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33.変化の可能性

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「病院に行っても、わからないものなのでしょうか?」
「そうですね……この聖痕に関しては、怪我とかそういうものではありませんから」
「文献を調べてみるしかないということですか……」

 レリクス様は、白々しくそんなことを言った。
 病院など意味がないことなど、彼もわかっているだろう。この痣は、龍が宿った結果としてできたものだ。怪我などによってできる痣とは、まったく違う。

 もちろん、彼には何かしらの意図があって、そのことを秘密にしなければならないということはわかっている。
 しかし、よく考えてみると、その事情とはなんなのだろうか。単に、彼が慎重というだけなのだろうか。

「少々失礼なことかもしれませんが、聖痕というのはどこにあるんですか?」
「えっと、私の背中……より正確にいえば、右肩の辺りに」
「自分では確認できない位置にあるということですね?」
「ええ、そうですね」

 レリクス様は、セリティナの聖痕の位置を聞いた。
 それは、私も知らなかったことである。
 彼女の聖痕は、右肩にあるらしい。丁度、私と逆の位置ということになる。

「その聖痕に目に見えて何かが起こっている可能性もあるかもしれません。鏡などを駆使すれば、自分でも見られるとは思いますが、手っ取り早く誰かに、それを見てもらったりしてもいいのではないでしょうか?」
「……確かに、そうですね」

 レリクス様の言葉に、セリティナはゆっくりと頷いた。
 確かに、それはいい案かもしれない。私だって、ズグヴェルさんが作り出した腕は痣から出てきていた。同じように何かしらの変化が起こっているかもしれない。

「エルファリナさん、お願いできませんか?」
「え? 私?」
「はい」

 そこで、セリティナは私に話を振ってきた。
 それはつまり、私に背中を見て欲しいということだろうか。
 よく考えてみれば、レリクス様にそういうことを頼む訳にはいかない。私に話が回って来るのは、当然のことだろう。

 だが、それは大丈夫なのだろうか。
 私の痣と彼女の聖痕、それは同じ龍を宿しているものだ。何かしらの反応が起こったりしないのだろうか。少し心配である。

「もしかして、駄目ですか?」
「いえ、そんなことはありません。私でよければ、確認させていただきます」

 色々と考えたが、とりあえず私は彼女の要請を受け入れることにした。
 彼女の不安そうな顔を見ていると、そうしなければならないと思ってしまったのだ。

 まあ、そこまで心配する必要ないかもしれない。
 最近は私の痣も熱くなったりしていないし、そんな大事にはならないのではないだろうか。
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