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迷惑な求婚

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今、私はなんでここに呼ばれているのか‥
自分が罪を犯した訳ではない‥
にも関わらず、国の怖い方々に囲まれて取り調べを受けている。
いきなり連れて来られて睨まれる‥
か弱い乙女にすることじゃないと泣きたい。

まぁ、魔力だけでいうならこの国に叶うものはいないくらい強い。
これは自慢できるところでも、マイナスポイントでもある。

外見は‥まぁ、普通?

王城は、国のトップが集まるだけあって、キラキラした人がいすぎ‥

平民出身の私の周りをキラキラした外見の方たちに囲まれている。

「何でこんなことをなってしまったのだ」
私に向かって宰相は睨みながら聞く。
宰相は今は横に大きくなっているが、昔は男前だったと言い切れる顔をしている。

「そんなことを聞かれても私にわかりませんよ。」
私が言い出したことじゃないんだから、本人に聞いてもらいたい。
拗ねたように言って呆れられる。

ここに呼ばれて来た経緯を誰も説明してくれないが、好き勝手に質問やヤジを飛ばされ、大体の内容は把握した。

それにしてもお偉い人全員集めましたという集団。
王に王妃、宰相に大臣たち、省のトップの方々‥
そんな方々に睨まれて‥ため息が出る。

「レイシア、お前から言ってはもらえないか。この話は受けられないと」
眉間にしわを寄せながら王は言った。

私だってできることならこの方を悩ませたくない!
って一応は思っている。
育ててもらった恩もあるし。

私はアレンと共にこの国を守りたいだけなのに。
どうしてこんなことに‥

「私が言っても聞き入れてもらえませんよ。聞くつもりがあるならば、先に私に伝えているはずですから」

私の言葉を聞き、王はため息をついた。
「そうか、お前も知らなかったのか。」

私も申し訳なくなり、頭を下げることしかできない。
「はい、今、初めて聞きました。」
私は力なく微笑んだ。

「それはどういうことですか?知らない訳ないでしょう。一人で決められることではない。」
宰相の声大きい。
耳が痛い。
空気読めというように王はため息をつく。

5歳の頃から訳あって王城で育っている私は、王の付き合いは長い。
私の言葉で王は全てを理解した。
宰相が否定したその事を王太子アレンがやったのだと‥
私も王も、そして隣の王妃も彼の性格をよく知っている。
私と王の困惑の横で王妃のみ涼しい顔で二人を見つめていた。

アレンがどうして先に私に相談しなかったのかは分かっている。

「私が先にその事実を知れば、アレン‥王太子から離れるという選択をする事がわかっていたと思います。」

だから私にバレないよう秘密裏に王と議会の承認申請を先に行った。

「アレン王太子は一度も私を妃に望んだことはありません。魔法使いとしてこの国を守りたい、家庭を持たないのいう私の話をいつも笑顔で聞いておられました。」

一緒に育ったという幼馴染みでも、一方は平民の私、もう一方は王太子で将来この国のトップに立つ方‥

普通に考えて、普通に考えなくても妃になるなんて思うはずがない。

宰相は焦ったように言う。
「しかし、廃嫡など許されるものではありません。あの方の代わりはいません。」

そう、王太子は婚約者に私を指名し‥
私と結婚できなければ、廃嫡し、私と一緒に王家を出るという、とんでもないおまけを突きつけた。

王や議会に対し、私を正妃として認めろと正式に宣言した。

そこに私の意思が全く入っていないことに腹が立つ。
今も国のお偉方に事情聴取されるという嫌がらせを受けているのだ。

でもその反面、正妃に望んでくれる彼の気持ちは嬉しいと思ってしまう。

そりゃ、好きか嫌いかといえば好きだ。
ずっと一緒に育ってきたのだから。
異性に対する好きというより家族みたいな感じが近いかもしれない。
まぁ、平民が王太子に家族みたいなど言うのは本来、不敬ではあるが‥
アレンは気にしないだろう。
ずっとそうやって一緒に育ってきた。

この国に王太子アレンの代わりがいない。
政治的手腕、人望など他の王子や姫を圧倒している。
事実、重要な政策はアレンが行っているものが多い。
この国に必要な方というのは、誰でも認めるところだ。
そのため、王もアレンに強く出れない面がある。
今、国外的に見ても廃嫡なんて以ての外だ。

王太子が彼であるため、和平を結んでいる国も多い。
味方には優しいが、一度敵になると恐ろしい存在であることは他国の共通認識といっても過言ではない。

その事は、アレン自身もよくわかっている。
つまり、廃嫡という選択肢はなく、そうして欲しくなければ、私を正妃に迎えろと王を、議会を、そして私を脅しているのだ。

小さな頃から一緒にいるが、アレンは国の為に生きていた王族としてとても尊敬できる人だった。

それがここに来て、国益にもならない最大の問題を出してきた。

「私は王太子妃にはなれません。」
私の結論は出ていた。
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