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12.朝が来ても

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「……」
「……」

 私とメリリナさんは、静かに顔を見合わせた。
 ロナード様の家に来てから一夜が明けて朝が来た。既にそれなりにいい時間である。
 それなのに、ロナード様が起きてこない。彼の部屋は二階にあるはずだが、特に物音も聞こえてこず、彼が起きている気配がない。

「……少し様子を見に行ってきます」
「お嬢様、それなら私が……」
「いえ、メリリナさんはロナード様に強く言えないでしょうから、私が行きます」
「強く言うつもりなのですか?」
「ええ、場合によっては」

 ロナード様は、無能な人間ではない。だが、だらしない怠け者ではある。それは、昨日のやり取りでわかったことだ。
 つまり、彼がいつまで経っても起きないのはそういうことなのだろう。いや、もちろん体調不良という可能性もない訳ではないが。
 そんなことを考えながら階段を上った私は、すぐにロナード様の部屋の前まで着いた。とりあえず、まずはノックしてみるとしよう。

「ロナード様、失礼します。もう朝ですよ」

 声をかけても、中から反応は返って来ない。とりあえず、私は鍵がかかっていないかを確かめてみる。

「開いている……入りますよ、ロナード様」

 私は戸を開けて部屋の中に入ることにした。仮に彼が体調不良だった場合は大変だ。緊急事態なので、勝手に部屋に入る理由はあるといえるだろう。
 そんな風に部屋に入った私は、そこが自分の部屋と同じ造りの部屋であることを理解した。どうやら、この家の部屋はすべて同じような造りであるらしい。
 ただ、私の部屋と雰囲気は少し違うような気がする。やはり、ロナード様が長い間過ごしたことによって、彼の色が出ているということだろう。

「ロナード様?」

 私は、ベッドに寝転がっているロナード様に声をかけてみた。
 彼は、穏やかな顔ですやすやと眠っている。見た所、体調は悪くなさそうだ。

「ロナード様、朝ですよ?」
「……」

 とりあえず私は、小声で声をかけてみる。
 だが、反応はない。深く眠っているようだ。

「ロナード様! 起きてください!」
「……む」
「あ、やっと起きてくれましたか……」

 私が大声で呼びかけると、流石に目を覚ましてくれた。
 彼は、目をこすりながら周囲を見渡す。そして、私を見つけて驚いたような顔をする。

「……どうして、あなたがここにいるんだ?」
「ロナード様が中々起きないから起こしに来たんです。具合でも悪いんですか?」
「いや、そういう訳じゃないが……別にいいだろう、多少長く寝たって」
「よくありません。もういい時間なんですから」
「早く起きたって、特にやることなんてないさ。仕事は一応ない訳ではないが、それもすぐに終わる。だから、もう少し寝かせてくれ」
「なっ……」

 私に色々と説明してから、ロナード様は布団を被った。
 どうやら、まだ眠るつもりであるらしい。
 だらしない怠け者、その言葉が私の中に浮かんできた。やはり、彼にそういった面があることは間違いないようだ。
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