白雪姫は処女雪を鮮血に染める

かみゅG

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012.森での生活(2×3+1+1)

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 そろそろ雪が降るかという、ある日。
「町へ行ってくるわ」
 ユズが、そんなことを言い出した。
 薬草から作った薬を売りに行くのだろう。
「雪が降るかも知れないから、気をつけてね。雪に濡れたら、面倒がらずに、ちゃんと拭くのよ」
「わかっているわ」
 お母さん役のモモが、注意事項を伝える。
 少し鬱陶しそうにしながらも、ユズは素直に頷く。
 自分のことを心配していることが、分かっているからだろう。
「いってらっしゃい。気をつけてね」
 ピーマンもユズに声をかけている。
 あれ?
 一緒に行かないのだろうか。
 そのことを尋ねると、ユズが教えてくれた。

「ピーマンは値段交渉が苦手だからね」
 だから、連れていかないのだと言う。
 けど、それなら値段交渉はユズが行えばいいだけだ。
 実際、そうしているのだと思う。
 それなのに連れて行かないということは、過去に何か失敗したのかも知れない。
 例えば、ピーマンが余計なことを言ったせいで、値段交渉で損をしたとか。
「私がいない間、ピーマンはこき使っていいから」
「ひどいよ、ユズ」
 その言葉が冗談なのは分かる。
 文句を言うピーマンに、ひらひらと手を振って、ユズは孤児院を出ていった。
「じゃあ、ピーマンは薬を作る部屋の掃除をお願い。私はユズから、あの部屋にあるものは勝手に触るなって言われているからね」
 モモが、ユズがいない間の仕事をピーマンに伝える。
 ようするに、いつも使っている部屋を掃除しろと言っているだけだ。
 他の仕事を手伝わせるのが心配なのかも知れない。

 それから数日が過ぎた。
 町へ往復するのにそんなに時間がかかるのかと心配になったけど、いつも通りらしい。
「薬を売るのにも時間がかかるしね」
 言われてみれば、その通りだ。
 モモの言葉に私は頷く。
「それに、夕方くらいに町に着くんだけど、そんな時間からじゃ、お店も空いていないし、お客さんもいないでしょ?」
「なるほど」
「でも、雪が降らないか、少し心配ね」
 窓の外を見ながら、モモが呟く。
 料理のために火を使っているから、建物の中は暖かいけど、建物の外はどんどん寒くなっている。
 もう、いつ雪が降り出しても不思議ではない。
 なんでわざわざ、こんな時期に町に行ったのだろう。
 そう思ったけど、それにも理由があるらしい。
 冬を越すための最後の買い出しのためだ。
 そのためにユズは、あえて雪が降る直前の今の時期に、町に行ったのだ。

 夜。
 がたがたと窓枠が音を立てている。
 風が強い。
「寒い」
 けど、これは単純に気温が低いからだ。
 心まで寒いわけじゃない。
 あの日以来、私はたまにモモの部屋に眠りに行くけど、毎日行っているわけじゃない。
 モモは朝が早いし、私のことを起こさないように部屋を出て行くのに気を遣うらしい。
 私も寝るときに隣にいた相手が、起きた時に隣にいないと、なんとなく寂しい気持ちになる。
 だから、心細くなって、人肌が恋しくなったときだけ、モモの部屋に行くようになっていた。
 今日みたいな日はモモの部屋に行きたい。
 けど、一度ベッドに入ってしまうと、なかなか出る気になれない。
 モモの代わりに、そんな葛藤を抱きながら、私はベッドの中で身を縮ませていた。
 がたがたと窓枠が音を立てている。
 だから、私は寝付けないでいた。

 かちゃ。
 風に吹かれて窓枠が立てる音に紛れて、部屋の扉が立てる音が、耳に届く。
 いつもなら、気付かなかったと思う。
 けど、窓枠が立てる音がうるさかったから、寝付けなかったから、その音に気付いた。
 うるさい音の中で、小さい音だったけど、その音に気付いた。
「……」
 私は息を潜める。
 すぐにでも音の原因を確かめたかったけど、寒くて身体が動かせなかった。
 身体が震える。
 もし、音を立てたのがモモなら、きっと私を抱きしめてくれるだろう。
 抱きしめて、温めてくれるだろう。
 でも、もし違ったら。
 もし違ったら、そんな温かさはいらない。
 たとえ、どんなに温かかったとしても、私には必要ない。
 すぐにでも確かめなければならないことは分かっていたけど、寒さに震える身体は動いてくれなかった。

 影が覆いかぶさってくる。
 モモが抱きしめてくれるときのような、柔らかさと温かさはなかった。
 熱いけど硬い塊が、私の上に覆いかぶさっていた。
 その塊が私の口を塞ぐ。
「んーーーーーっ!」
 私は大声を出そうとした。
 けど、口から空気が出ていってくれない。
 僅かに漏れた空気は、隙間風のように、微かな音を立てるだけだ。
「しっ。静かにして」
 男の子の声がする。
 聞き覚えのある声だ。
「我慢できないんだ。いつもならユズがしてくれるんだけど、まだ帰って来ないから」
 私の上から声を降らせながら、ピーマンが私の口を塞ぎ続ける。
 性別の違いというのは大きい。
 能天気な性格をしていても、ピーマンは男の子。
 そして、私は女の子だ。

「んーーー! むーーー!」
 必死に身体を動かすけど、口と肩を抑えられていて、自由が利かない。
 覆いかぶさってくるピーマンを、押しのけることはできなかった。
 それでも私は、身体を動かし続ける。
 本能が激しく拒絶する。
「暴れないで。痛くしないから」
 優しい声で、ピーマンが私に語りかける。
 けれど、私はその声に怖気が走る。
 怖い。
 ただただ、そう感じた。
「きっと、気持ちいいよ。ユズも褒めてくれるから、間違いないよ」
「んーーー! んーーーーーーーーーー!」
 私はさらに身体を激しく動かした。

 必死に叫ぼうとして肺の中の空気を出し切ったせいだろうか。
 頭が白くなっていく。
 目の前が真っ暗になっていく。
 そんなときに思い出すのは、城での日々だった。
 懐かしい日々。
 みんな私に優しくて、みんな私に色々なことを教えてくれた。
 孤児院のみんなも優しいけど、生きるために精一杯で、私の知識を増やしてはくれない。
 だからだろうか。
 こんな状況になってから、思い出した。
「ぎゃっ!」
 私がソレを握り絞めた途端、私の上に覆いかぶさっていた塊が、私の上から転がり落ちた。
 そのままベッドから転がり落ちて、どすんと大きな音を立てる。
「な、なにをするんだ!」
 口から泡を吹きながら、仰向けになって股間を押さえているピーマンが、文句を言ってくる。
 けど、文句を言いたいのは、私の方だ。
 口汚く罵りたい衝動に駆られるけど、それを我慢して、私はピーマンの股間を押さえる手ごと踏み抜いた。

「凄い音がしたけど、何かあった!?」
 部屋の扉を叩く音と、私のことを心配するモモの声が、響いてきた。
 私は、踏み抜いているモノから足を退け、扉の方に駆け寄る。
 そのまま扉を開けて、心配そうな表情のモモに抱き着く。
「っ! っ!」
「落ち着いて」
 モモが優しく頭を撫でてくれる。
 ふわりとした温かさに、私は安心する。
 安心して、目から涙が零れてきた。
「大丈夫よ」
 涙を見られるのは、二度目だった。
 あのときと同じように、モモは柔らかくて、温かい。
「大丈夫だからね」
 あのときと同じように抱きしめられながら、私は身体から力が抜けていくのを感じていた。
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