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5.届いた祈り
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一体、どれ程の間踊っていたのだろうか。滴る汗を感じながら、私は周囲を見渡した。
辺り一面には、瘴気は見当たらない。晴れやかなその景色は、瘴気が現れる前の景色だ。
そこで私は、動きを止める。確実という訳ではないが、恐らく瘴気は払えたからだ。
「……終わったのか?」
「国中から瘴気を取り除けたと確実に言える訳ではありませんが……」
「いいや、充分であるだろう。瘴気がなくなっているのは、辺りを見渡せばわかることだ。仮に多少残っていたとしても今は問題ではない。君の力は瘴気を払える。その事実が、何よりも重要なことなのだ」
アナキシス様は、そう言ってゆっくりと私に近づいてきた。
彼は、ふらつく私をそっと支えてくれる。失礼ではあるが、正直くたくたなので、私は彼に身を預けることにした。
「かなり疲弊しているようだな? 当然か、あれだけの間踊り、尚且つ妖術を行使していたというなら、肉体的にも精神的にも限界か」
「ええ……」
「ご苦労だったな。後のことは、我々に任せておけ。兵士達も、瘴気が晴れたことによって充分に動くことができるだろう。早く下山して、君を休ませよう」
「ありがとうございます……」
周囲を見てみると、先程までへばっていたはずの兵士達が立ち上がっている。
私が躍っている間に、体力を回復できたらしい。これならきっと、私一人くらいなら運んでもらえるだろう。
「兵士達よ。彼女は功労者だ。絶対に無事に送り届けろ。国王である僕以上に丁重に扱え」
「はっ!」
そこで私の体は、アナキシス様から兵士に預けられた。
一度緊張の糸が切れたからか、私の体は動かなくなっていた。故に今度は、兵士達に体を預けていく。
そんな状態の私は、周囲の人達が本当に丁重に扱ってくれていることに気付いた。アナキシス様が言った通り、功労者として扱われているということだろう。
「ラーナさん、あなたは自分達がお運びします。下山までどうか、お休みください」
「……ありがとうございます」
体を預けている兵士に呼びかけられて、私はゆっくりと言葉を返した。
それによって、私の意識は朦朧としてくる。どうやら、精神的にも限界がきてしまったらしい。
「アナキシス様、やりましたね。これで、フェンデラット王国は安泰だ……」
「ああ、本当にラーナには感謝しても仕切れない。妖術が使える彼女が、残っていてくれて本当によかった。もしも彼女が残っていなければ、どうなっていたことか……」
意識が途切れる前に、私の耳にそんな会話が聞こえてきた。
その会話に私は、少し違和感を抱いた。何か、おかしいように思えたのだ。
ただ薄れゆく意識に、私は勝てなかった。思考が遮られ、私は深い眠りに落ちていくのだった。
辺り一面には、瘴気は見当たらない。晴れやかなその景色は、瘴気が現れる前の景色だ。
そこで私は、動きを止める。確実という訳ではないが、恐らく瘴気は払えたからだ。
「……終わったのか?」
「国中から瘴気を取り除けたと確実に言える訳ではありませんが……」
「いいや、充分であるだろう。瘴気がなくなっているのは、辺りを見渡せばわかることだ。仮に多少残っていたとしても今は問題ではない。君の力は瘴気を払える。その事実が、何よりも重要なことなのだ」
アナキシス様は、そう言ってゆっくりと私に近づいてきた。
彼は、ふらつく私をそっと支えてくれる。失礼ではあるが、正直くたくたなので、私は彼に身を預けることにした。
「かなり疲弊しているようだな? 当然か、あれだけの間踊り、尚且つ妖術を行使していたというなら、肉体的にも精神的にも限界か」
「ええ……」
「ご苦労だったな。後のことは、我々に任せておけ。兵士達も、瘴気が晴れたことによって充分に動くことができるだろう。早く下山して、君を休ませよう」
「ありがとうございます……」
周囲を見てみると、先程までへばっていたはずの兵士達が立ち上がっている。
私が躍っている間に、体力を回復できたらしい。これならきっと、私一人くらいなら運んでもらえるだろう。
「兵士達よ。彼女は功労者だ。絶対に無事に送り届けろ。国王である僕以上に丁重に扱え」
「はっ!」
そこで私の体は、アナキシス様から兵士に預けられた。
一度緊張の糸が切れたからか、私の体は動かなくなっていた。故に今度は、兵士達に体を預けていく。
そんな状態の私は、周囲の人達が本当に丁重に扱ってくれていることに気付いた。アナキシス様が言った通り、功労者として扱われているということだろう。
「ラーナさん、あなたは自分達がお運びします。下山までどうか、お休みください」
「……ありがとうございます」
体を預けている兵士に呼びかけられて、私はゆっくりと言葉を返した。
それによって、私の意識は朦朧としてくる。どうやら、精神的にも限界がきてしまったらしい。
「アナキシス様、やりましたね。これで、フェンデラット王国は安泰だ……」
「ああ、本当にラーナには感謝しても仕切れない。妖術が使える彼女が、残っていてくれて本当によかった。もしも彼女が残っていなければ、どうなっていたことか……」
意識が途切れる前に、私の耳にそんな会話が聞こえてきた。
その会話に私は、少し違和感を抱いた。何か、おかしいように思えたのだ。
ただ薄れゆく意識に、私は勝てなかった。思考が遮られ、私は深い眠りに落ちていくのだった。
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