜ。














 シゲキは死んだ








 !?
 前振りすらなくなったぁぁああーーーーーーーーー!!



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