貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第二章 人々の思惑

第3話 須磨皐月

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私の名前は須磨 皐月すま  さつき
貴生とは同じ大学のゼミの先輩後輩にあたる間柄。

「将来金持ちになって、俺をバカにした奴らを見返してやる!」

これが貴生の口癖で、安いボロアパートに住みバイトに明け暮れていた貴生を、ずっと私は支えてきた。

貴生は大学を卒業しても就職はせず、バイトで貯めた資金を元手にIT関連の企業を立ち上げた。
社員は貴生と私だけ。

最初はお給料なんて貰えなくて、私は食べて行く為に夜のお仕事もしながら、貴生と二人三脚で頑張ってきたの。

そんなある日
貴生が突然

「俺、結婚するわ。」

と言った。私は耳を疑った。ずっと一緒だって言ってたのに、私を裏切るの?
目の前が暗くなった。
だが貴生は悪い笑顔を浮かべ、私にこう言った。

「あの女…俺の結婚相手の女は資産家の娘だ。あるパーティーで知り合った社長の知り合いの娘で、娘と結婚したら、資金援助をしてくれると言ってきた。要は金蔓かねづるだな。」

何も言えずただ黙っていた私の肩を抱き、

「どんな女と結婚しようが、愛しているのは皐月だけだ。結婚したって俺たちの関係はずっと変わらない。愛してる。皐月。」

私は貴生の心がいつか離れて行ってしまうのではないかと不安な毎日を過ごしていた。が、貴生は本当に毎日私の所に帰ってきてくれた。また、会社が上手く行きだした事で、お金に余裕が出来ると、貴生は私にマンションを買って住まわせてくれたの。

貴生が奥さんとの間に子供が出来たと聞いた時も不安にはなったけど、
「アレが死んでも、子供がいれば櫻井の家からの資金援助が切れる事はない。わば、太い金蔓だよな。」

と笑い飛ばした貴生に、私は心底安心した。

奥さんの妊娠が分かった数ヶ月後、なんと私も妊娠している事が分かったの。
貴生は心から喜んでくれ、悪阻つわりに苦しむ私をいたわる様に愛してくれたわ。
そして生まれた娘(桃花)の事も愛してくれた。

貴生は奥さんの実家の親には『良き娘婿』を演じていると言っていた。
実際奥さんの親は、会社の筆頭株主になっていて、株主総会には必ず顔を出していた。
そんな時貴生は、櫻井の家の人に対し、愛想あいそよく接していた。私はそんな貴生を見ていて、『私は奥さんなんかに負けてない』
『私の方が幸せ』だと心に言い聞かせていた。

その奥さんは、貴生と結婚して11年目にこの世を去り、私は晴れて貴生の妻になったの。

前の奥さんとの間に生まれた女の子は、地味で暗くて、ただ頭がいいだけの女の子だった。
私は影で彼女の事を『金蔓』とか『太客』と呼び、表立っては馬鹿にしなかったが、夫婦の寝室や会社の社長室では思いっきり貴生と彼女を馬鹿にしていたのだった。
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