Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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考え方は千差万別3

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 疲れたのか…老は話終えた後ソファーに座りフーッと息をはいた。それを合図のようにざわざわとした小さい騒ぎが至るところでおき始める。
 そのうち話の途中から訝しげな目を向けていた青年が立ち上がった。

「イエイガ-老、大変恐縮なのですが私にはお言葉の真意を図りかねます。どうかこの若輩者にお教え願いたい。」

 言葉遣いこそ丁寧だが青年の目は“お前何言ってんの?”といっている。服装的にはどこかの嫡男辺りのβだろう。その回りには同い年くらいの青年が4人ほどいる。おそらく5人の中で一番身分が低いのが今発言した青年で顔を背けてる2人はこの発言はするべきでは無かったと知っているのだろう。
 ……長いものに巻かれるのは貴族社会の常識。重鎮の老はその最高位なのだから意味がわからなくても“はいはい、その通りです仰る通りです”とするべきなのだ。

「良いだろう。何でも聞きなさい。」

 お叱りを受けるのではと思っていた回りも老の優しげな言葉に緊張をとく気配がした。

「ありがとうございます。では失礼ながらお聞き致します。アストレット前公爵、スサエナ殿は何をお望みで何を望んでおられないのですか?」

 アストレットとはイエイガ-老の本当の家名だがそう呼ぶものは殆どいない。イエイガ-老はイエイガ-老であり、アストレットとは離れたと公言しているからだ。この青年は老を家名で呼ぶ事で自分はふざけて聞いてるのでも軽く受け取っている訳でもないと示しているのだろう。

「……フッフフ……随分率直に聞いてくる若者だ。この社会では珍しい。若さからか、愚かなだけか。
……だが嫌いでは無いのぅ。」

 青年の問に“ダメだ!”と顔を曇らせた周りは老の言葉にホッとしたようだ。老は面白がるように青年に名前を尋ね、気に入ったと告げた。これによりこの青年がこの後に貴族社会から“重鎮の怒りをかった者”としてはみ出し者にならずに済む。

「スサエナ殿はな、穏やかに愛する人々と共にいる事を望んでいる。今の立場の事じゃ。望まぬのは余計な世話……王位継承権等は彼の邪魔じゃ。余計な口出しは無駄と知るが良い。」

 ギロッと見渡した目が老の全盛期を思い起こさせる。昔の老は泣く子も黙らせる存在だったと聞いてはいた。この迫力ではそれも頷ける。

「しかし!スサエナ殿は様々な物を生み出しております。それを独自の領で囲い込みする等とは!」

 ……どこにでもいる飲み込みの悪い人の発言だ。

「自分で開発したものを役立てて何が悪い。王都にも来ているのだ囲い込みではなかろう?」

「いいえ!技術者を寄越さないのです、これは囲い込みでしょう!当家はスサエナ殿に幾度も技術者を寄越すように手紙で要請しているのですよ?!」

 ……?どういう?彼は誰だ?
使者という仕事上、貴族年鑑には頻繁に目を通しているのだがあまり思い出せない。胸ポケットのなかの手帳をチラリと見る。彼は王都在住のピグ伯爵。……伯爵。身分!!

「嘆かわしい事だ。……実に嘆かわしい。」

 老の一言を勘違いしたピグ伯爵は無駄に胸を張り勝ち誇っている。
……この人、終わった。 私の勘に間違いは無いだろう。
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