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一人目
嫉妬③
しおりを挟むキースの隣にいた平民の女の子の名前はクロエ、魔法科を首席で入学し、今でも成績はトップで周りからの評判もよいが、どこか近寄り難い存在だった。
そんなクロエにキースは惹かれていた。かつてアリアがキースに惹かれた時のように、振り向いてもらいたいという気持ちから性格も一心したことをアリアは知った。
アリアは入学して1週間がたった頃、キースとクロエの2人が歩いているところに声をかけに行った。
「キース様、お久しぶりございます。」
「あぁ。」
しかし、そのような態度をするのはクロエにだけだった。
アリアには以前と変わらず冷たく接していた。
「キース、あなたはもう少し私以外の人にも優しくすべきよ。ごめんなさい、この人は本当は優しい人なの。」
アリアのキースに対する気持ちはクロエのこの一言で愛情から憎悪へと変わった。
この日から、アリアはクロエに対する嫌がらせをするようになった。
アリアに言いよってくる男やその男たちを紹介して欲しいという女たちを利用し、自分が行ったとバレないように裏工作をして。
「アリアさん、約束通り行いましたわ。」
「ありがとうございます。では、こちらも約束は守りましょう。明日のお茶会ではルーバート侯爵家の隣の席にしておきますね。」
最初は教科書を隠したり破ったり、クロエの身の回りへの妨害だったが、アリアが入学して3ヶ月ほどたった頃には、遂に直接的に手を出すことを計画していた。
「アリア嬢、本当にやるの?」
「えぇ、お願いします。」
アリアと話しているこの男は貴族でありながらも裏では暗殺稼業をしているパーロック子爵家の狐目で銀髪の三男 アルト・パーロック。
そう、アリアはアルトにクロエの暗殺を依頼をして、クロエをこの世から消そうとしていた。
「それにしても、アリア嬢はそこまでしてクロエ嬢を憎むわけ?」
「それは貴方には関係の無いことよ。」
「やっぱり、アルカイド家のぼんぼんとの婚約関係っていうのは本当なんだね。」
アルトは裏社会との繋がりもあるため、情報網が壮大でアリアとキースが婚約関係であることを知っていて、更にキースの気持ちがクロエに向いていることも気がついていた。
「黙りなさい。貴方は貴方のすべきことをしなさい。」
「はいはい、わかりましたよ。」
その3日後、クロエは自分が住んでいる寮部屋で死体として発見された。
キースは憤慨した。そして、どんな手を使っても何をしてでも犯人をこの世から葬り去ることを誓った。
「こんな所まで私を呼び出して何の話かしら。」
「いやぁ、ごめんねアリア嬢。キース様に『クロエを殺すことを計画したのは君』って話しちゃった。」
アリアはアルトに学園にある誰も使っていない教室に呼び出され、そこに入るとアルトからアリアがクロエを殺したということをキースに伝えたと告白した。
「そうですか。」
アルトの予想とは反して、アリアは毅然とした態度で振舞った。
「貴方が彼に言うことは分かっていました。階級主義の貴方が子爵家の私ではなく、位の高い侯爵家の彼の方へと寝返ることなど容易に想像出来ました。」
「それを知っていて俺に頼んだんだ。」
「えぇ、そうよ。」
「だってさ、キース様。」
そう言うと、キースが教室へと入ってきた。
「何か言い残すことはあるか、悪魔。」
「ないですわ。」
キースはアリアに剣を向け、アリアに軽蔑の目を向けた。
しかし、アリアは少しも表情を変えることなく、キースの目を見ていた。
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