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26 博識なシルファ殿下 〜王子視点⑨過去〜

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 「あのさ、ソフィア。魔力総量を増やすんじゃなくて魔法の操作が上手になりたいんじゃないのか?」


 お前の魔力量は既に十分すぎるだろうが!? ひょっとして自覚無しか?


 「うん、まあそうだったような・・・」


 そもそも本が初心者向き過ぎたのがマズかったのかも知れない。

 最初は魔力総量を多くする事を学ぶもんな・・・


 「俺が『斬鉄剣』を作りたかったようにお前も何か目標があればいいんじゃないかな? そうすればもっと具体的に魔法を使おうとするから繊細な操作が出来る近道になるんじゃないか?」


 お前は魔王になるんじゃなくて繊細な魔法操作を覚えたいんだろ?


 そう思いながらソフィアに提案したのだが


 「目標ねえ」


 コテンと首を傾げて眉を寄せる。


 「俺は石◯五右◯門みたいになりたいから頑張ってるけどさ、お前は何かそういう憧れてるようなモノは無いの?」


 ――いつの間にか斬鉄剣→◯川五◯衛門にすり替わってるのに気が付かない2人である――


 「えッ? 考えて無かった。そっか」


 腕組みをしてウンウンと唸りながら考え始めるソフィアが急にポンと両手を鳴らした。


 「じゃあ、昔なりたかったモノになってみたい!」

 「え、ナニ?」


 魔王じゃないだろうな?


 「世界最強の魔法少女ッ!」


 魔王だった・・・。



×××



 ちょっと抜けてる魔王――魔法少女!――の手綱を握るにはどうするかな・・・ 

 そっか、頼られるように持ってきゃいいのか。

 魔王――魔法少女だってば!――の参謀位になればいいのか。

 取り敢えずコイツに負けないくらい知識を増やせばいいのかもな。


 「明日から森に行って魔法をぶっ放すぞ~!!」


 繊細とかいう言葉は何処かに行ってしまったようで、限りなく大雑把で大胆な作戦を口にするソフィアに胡乱な眼差しを送る俺。


 「大人に見つかるなよ?」

 「あ・・・ ハイ・・・」


 とりあえず参謀くさいアドバイスをしておいた・・・



×××



 今日のお勉強は終りッ! とばかりにベッドにダイブして足をパタパタさせるソフィア。

 そしてその横に腰掛ける本来のベッドの持ち主の俺。


 「で。ぶっ放すのは良いけど、どういう魔法にするのかは分かってるの?」

 「えーと、魔獣を狩る? 辺境の森の間引きも出来るから一石二鳥かな?」


 そうじゃないよ・・・


 「俺が聞きたいのはどんな魔法にするのかってこと!」

 「え、えとファイアーボールとか?」

 「何だよそれ? 森を燃やすつもりか?」


 ――呆れ顔になった従兄弟を見て、ちょっと考えるソフィア――


 「じゃあ、サンダーストーム?」

 「阿呆! そんな大技で森の木がぶっ倒れたらどうするんだよ!」

 「あじゃあウォーターアロー・・・」

 「・・・ここへ座れ」





 ――ベッドの上に正座をさせられて、滾々と基本の魔法の使い方からレクチャーされるソフィアだった・・・

 そして明日から基本魔法のおさらいを魔術師と一緒にやって、森の生態系を王宮図書館で確認して、魔獣や魔物の特徴や弱点を網羅して覚えようと計画を頭の中で練るシルファ。






 こうやって、ものすご~く博識で世話焼き、そして若干腹黒さの滲む王太子殿下が可憐な従姉妹の無謀な夢のお陰で恙無くつつがなく構築されていくのだった・・・






 合掌。
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