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1.国を蝕む災い

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 フェンデラット王国に、瘴気と呼ばれる災いがもたらされたのは、三代目国王様が亡くなってからすぐのことだった。
 国中で発生したもやのようなものは、大地を枯らし、人々に体調不良をもたらし、様々な厄災を引き起こした。
 それが、王国の創成期において発生した瘴気だったということはつい最近わかったことだ。

「瘴気の原因は、判明していない。一説によると、大地に宿っていた魔力が長い年月を経て有害なものに変化したともされているが、詳しいことはわかっていないのだ」

 四代目国王であるアナキシス様は、玉座に腰掛けながら私にそう言ってきた。
 彼が言っている通り、瘴気は原因がわかっていない。それらを解析することは難しく、学者達も手をこまねいているそうだ。

「だが、瘴気に対してどのように対処すればいいのかはわかっている。かつて我らの祖先であるバルキナシスは、ユーランという村娘を見つけた。当時、とある村で巫女と讃えられていた彼女には、特別な力が備わっていたのだ」
「特別な力……」
「この国に暮らすほとんどの人間は、魔法と呼ばれる力を用いて生活を送っている。しかし、ユーランは違った。彼女には魔法とは異なる奇跡の力が備わっていたのだ」

 アナキシス様は、玉座から立ち上がりゆっくりと私に近づいてきた。
 彼は、私の顎に指を添えて持ち上げる。すると、彼の整った顔立ちが目の前にあった。

「ユーランの力は、妖術と呼ばれている。それは、人の理を外れた力だ。我らが扱う魔法よりも強力なその力は、瘴気を鎮めることにも役立った。いや、というよりも瘴気を鎮められるのは彼女だけだったのだ」

 アナキシス様は、私の目を真っ直ぐに見てきた。
 彼の目には、期待が籠っている。その期待は当然、私に向けられたものだろう。

「ラーナ、君はそのユーランと同じ妖術を使うことができるね?」
「……ええ、恐らくはそうなのだと思います」

 アナキシス様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 私は今まで、自分の力がどういったものなのかということをそれ程気にしたことはなかった。
 他の人とは違うこの力を、不思議に思ったこともある。だが他の人達もそれで私を特別扱いすることもなかったため、いつからか気にしなくなったのだ。

「妖術を使うという者は、長い王国の歴史の中で何度か確認されている。現在確認されているのは、君だけだが……」
「つまり、アナキシス様は私に瘴気を鎮めろと仰るのですか?」
「ああ、そういうことになる。安心したまえ、ユーランが瘴気を鎮めた当時の資料が残っている。我々には扱いきれないものだが、君が見ればわかることもあるだろう。とにかく、我々は君に頼るしかない」
「……わかりました。やってみます」

 不安はあったが、私はアナキシス様の提案を受け入れた。
 現状瘴気を鎮める方法は、私の力しかわかっていない。つまり、私がやってみるしかないのである。
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