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「牧場を拡張しよう」編

三十話めぇ~ 「急展開だね」

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「なんで俺が死んだんだーーーーー!!!」


 そうだ! 俺は殺された!!
 オチが欲しいという理由だけで殺された!
 もうやめろよな!

「シゲキ君、文字数稼ぎのクレームはもうやめようよ。うんざりだよ」
「こっちがうんざりしているんだよ!!」

 俺だってクレームつけたくないんだ。
 毎度こんなことやっていると物語が全然進まないからな。

 なに? それがこの小説の売りだって?
 そりゃそうかもしれないが、毎回殺される俺の身にもなれよ。

「どうせシゲキ君のことだから、うんこ食べたんじゃないの?」

 どういうこと!?
 俺がそれを食べる必要性がどこにあるの!?
 というか、小学生じゃないんだからう○ことか言うなよ!

「あっ、シゲキさんならありえますね。お父さんのサイも食べちゃいましたし」

 リーパの俺に対する評価!!!
 俺の評価、相当低いぞ! おい!

 あの話、本当に信じちゃってるよーーー!
 俺、う○こ食べても不思議じゃないキャラになってるぅうううう!

「シゲキ君、我慢だよ」
「いつまで我慢すればいいんだよ!!」

 ほんとだよ。
 俺はいつも犠牲になってるぞ!

「もしかしたら寄生虫のせいかもしれないです」

 どうやら爆発する寄生虫がいるらしい。
 リーパの牧場でも年に数頭、それで死ぬヒツジがいるそうだ。
 おいおい、そんなの怖すぎだぞ! なんて名前だよ!

「中二爆死病っていうんですけど…」

 それ違くね!?
 それって寄生虫じゃなくね!?
 リーパも「病」とか言っちゃってるし!!

 中二って基本頭悪いからさ、ウケ狙って変なことやって爆死するやつだろう?
 そういえば俺も友達の下駄箱に偽のラブレター入れて、校舎裏に来たところで「君の人生まっしぐら」と書いた看板をもって登場する、とかやったな。

 …誰一人幸せにならなかったが。


「シゲキ君は中二病だから仕方ないよね。エロいから爆発したんだよ」

 どういうことなの?
 もう中二病の解釈の問題にまで発展してるじゃねえか!
 エロくて爆発するなら、男子全員爆発だろう!!
 つーか、女だって死ぬじゃねえか!

「シゲキ君、大変だよ。この段階で今回の話の半分いっちゃった」
「まだ何もしてねーよ!!!」

 物語が一ミリも進んでいないのに半分終わるってなんだよ!
 ここはナメック星の決戦か!?

 もうちゃんとしようぜ!!



「おい、野良ジープなんてあるのかよ」

 俺たちはアイアムタウンの北東に広がる草原にやってきた。
 当然、目的はジープだ。
 だが、本当にあるのか? 若干不安だぞ。

「あるんじゃない? モヒカンだってジープ乗るじゃん」

 そりゃまあ、乗るけどさ。
 世紀末ではなぜかやつらはバイクとジープでやってくるな。

 そしてこの世界でもモヒカンはジープを愛用している。
 たしかにやつらの使い古しなどが落ちていれば儲け物だが…

「ん? そういえば捕まえろとか言ってなかったか?」

 動転してすっかり忘れていたが、こいつはジープを捕まえるとか言っていた。
 落ちているものならば「拾う」と言うよな。
 なんかおかしくないか?

「えっとね、どこかな」

 ぷるんは何かを探しているようだ。
 あいつ何してんだ?


 ごそごそ

 ぷるんは地面を調べた

 ぷるんはバス停を見つけた


 えええええええええ!?
 バス停!?
 なんでバス停が埋まってるんだよ!!

 あれだ、丸い標識がついた昔からある感じのやつだ。
 ぷるんはそれを掘り出して、草原に立てている。

「お、おい、何して…」
「これを置いておくと野ジープが来るんだって」

 なんかいろいろ知識が混ざっちゃってる!!
 変な感じに勘違いしてるぞ!!

 メタルマックスにもバス停ってあったよな。
 懐かしいな。俺は野バス好きだったなー
 って、さすがにジープとバスは違う。
 こりゃ絶対来ないな。


 ぶるる

 野ジープがやってきてバス停に停まった

 野ジープは何かを言いたそうにこちらを見ている


 来ちゃったよぉおおおおおおおお!!
 しかもドラクエみたいに仲間になりたそうにこっちを見ている!

「シゲキ君、見てよ。あの勇ましい顔。まさに野ジープの勇者だね」
「言っている意味が全然わからないんだが」

 そういえば車の正面って顔に見えるな。
 ウィーン大学が車の正面を見てどういう印象を受けるかの実験をしたそうだ。
 結果として車が人の顔に見える人が九割で、力強い感じの車の顔を好む傾向が強かったという。

 たしかにジープは力強いな。
 軍用車がもとになって発展していったものだしな。
 この野ジープもガンメタルグレイ色の軍用車で、よく見るタイプのものだ。
 これは相当カッコいいぞ!

「あの子、シゲキ君を呼んでるよ」
「…わかる。俺にもわかるぜ」

 ぷるんの言うことが俺にもわかってきた。
 あいつは【漢(おとこ)】だ。
 同じ漢である俺を呼んでいる。

 ふっ、こうなったら受けて立つしかないな。
 同じ宿命を背負った者同士、引かれあうものだ!

「さあ、来い! 俺とともに!!」

 俺はようやく自分の相棒を手に入れる!
 この力で俺は世紀末に新たなる秩序を築くのだ!!


 ぶろろろ!!

 野ジープはシゲキに向かって走り出す。

 夕日がきらめく!!
 星が動く、世界が両者を導く!!

 ブロロロロロロ!!



「俺はお前の…!!」



 ドガッ! ぐしゃーーー!

 野ジープはシゲキを轢いた。


「いってぇぇええええええええええええ!」


 轢かれたーーー!
 めっちゃ轢かれたーーーー!!

 ブロロロロ!
 野ジープはさらに向かってきた!

「ちょっ、待っ…」

 ドガ ぐしゃーーーー!!

 シゲキの頭部はぐしゃぐしゃになった





 シゲキは死んだ









「死んだじゃねえか!!!」
「あっ、起きた」

 話が違うぞ! どうなってんだ!
 あいつ、思いきり殺しに来てんじゃねえかよ!
 しかも轢かれた描写がリアルで嫌すぎるぞ!

「しょうがないよ。車と動物だもん。ぶつかったら普通死ぬよね」

 そんなこと言われたら、向かっていった俺がバカみたいじゃねえか!
 ちくしょーー! ハメられた!
 お前、俺をハメやがったな!

「私だって初めて知ったんだよ。どうやらあいつは誇り高き野ジープ。殺すか殺されるかだよ」

 おかしいだろう!?
 もうただの殺し合いじゃねえか!

 メタルマックスでも言ってたけどさ、殺すか殺されるかって不毛すぎるよな。
 何の生産的要素もないよ。

「あいつを制御している電子機械を破壊してジープを手に入れるんだよ」
「その情報、どこで手に入れたんだよ!?」

 と、そんなことを言っても答えてくれるわけもない。
 もうこいつらのやり方はよくわかっている。
 それこそ不毛なことはしないほうがいいな。

「今度はお前が行けよ」
「何で?」
「何でもなにもないだろう! 俺が行ったらまた死ぬだけだぞ!」

 所詮、俺は四つ足動物なのだ。
 車に乗り移ることもできないからな。
 ここは人間に任せるのがいい。

「シゲキ君も人間じゃないの?」
「心はな。だが、身体は正直だ」

 哀しいかな、だんだんとこの世界ではヒツジでしかないことを痛感していく。
 悔しいが順応するしかない。

「それじゃ、行くね」
「ぷるんさん、気をつけてくださいね」

 いつも思うんだが、リーパは俺には言ってくれないよな。
 自分を助けたのはぷるんだと思い込んでいるのだ。

「シゲキ君、我慢だよ」
「否定しろよ!」

 なんで俺だけいつもこんな扱いなんだろうな。
 あっ、ヒツジだからか。

 …哀しい。
 それで納得できてしまうことが一番哀しい。


「それじゃ、行くよ!」

 ぷるんが野ジープにじりじり向かっていく。
 これだけ見ると、野生の暴れ牛に向かっていく光景に近いものがあるな。

 しかし、ぷるんはヒツジ戦士だ。
 その腕力も相当なものである。
 野ジープであろうと組み伏せる可能性は高いな。


「とりゃーーー!」


 ぷるんは野ジープに向かっていった

 ぷるんは野ジープに体当たりを仕掛けた


 おっ、いい当たりだ。
 これなら野ジープだって…


 ブロロロロ!

 野ジープの強烈馬力!

 ドッゴーーーーン!



 ぷるんは吹っ飛んだ



 うえぇぇええええええ!???
 ぷるーーーーーーーーん!!

 おい、マジかよ!!!
 ぷるんが吹っ飛ばされたなんて信じられない!!
 しかも、「ザ・交通事故」というレベルで三十メートルは吹っ飛んだぞ。

 そうだ。こんなことをしている場合じゃない!
 ぷるんを助けないと!
 俺はリーパと一緒に慌ててぷるんのところに向かう。

「ぷるん、大丈夫か!」

 ぷるんのところに着くと、頭から血を流して倒れている姿が目に入った。
 お、おい、ぷるんがぐったりしているぞ!
 こいつはマジでやばい!!

「シゲキさん、回復ドリンコです!」
「お、おう!!」

 俺は慌ててリーパが開けてくれた回復ドリンコを振りかける。
 どこに振りかけていいのかわからないから、顔にぶっかけてみた。

 なんといっても回復ドリンコだからな!!
 ゲームではどんなに重傷でも回復アイテムがあればすぐに治る便利なシステムがある。
 ぷるんもこれで回復するはずだ!


 シゲキはぷるんに回復ドリンコを振りかけた

 ………
 ……
 …

 ぷるんは動かない



「えっ?」

 お、おい、ぷるんが動かないぞ!
 治ったんじゃないのか?
 頭からの出血は止まったように見えるが、ぷるんが起きない!

「リーパ、追加だ!」
「わかりました!」

 リーパに頼んで手持ちの回復ドリンコをありったけ振りかける。
 今度は胸にたっぷりかけてみたぞ!!

 …いや、すまん。
 けっして狙ったわけじゃない。
 たっぷりかけて浮き出た胸を鑑賞しようなんてつもりはなかったんだ。
 本当に偶然なんだよ!!

「ぷるんさん、起きないです!」
「バカな!!」

 こんなに回復ドリンコをかけても起きないなんて!
 サンドシャークの戦いでも平然としていたこいつが、こんなにあっさりやられるなんてよ!

 まさか死んだのか!?
 なんてこった!
 これからこの小説どうなるんだよ!
 ぷるんがいなかったら終わりじゃないか!

「シゲキさん、自信ないんですか?」
「うっ!!」

 この小説の名前はラム肉だが、思えば俺一人では何もできないことに気がつく。
 ツッコミはボケがいないと何もできない。

 まさかこんな残酷な事実に気がついてしまうとは!
 いや、それよりもぷるんが心配だ!
 早くなんとかしないと!

「はっ!!」

 俺ははっと気がついた。

 今、俺の目の前にはぷるんが倒れている。
 俺は今まで生きていて、こんな無防備なぷるんを見たことがない。
 これはまさか…、いやそんなまさか…

 ちょっとくらい胸を触っても許されるのでは?
 いやいや、もっと大胆に触ってもいいのでは?

 あのぷるんの胸を触れるチャンスなんて、今しかない!
 たしかに俺の手は蹄だ。
 しかし、全神経を集中させて感覚を高めれば…!

 そう、これはあれだ。
 高速道路で窓に手を出すと胸の感触に似ているとか、蒸しパンに布を被せて揉んでみるとか、誰が考えたか知らないが馬鹿丸出しの発想だ。
 そんなもんで満足できるのは完全に中二くらいだ。

 はっきり言えば、今の俺の蹄の感覚はその程度だ。
 おそらく本物を触ってもあまり実感はないだろう。
 だがしかし、俺の目の前にはぷるんという、極レアな物がある。

 蹄とはいえ、今を除いてこんなチャンスなど…
 それがたとえ本物の手ではなくとも…!!


「はっ!!」


 そのとき俺は背後の視線に気がついた。
 背後から発せられる猛烈なる冷ややかな視線。
 いや、冷ややかなんてものじゃない。

 こんな生き物、存在していていいんですか?

 ってレベルの視線だ!! しかも幼女の!
 違う! 違うんだ! これは俺じゃない!
 俺はこんなこと考えたりしないんだぁああああああああ!

「ちくしょう! すべてあいつのせいだ!」

 そうだ!
 こんな目に遭うのも、全部あの野良ジープのせいだ!
 ぷるんの仇をとってやるぜええええ!


 シゲキは野ジープに突撃した。

 ガスッ

 シゲキは石につまづいた
 ズコーーーーー!
 ガクッ バコッ!!

 シゲキは野ジープのバンパーに頭をぶつけた





 ボキ! シゲキの首が折れた









 シゲキは死んだ










「シゲキさーーーーーーーん!!」





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