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12.幸せな生活

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 私が甘やかすようになってから、エルリナはなんというか真面目になった。
 家庭教師のマリンソワさんが驚く程に勉学に励み、さらには慈善活動などにも積極的になっていった。
 わがままだった彼女に、どのような心境の変化があったかはわからない。ただ、シルファルド様が私に授けてくれた作戦が功を奏したということだろうか。

「お姉様? どうかされたのですか?」
「少し昔のことを思い出していたのよ。あなたも随分と立派になったと思って……」
「子供の時のことを言われるのは、少し恥ずかしいですね……私は随分とわがままな子供でしたから」

 両親や私は変わらず甘やかしていた訳だが、エルリナは立派な淑女へと成長した。
 今では、社交界でも有名なくらいだ。エルリナ程に素敵な令嬢は中々いないと、紳士達の間でも噂されている。

「そういう意味では、お姉様はあまり変わりませんね」
「あら? そうかしら? これでも、色々と変わることを繰り返してきたつもりなのだけれど」
「根本的な面で、お姉様は変わっていません。私のことを思ってくださっていますし、シルファルドお義兄様のことを変わらず愛しています」
「それはまあ……」

 エルリナの言葉に、私は隣にいるシルファルド様の方を見た。
 彼は、少し照れながら紅茶を口に含んでいる。そういう少し照れ屋な所は、昔から変わらない。

「シルファルドお義兄様も、変わりませんね……お姉様のことをどこまでも大切にしていて、私も結ばれるならそういう人がいいと思ってしまいます」
「いくらエルリナでも、シルファルド様だけはあげられないわよ?」
「それはわかっていますよ。ふふ、お姉様は本当にシルファルド様のことが大好きですね」

 私の言葉に対して、エルリナは楽しそうに笑顔を浮かべていた。
 その笑顔に、私も思わず笑ってしまう。彼女がこのように笑えるようになって良かった。今はとてもそう思える。

「……シルファルド様のお陰ですね?」
「え? そうなのでしょうか?」

 私は、隣にいるシルファルド様に小声で話しかけた。
 すると彼は、面食らったような顔をする。彼の助言で全てが始まったというのに、その辺りに関しては無頓着であるようだ。

「あの助言のことを忘れている訳ではありませんよね?」
「いえ、あれは案の一つというだけで、実際に効果があるかどうかは自信がありませんでしたからね。それを実行したウルティナさんの功績であると僕は思っています」
「謙虚ですね……まあ、そういう所もかっこいいんですけれど」
「お姉様? 何か惚気ていますか?」

 愛する夫や妹とともに過ごす時間は、とても大切な時間だ。私は改めて、それを認識していた。
 私のそんな幸福な生活は、きっとこれからも続いていくだろう。そう思って、私は笑顔を浮かべるのだった。
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