「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗

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11.気味が悪い人

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「さてと、自己紹介も済んだわけですし、そろそろ話を移しましょうか」
「……どうしてあなたが取り仕切っているのかしら?」
「それならリメルナ嬢が取り仕切ってくださいますか?」
「……いいえ、いいわ。続けて頂戴」

 和やかだった私達は、ゼルート様の言葉に意識を切り替えることになった。
 今回の集まりは、挨拶というのが主題という訳でもない。いや、もちろんそれも大切なことではあるのだが、そもそもこうして挨拶することになった理由というのが重要なことなのだ。

「リメルナ、オーディス様のことだけれど、本当に知らないの?」
「ええ、知らないわ。まあ、トレファー侯爵家というものについて聞いたことがない訳ないけれど。確か、三年生にいたわよね?」
「エルヴァス様のことだよね?」
「ああ、そんな名前だったかしら」

 リメルナの言葉に、フェルトさんが名前を出した。
 二人が知っているということは、オーディス様のお兄様というのはそれなりに有名な人なのだろうか。私はあまり、聞いたことがないのだが。

「ラルーナ様、一年生の時に僕達はある事件に巻き込まれていたんです」
「ある事件?」
「ええ、まあ、それは重要なことでもないんですけれど、そこで僕はエルヴァス様と交戦したことがあって」
「交戦? そ、そんなに物騒なことがあったのですか?」
「そこまで物騒という訳ではないわよ。魔法絡みで、ちょっといざこざがあっただけだもの」

 二人が巻き込まれた事件のことを、私はまったく知らない。
 しかし交戦なんていう言葉が出ている時点で、穏やかではないことは確かだ。ここにこうして二人がいる時点で無事に解決したのだろうが、中々に不安である。

「そのエルヴァス侯爵令息の弟君が、今回の渦中にいる人という訳ですね。実際のその方のことを知っているのは、ラルーナ嬢です。どんな方なのですか?」
「え? いけ好かない……いえ、少々問題がある方のように、私は思いました。あくまで、個人の意見でしかありませんが」
「まあ、まともな人という訳ではないのでしょうね。何せ私に求婚して受け入れられた、なんて吹聴しているのだから。気持ち悪いというか、気味が悪いわね」

 私が言葉を濁していると、リメルナは鋭い言葉を口にしていた。
 それは彼女からすれば、当然のことだろう。まったく覚えのない人が求婚して、婚約が結ばれたと主張している。その状況は、恐怖としか言いようがない。
 正直、私もかなり混乱している。オーディス様には随分と振り回されたものだ。一体彼は、何を考えているのだろうか。
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