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1章 幼少期編 I
104.エピローグ(改訂版)
しおりを挟む最近気づいたの。
魔素って、絶望とか恐怖とか、負の波動に触れると活性化するらしいの。
だから"境の森"の魔素溜りで実験してみたの。
死にかけの鼠を放り込んだら少しだけ反応したの。
だから、いろんな動物でも試してみたの。
人間でも試してみたら、もっと広がった。
人間の死に際の波動が一番効くみたい。
……なら"境の森"で戦争を起こしちゃおうかな。
たくさん人が死ねば魔素溜りが大きくなるもの。
魔素溜りが大きくなると魔獣がたくさん出てくるの。
そうしたら、ますます魔素溜りが拡大していくの。
魔素溜りが大きくなると便利なの。
だって、あたし、魔素を食べて生きてるから……
あたしの体は特別なの。
魔素を体に取り込むと、年を取らないの。
寝ている時が多いけど、もう800年ぐらい生きてるかな。
"境の森"……戦争が終わった。
そろそろ効果が出てきたかな?
おかしいな……どうして魔獣大暴走が起きないの?
おかしいな……魔素溜りがなくなってる。花だらけの丘になっちゃってる。
──最初から、やり直し?
"境の森"は警戒されちゃってるから、他を探さなきゃ。
でも、ティストームの北側限定なの。
魔素が定着しやすい地脈って他にないの。
──決めた。次はオマー領にしよう。
今度は慎重にいかなくちゃ。
うっかり20年以上眠っちゃってた。
魔素のストックが少なくなってきたから急がなきゃ。
オマー領主のオジさんと、息子を殺して、魔素溜りの素を作って……っと。
──準備ができた。
食べ物を全部燃やして、橋を落とすの。
孤立させて、オマーの領民を飢え死にさせるの。
ジワジワと死んでいくほうが波動が負に大きく傾くの。
巨大な魔素溜りが出来上がるはずなの。
おかしいな……オマー領民の命が消えてない。
どうなってるの?
──シュシューア姫の"予言の書"?
なによそれ。
あたし、邪魔された?
腹立つわね。
──魔素を使って呪い殺してやる。
なにこれ。よく見えない。
魔導士に守られてる?
加護までついてるじゃないの!
──なんなのよ!
今がダメなら、前世に遡って呪い殺してやる。
できるのよ。
魔素を使えば思念は時空を超えることが出来るの。
大量に魔素を使うから滅多にやらないけど。
あら、シュシューア姫の前世って、異世界なのね。
やだ、ここ知ってる。あたしの故郷だわ。
そういえば、あたし、日本から転移して来たんだった。
……あたし、平成から800年も過去の西大陸に転移してたのね……今のここは昭和みたい。
次元移動に、時間移動。法則は無いの? 滅茶苦茶ね。
あ、見つけた!
シュシューア姫の前世の……まだ子供ね。
お気の毒さまぁ。
恨むなら来世の自分を恨んでね~。
死ぃぃぃぃねぇぇぇ!
やだ、呪いが弾かれた!
こっちの体にも手が出せないの!?
なんて忌々しい加護なの!
本人に手が出せないなら、嫌がらせに、親を殺してやる。
この時期なら操りやすい同じ魂の体があるはず……見つけた。
眼鏡の年増女……記憶にはないけど過去世のあたし……もうちょっとお洒落しなさいよ、あたしなんだから。
まぁ、いいわ。
少しの間、あなたの体を借りるわよ。
憑依して、手を、足を……よし、いけーーーっ!
車で突っ込んじゃえーーーっ!
ひ・き・こ・ろ・せーーーーっ!
いっかーい……にかーい……さんかーい!
見てる? 見てるぅ? シュシュゥーアァー!
ぐっちゃぐちゃだね~。
お父さん、死んじゃったねぇぇぇ~。
泣けーーーっ! 泣けーーーっ! あはははははははははははは……
あたしの邪魔をするからよ。いい気味ぃぃぃ。
あたしの同魂の年増女には犯行時の記憶がないから、なんで殺人を犯したのかわからなくて発狂してる。
警察に捕まって人生台無しにさせちゃったけど、ま、いいわよね、1回くらい無駄にしたって。
たくさんある転生先の中のひとつだし。
今は飽きるまで不老できるし。
───…さぁて、シュシューア姫の前世のその後はぁ?
どれだけ心に傷を負ってるかなぁ?
どれだけ不幸になってるかなぁ?
泣いて毎日を過ごしてるかなぁ?
ああん、肉親に縁がないんだぁ。
淋しいねぇ。
孤児になっちゃったねぇ。
ひとりだねぇ。
お金がないねぇ。
貧乏だねぇ。
かわいそぉぉぉう。
きゃははははははははは!
───…はぁ? 何がんばってんの?
アイドル? マンガ?
うわぁ、オタクになったんだぁ。ダッサ。
オタ活のためにアルバイト三昧とか、笑えるんですけど~。
───…ん~? ゲーム~?
乙女ゲーム《秘密の国の秘密の恋》……?
あぁ! シュシューア姫の〈予言の書〉ってこれのことね!
西大陸と関係がある魂が企画したゲームね。
異次元を覗けるヤツってあたし以外にもいたんだ。
商品化するなんてちゃっかりしてるぅ。
あははは~、このヒロインのビジュアル、あたしとそっくり!
ってか、あたしがモデルでしょ!
ピンクヘアのユルふわボブ。
転移前に美容院で染めた時のまま、今でも艶々な自慢の髪は健在よ。
魔素を食べるって、そういうこと。
成長も老化もしないから髪も伸びないの。
爪が欠けてもすぐに元に戻ったりするから、同じく髪が痛むこともないの。
怪我だって、あっという間に治るの。
それにしても、この乙女ゲーム…………なんだろう、なんだか引っかかる……
あぁ、ティストームが舞台か。
しかも建国時期含むってか。
あの頃のティストームっていい思い出が無いのよね。
今でも腹立つわぁ。
あたしから『あの人』を奪ったクソ女。
クソ女のくせに人望があったのもムカついた。
ずたずたに切り刻んで殺してやったけど、もっと苦しませてやりたかったわぁ。
──…あぁ、でも。
乙女ゲーム《秘密の国の秘密の恋》
転じて、シュシューア姫の〈予言の書〉
建国に関わった女が後に聖女認定されて……
どこの誰かもわからない、名前も伝わっていない、ただの言い伝えだけど……その女が転生してゲームが始まる。
ティストームには攻略対象の王子たちが存在している。
そして、あたしの存在、あたしが生きて目覚めている今この時。
王子たちの前にあたしが現れたらどうなる?
ピンクの髪の私が現れたらどうなる?
建国時期のティストームを知ってる私が現れたらどうなる?
うふふふふふ……
ゲームヒロインのモデルになったのは運命ね!
──…運命?
もしかして、王子たちを虜にしていくあたしの恋愛を覗き見たの?
あたしがヒロイン?
そうだ、絶対そうだ!
これから起こるティストーム王子たちとの恋愛がゲームになったんだ!
あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン、あたしがヒロイン…………
……っと、魔素切れだわ。そろそろ本体に帰らないと……
帰ったら魔素を補充して、魔素溜り作り……次の魔素溜りは「ガーランド」ね。
それと、王子たちと恋のゲーム!
あぁ、楽しくなりそう♪
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