【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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最終章 人族編

ユアンさんの婚約者 2

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「ユアンさん?そんなに血相変えて慌てて来るほど、ヤノ様が大切でした?」

「紬嬢……お戯れを。私はもうお相手頂ける資格はありませんので」

ふーーーん。そう来たか。

「ヤノ様?ヤノ様はもうユアンさんなんか嫌いですか?」

「っ!?」
ユアンさん、そんな傷ついた顔するならもっとガンガン行けばいいのに。

わたくし、は…………」

「ユアンさん?ここでは誰も聞いておりませんよ?」

「…………………………」

 だめかぁ。私は恋のキューピッドって柄じゃないんだよなぁ。うまくできないなぁ。

「陛下におすすめしていいです?」

「っ、それ、は……」

「ヤノ様美人だし、陛下もノリノリになるかもな~?ね、クロム君?」

 クロム君はヤノ様の腕の中でキョトンとした後私の腕の中に戻って来た。うん、可愛い。

「また、同じ事になるのが心配ですか?」

「………………もう、大切な方が傷付くのはみたくないのです」

 ユアンさんが言ったという単語にヤノ様が弾かれる様に顔を上げた。

「ヤノ様、会場にはお父上も?」

「はい、本日は父も参加させて頂いております」

 ふーん。成る程成る程。

「クロム君、レスターと秋を会場に呼んでくれる?では、そろそろ会場に戻りましょうか。ユアンさん、ヤノ様のエスコートをお願いしますね?」

「っ——御意に」


◇◆◇


 会場には国内の貴族の娘も沢山いる。
陛下とリヒト様の目に留まる様に、パーティーの度に何度もチャレンジしに来ている肉食系女子達。

「「母上!」」

 クロム君に伝言されたレスターと秋が私の側にきて抱きついて来る。可愛いなぁ。

 ユアンさんにエスコートされて入場したヤノ様を見て、会場中がざわついている。
ユアンさん人気もすごいからね。
二人ともすっごい複雑そうな顔してる。

「ヤノ!!!!!」

 屈強な戦士の様な体躯、燃える様な赤い髪。
見た目は若いから年齢はよく分からないけれど、ガタイのいい男の人が、ユアンさんの手からヤノ様をひったくる様にして奪った。

「ヤノ様の、お父様でしょうか」

 私が話しかけると、ハッとした顔をしてバッと跪いて頭を下げた。跪いても大きな人だな。

「いかにも、ヤクトアを預かっております、ガランテ・ヤクトアと申します。王弟妃殿下にご挨拶申し上げる」

 いつのまにかリヒト様が私の腰を抱き、隣に立つ。それだけなのに、心強い。

「ヤクトア辺境伯様、ヤノ様を、私の侍女に迎えたいのですが……お許しいただけますか?」

「その様な……ほまれを、我が娘が……」

 あ、みんなびっくりしてるな。侍女はミリーナさんだけってずっと言い続けて断っていたからね。

 同じ様に頭を下げていたユアンさんもガバッと顔を上げちゃってる。

「ヤノ様、こちらへ」

 私が呼ぶと、びっくり顔のまま、それでも優雅な姿勢を保って私の前に来る。

 ヤノ様を私の横に立たせ、子供達に耳打ちする。
3人とも多くを語らずとも分かった様で直ぐに行動してくれた。
リヒト様は楽しそうに見てる。本当に楽しそう。何なの。

 私の子供達三人が私とヤノ様の前にひざまずく。クロム君とレスターはシルバーの軍服。秋もどこから調達したのか黒い小さな軍服を着ていて可愛い。

 小さな子竜三匹が私の前に跪き頭を垂れる。

 貴族達がみんな固唾を飲んで見守っているのがわかる。

「クロム、レスター、秋。貴方達には私を護る様、殿下から命がでていますね」

「はい、母上」
頭を下げたままのレスターが代表して答える。
こういう時のレスターは急にしっかりする。

「今後は私とクルミ、ヤノ様も護れますか?」

 三匹の子竜がザッとより深く頭を垂れ、またレスターが答える。

「命にかえましても」  

「ヤノ様を害する者は、私への攻撃だと思いなさい」

「「「 御意 」」」

 わぁ、可愛いけど、かっこいい!私の息子達!!

 モテるリヒト様の奥さんをやっている私がヤノ様のような嫌がらせを受けないのは、息子達が常に側にいるからだ。

 それならその中にヤノ様も組み込んでしまえばいい。この子達にとっては雑作も無いはず。

「リヒト様、母屋にヤノ様のお部屋、作ってくれる?」

「愛しい番の願いを聞かない男はいないだろ」

 リヒト様、超楽しそう。なんなのか。

「我が辺境伯家には過ぎるほどの栄誉……ありがたき幸せにございます。レスター殿下、シュウ殿下、小公爵様の魔力にかなうものなどございません。私も娘も、これ以上の安心はございません!本当に有難い……我が辺境伯家、妃殿下に生涯の忠誠を」

 でたな、またこの台詞。重いんだよ……さくっと流そう。

「許します。では、さっそくヤノ様に我が家を案内しても?」

 ヤノ様のお父様は泣き笑いのお顔になって、「娘を、宜しくお願い致します」と、また頭を下げた。

「じゃ、三人ともさっそく護衛をお願いね?ユアンさん、そのままヤノ様を私の離れまでエスコートお願いします」

「御意に」

「俺は後で行く。離れで待ってろ」 

 リヒト様が私のこめかみにキスをする。

 三匹の子竜に護られるのを見せつけながら私とヤノ様が退場し、その後の会場は騒然としていたらしい。何を言われても、離れまでは聞こえないし、息子達は強いんだぞ!わはははは!



◇◆◇



「三人ともすっごくかっこよかった!!大好き!」

 三匹をギュウギュウと抱きしめるとキャアキャアと腕の中で楽しそうな声を出す。

 直ぐ後ろでユアンさんとヤノ様もにこにこしてる。憂いはなくなったし、あとはユアンさんの頑張り次第かな?

 離れに着くと、ユアンさんが私の前に跪く。

 あ~~~またこれ…………まえにさらっと誓ってくれたのに、本格的なのきたな……

「妃殿下の繋いでくれた御縁、全力でものにすると誓いましょう。お力添えに、生涯の感謝を。私は次男ですが、シュトルツェ伯爵家はこれより妃殿下の後ろ盾、ひいてはクロム小公爵様の後ろ盾になる事を誓約申し上げる」

 突然名前を呼ばれたクロム君がキョトンとユアンさんをみる。

「ユアン兄?」

 ユアンさんは立ち上がるとにっこりとクロム君を見る。
まぁ、重いけど……クロム君の助けになってくれるって言うしいいか。

 ってゆーか既に手、繋いじゃってるねユアンさんとヤノ様。

「ふふ、許します。今日はお疲れでしょう?母屋のお部屋ができるまで、ユアンさん、お願いしますね。あ、もうユアンさんのお部屋の拡張でよくないかな?」

「私もそう思いますね。既にシュトルツェ家から辺境伯に新しく婚約書類を送る手筈を整えております」

「はやっ!!!!!」

 ユアンさん、にっこり笑ってる。ヤノ様、隣でびっくりしちゃってるじゃん。こわ。

「ヤノ様、侍女と言っても私は社交をしませんし、そんなに堅苦しく考えなくても大丈夫です。お友達になってくれたら…………嬉しいです」

 ヤノ様、泣いちゃってる。顔を覆うヤノ様の肩をそっと抱くユアンさん、絵になるなぁ。全方位王子!!

「妃殿下に、生涯の忠誠を……微力ながら……お力添えを…………」

 しゃくりあげてしまって、もう見ていられない。

「ユアンさん、あとはユアンさんのお仕事ですね。休ませてあげて下さい。侍女のお仕事は、やってもやらなくても大丈夫です。あそこまで言っておけば、誰も手を出さないでしょうし」

 ユアンさんが一礼し、ヤノ様をお姫様抱っこして母屋に帰って行った。王子様っぽさが限界突破してる。すごい。























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