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第三章 紅に深く染みにし心かも
第十一話 偽らざる自分
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土日を通し、プロット作りに一冴は励んだ。
物語の舞台は、第二次世界大戦末期の伯林から架空の世界へ移した。そもそも、最初に湧いてきたイメージは雪の降る街だったのだ。一方、伯林の戦いは四月に始まった。イメージを優先すれば史実は合わない。
今までの悩みが嘘のように全ては進んだ。
主人公は、平凡な幸福を愛する二人の少女だ。お互いに想いを伝えられないまま戦争が始まる。家族を殺害された少女に与えられるのは小型航空機。片方の少女は看護師として徴募される。戦場における立場の違いがすれ違いを生んだ。
ラストで、看護師の少女は目にする――重傷を負い、包帯を巻かれ、生死の瀬戸際を彷徨う親友の姿を。二人がお互いの気持ちに気づくのもそのときだ。
ハッピーエンドではない。しかし、そちらのほうが自分らしい。
プロットを作ってゆくうちに、一冴は気づいた。
自分は――必要以上に「女」を演じようとしてはいなかったか。
少女が戦争をするという、いかにも男性が思いつきそうな物語を作ることによって、不審に思われることを恐れていた。
けれども、一冴の周りにいる少女はどうか。菊花は仏壇を寮に持ち込んでおり、蘭は女性しか愛せず、紅子は共産趣味者で、早月は残虐なホラー小説を書いている。
女性とはこうであるはずだ、それに合わせなければならないという気持ちが、偽らざる自分から一冴を遠ざけていた。
しかしその枷を一つ外した今、想像の翼は広がりつつある。
物語の舞台は、第二次世界大戦末期の伯林から架空の世界へ移した。そもそも、最初に湧いてきたイメージは雪の降る街だったのだ。一方、伯林の戦いは四月に始まった。イメージを優先すれば史実は合わない。
今までの悩みが嘘のように全ては進んだ。
主人公は、平凡な幸福を愛する二人の少女だ。お互いに想いを伝えられないまま戦争が始まる。家族を殺害された少女に与えられるのは小型航空機。片方の少女は看護師として徴募される。戦場における立場の違いがすれ違いを生んだ。
ラストで、看護師の少女は目にする――重傷を負い、包帯を巻かれ、生死の瀬戸際を彷徨う親友の姿を。二人がお互いの気持ちに気づくのもそのときだ。
ハッピーエンドではない。しかし、そちらのほうが自分らしい。
プロットを作ってゆくうちに、一冴は気づいた。
自分は――必要以上に「女」を演じようとしてはいなかったか。
少女が戦争をするという、いかにも男性が思いつきそうな物語を作ることによって、不審に思われることを恐れていた。
けれども、一冴の周りにいる少女はどうか。菊花は仏壇を寮に持ち込んでおり、蘭は女性しか愛せず、紅子は共産趣味者で、早月は残虐なホラー小説を書いている。
女性とはこうであるはずだ、それに合わせなければならないという気持ちが、偽らざる自分から一冴を遠ざけていた。
しかしその枷を一つ外した今、想像の翼は広がりつつある。
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