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22.王の最後
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アナキシスは窮地に立たされていた。
フェンデラット王国内の貴族達が、次々と隣国のハルバルト王国に付くことを表明し始めたからである。
彼の味方は、次々と減っていっている。その状況に、アナキシスは項垂れていた。
「ア、アナキシス様、ウォルバット伯爵もハルバルト王国側につくことを表明しました」
「……また、その報告か。次から次へと、なんと不義理な奴らだ! 他にはないのか! 何かいい報告はないのか!」
「そ、それは……」
報告に来た兵士は、ひどくやつれた様子のアナキシスを見ながら驚いていた。
この数日の事態によって、彼は老け込んでいた。彼は驚く程、憔悴していたのだ。
しかしそれは、当然のことである。このまま事態が進んで行けば、彼は終わりだ。その命さえも、奪われてしまうのである。
「ラーナはどうした? 妖術使い達はどこに行った?」
「ラーナは逃亡、他の妖術使い達は葬りました。この国にはいません」
「くそっ……あいつらさえいれば、俺はこんなことに! あいつらのせいだ。全ては、あいつらが悪い!」
アナキシスは部屋の隅で、頭を抱えていた。
彼は、自らの行いによって失った者達に責任を押し付けていた。そうやって彼は、現実逃避しようとしているのだ。
だが、現実は変わらない。彼が終わる時は、刻々と近づいてきているのである。
「……アナキシス様、このままではどの道あなたは終わってしまいます。ここはどうか、覚悟を決めてください」
「覚悟だと?」
「ハルバルト王国に囚われて恥を晒すくらいなら、この場で自ら命を絶ちましょう。王族としての誇りを、せめて守るのです」
「なっ……」
兵士は、アナキシスに短刀を渡そうとしてきた。
しかし、アナキシスは兵士から逃げるように後退る。彼は恐怖に怯えていた。
「ふざけるな! 俺は絶対に死なん! 王国が乗っ取られるというなら逃げ延びてやる! 俺が生きてさえいれば、また国を再建することはできるはずだ!」
「お言葉ですが、それは難しいでしょう。ハルバルト王国は強固な国、そこに取り込まれた時点でフェンデラット王国は終わりです……しかし、あなたに覚悟がないというなら」
「な、何を……」
そこで兵士は、ゆっくりと腰に短剣を抜いた。
そして彼は、そのままアナキシスに迫っていく。何をしようとしているかは、明白である。
「や、やめろ! 俺は誇りなんてどうだっていい! 死にたくないんだ! やめろぉ!」
その日王城には、王子の悲痛な叫びが響き渡った。
こうして、フェンデラット王国という国はなくなったのだった。
フェンデラット王国内の貴族達が、次々と隣国のハルバルト王国に付くことを表明し始めたからである。
彼の味方は、次々と減っていっている。その状況に、アナキシスは項垂れていた。
「ア、アナキシス様、ウォルバット伯爵もハルバルト王国側につくことを表明しました」
「……また、その報告か。次から次へと、なんと不義理な奴らだ! 他にはないのか! 何かいい報告はないのか!」
「そ、それは……」
報告に来た兵士は、ひどくやつれた様子のアナキシスを見ながら驚いていた。
この数日の事態によって、彼は老け込んでいた。彼は驚く程、憔悴していたのだ。
しかしそれは、当然のことである。このまま事態が進んで行けば、彼は終わりだ。その命さえも、奪われてしまうのである。
「ラーナはどうした? 妖術使い達はどこに行った?」
「ラーナは逃亡、他の妖術使い達は葬りました。この国にはいません」
「くそっ……あいつらさえいれば、俺はこんなことに! あいつらのせいだ。全ては、あいつらが悪い!」
アナキシスは部屋の隅で、頭を抱えていた。
彼は、自らの行いによって失った者達に責任を押し付けていた。そうやって彼は、現実逃避しようとしているのだ。
だが、現実は変わらない。彼が終わる時は、刻々と近づいてきているのである。
「……アナキシス様、このままではどの道あなたは終わってしまいます。ここはどうか、覚悟を決めてください」
「覚悟だと?」
「ハルバルト王国に囚われて恥を晒すくらいなら、この場で自ら命を絶ちましょう。王族としての誇りを、せめて守るのです」
「なっ……」
兵士は、アナキシスに短刀を渡そうとしてきた。
しかし、アナキシスは兵士から逃げるように後退る。彼は恐怖に怯えていた。
「ふざけるな! 俺は絶対に死なん! 王国が乗っ取られるというなら逃げ延びてやる! 俺が生きてさえいれば、また国を再建することはできるはずだ!」
「お言葉ですが、それは難しいでしょう。ハルバルト王国は強固な国、そこに取り込まれた時点でフェンデラット王国は終わりです……しかし、あなたに覚悟がないというなら」
「な、何を……」
そこで兵士は、ゆっくりと腰に短剣を抜いた。
そして彼は、そのままアナキシスに迫っていく。何をしようとしているかは、明白である。
「や、やめろ! 俺は誇りなんてどうだっていい! 死にたくないんだ! やめろぉ!」
その日王城には、王子の悲痛な叫びが響き渡った。
こうして、フェンデラット王国という国はなくなったのだった。
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