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5.昼起きて

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 妹のエルリナは、朝が弱いらしい。皆が起床しても中々起きてこない彼女のことを、私はよく叩き起こしていた。
 ちなみに、両親的は寝る子は育つということで、特にこのことについて気にしていない。いやそもそも、両親はエルリナのほぼ全てを肯定しているのだが。

「……んっ」
「あら……」
「お姉様? もう朝、ですか?」

 エルリナはその辺りについては割と無頓着なので、私は彼女の部屋に普通に入ることができる。そこで起こすのが、いつもの私だ。
 ただ、今の私はエルリナのことを甘やかすと決めている。よって今日は、彼女を起こさず自然に起きるのを待っていた。

「朝、というのは少し違うかもしれないわね。もう時間的には昼かしら?」
「ひ、昼?」

 私の言葉に、エルリナは飛び起きた。
 先程まですやすやと安眠していた彼女は、焦ったような顔で辺りを見渡している。

「ど、どうして起こしてくれなかったのですか?」
「え? だって、あなたはいつも言っているじゃない。もう少し寝かせて欲しいって」
「そ、それはそうですけど……あれ? 今日の午前は、マリンソワさんが来るはずだったのではありませんか?」
「ああ、それについては安心して頂戴。日を改めてもらうことにしたから」
「そんな、悪いですよ。マリンソワさんも暇ではないんですから」

 エルリナは、寝間着のままで頭を抱えていた。
 しかしながら、いくら焦った所でもう時間が時間だ。これに関しては、既にどうすることもできない問題である。

「大丈夫。マリンソワさんも快く承諾してくれたから。エルリナのそういった変更には、もう慣れていると仰っていたわ。あなたのことを、よくわかってくださっているみたい」
「そ、それはいいことではないのではありませんか?」
「むしろ、親密である証拠なのではないかしら」

 実際の所、マリンソワさんはとても大らかな人だ。
 彼女も大概、エルリナには甘い。子供が好きであると公言しているため、エルリナの行いで怒ることはないのかもしれない。
 だというのに、エルリナはひどく慌てた様子だ。本当にそんなに気にすることではないと思うのだが。

「そういえば、シルファルド様は?」
「ああ、もうご帰宅されたわよ」
「お、お見送りしなければならなかったのでは?」
「それは、私やお父様やお母様がいたから大丈夫よ」
「わ、私が寝ていて見送りできなかったという事実がまずいのでは?」
「大丈夫、シルファルド様も理解してくれているわ」

 私の言葉に、エルリナはとても微妙な顔をしていた。
 どうやら、今回の寝坊をかなり気にしているようだ。
 それは、私にとっては驚くべきことである。てっきり、いっぱい眠れてよかったとか言うものだとばかり、思っていたのだが。
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