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10.彼もまた
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「……」
「……」
挨拶をした後、ヴェルラン様は黙り込んでいた。
彼が何を考えているのか、それは読み取れない。表情としては、あまり良いものではないように思えるのだが。
それを見ていると、こちらも言葉が出なくなる。どう切り出していいのか、私にはわからなかったのだ。
「ヴェルラン……黙り込んでどうしたのだ?」
「え? あ、いや、別に……」
「アゼルトお兄様、ヴェルランはきっと恥ずかしがっているのですよ」
「何?」
「ほら、ルナリアは可愛いですから」
「なるほど、そういうことか……」
沈黙を破ったのは、アゼルト様とイフェリア様だった。
二人にとっては、弟であるからだろうか。その口調は、とても軽い。
しかし言われた当の本人としては、溜まったものではないだろう。ヴェルラン様は、顔を赤くしている。
「兄上、姉上、勝手なことを言わないでください」
「あら、ヴェルランはルナリアが可愛くないと思っているのかしら?」
「そ、そういう訳ではありませんが……」
「ふふ、冗談よ。あなたは案外、人見知りだものね」
「ふっ……」
アゼルト様とイフェリア様は、ヴェルラン様のことをからかっているようだった。
ただそれによって、私は理解した。ヴェルラン様が緊張しているのだということを。
今までの人達がそうではなかった故に忘れていたが、考えてみれば当然のことである。こちらが緊張するように、あちらも緊張するのだ。
「ヴェルラン様、その……」
「ああいや……」
私が声をかけると、ヴェルラン様ははにかんだ。アゼルト様とイフェリア様のお陰が、先程までと比べると緊張は和らいでいるようである。
それは実の所、私も同じだ。ヴェルラン様が同じ人間であるとわかった今は、彼と幾分か落ち着いて話せるような気がする。
「色々と苦労をかけることになると思いますが、これからどうぞよろしくお願いします」
「別にそんなことは気にする必要はないさ。俺達は別に君の敵ではない。ここではいくら失敗してもいい。ここは公の場に出るための練習場だ」
「そう言っていただけると、こちらとしても助かります」
ヴェルラン様は、少し頬を赤くしながらも優しい言葉をかけてくれた。
その言葉に、私はまたも安心する。ヴェルラン様も、私のことを受け入れてくれるつもりであるとわかったからだ。
アーラクト公爵家の人々は、本当にそのつもりなのだろう。私にとってそれは、ありがたい限りである。
ただそれがわかったからこそ、少し怖くなってきた。
私の腕に刻まれているこの痣が、不幸を呼ぶかもしれない。私は改めてそのことについて、考えるのだった。
「……」
挨拶をした後、ヴェルラン様は黙り込んでいた。
彼が何を考えているのか、それは読み取れない。表情としては、あまり良いものではないように思えるのだが。
それを見ていると、こちらも言葉が出なくなる。どう切り出していいのか、私にはわからなかったのだ。
「ヴェルラン……黙り込んでどうしたのだ?」
「え? あ、いや、別に……」
「アゼルトお兄様、ヴェルランはきっと恥ずかしがっているのですよ」
「何?」
「ほら、ルナリアは可愛いですから」
「なるほど、そういうことか……」
沈黙を破ったのは、アゼルト様とイフェリア様だった。
二人にとっては、弟であるからだろうか。その口調は、とても軽い。
しかし言われた当の本人としては、溜まったものではないだろう。ヴェルラン様は、顔を赤くしている。
「兄上、姉上、勝手なことを言わないでください」
「あら、ヴェルランはルナリアが可愛くないと思っているのかしら?」
「そ、そういう訳ではありませんが……」
「ふふ、冗談よ。あなたは案外、人見知りだものね」
「ふっ……」
アゼルト様とイフェリア様は、ヴェルラン様のことをからかっているようだった。
ただそれによって、私は理解した。ヴェルラン様が緊張しているのだということを。
今までの人達がそうではなかった故に忘れていたが、考えてみれば当然のことである。こちらが緊張するように、あちらも緊張するのだ。
「ヴェルラン様、その……」
「ああいや……」
私が声をかけると、ヴェルラン様ははにかんだ。アゼルト様とイフェリア様のお陰が、先程までと比べると緊張は和らいでいるようである。
それは実の所、私も同じだ。ヴェルラン様が同じ人間であるとわかった今は、彼と幾分か落ち着いて話せるような気がする。
「色々と苦労をかけることになると思いますが、これからどうぞよろしくお願いします」
「別にそんなことは気にする必要はないさ。俺達は別に君の敵ではない。ここではいくら失敗してもいい。ここは公の場に出るための練習場だ」
「そう言っていただけると、こちらとしても助かります」
ヴェルラン様は、少し頬を赤くしながらも優しい言葉をかけてくれた。
その言葉に、私はまたも安心する。ヴェルラン様も、私のことを受け入れてくれるつもりであるとわかったからだ。
アーラクト公爵家の人々は、本当にそのつもりなのだろう。私にとってそれは、ありがたい限りである。
ただそれがわかったからこそ、少し怖くなってきた。
私の腕に刻まれているこの痣が、不幸を呼ぶかもしれない。私は改めてそのことについて、考えるのだった。
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