1 / 24
1.落ちこぼれと言われて
しおりを挟む
「知っているか? バレリア公爵家のラルリア嬢のことを」
「うん? ああ、あの落ちこぼれっていう……」
「そうそう。その落ちこぼれのことだよ」
舞踏会の会場にて聞こえてきた声に、私は思わず足を止めることになった。
ラルリア・バレリア、その人物について私はよく知っている。なぜなら、そのラルリアとはこの私だからだ。
「可哀想な人だよなぁ。公爵家に生まれたっていうのに、才能がないなんて」
「言えてるな。バレリア公爵家といえば、国王様の弟君の弟君の家だろう? そんな家に才能もなく生まれたなんて、ともすれば不幸なことかもしれないな」
私について話しているのは、二人の男性だった。
そんな二人の口振りからは、私に対する侮蔑の感情が読み取れる。
私とあの二人との間には、特に面識なんてものはない。私は彼らの名前も知らないくらいだ。
それなのにどうしてここまで嫌われているのか、その理由はなんとなく想像できる。
あれは恐らく、やっかみというものだ。下位の貴族の中には、上位の貴族に対して憎しみのような思いを抱いている者がいる。彼らもその一員であるということだろう。
彼らは気に入らない上位の貴族を批判する話の種として、私のことを利用している。恐らくはそんな所なのだろうが、当人である私からしたら溜まったものではない。
とはいえ、当然二人も私が聞いているなんて思ってはいないだろう。二人が話を止めることはない。友人間の戯れとして、二人は私のことをひどく馬鹿にする。
「そういう人に上に立たれているとさ、俺達としては気が気ではないよなぁ。ただ公爵家に生まれただけで偉くなるなんておかしな話だ」
「まあ、せめて能力くらいは上であって欲しいよなぁ。ほら、ラルリア嬢の妹、リルルナ嬢なんかはすごいんだろう?」
「よくわからないけど、そうみたいだな。でも、それも結局公爵家の権力によって誇張されているだけなんじゃないか?」
「ああ、そうか。そうだよなぁ。まったく、公爵家ってのはなんでも望み通りになる訳か」
二人は支離滅裂なことを言いながら、笑い合っていた。
公爵家の権力で望み通りになるのなら、私は落ちこぼれなんて言われていない。そんな簡単なことも、わからないということだろうか。
しかしながら、それも仕方のないことだといえる。二人が言っているのは、所詮やっかみだ。要するに私達公爵家のことを否定できるなら、何でも良いということなのだろう。
「……何やら楽しそうですね」
「うん?」
「誰だ? って、あ、あんたは……」
そんな風に呑気に話をしていた二人は、自分達の後ろから近づけて来ている人がいるとは気付かなかったようだ。
その人物の顔を見て、二人は驚いている。そこにいたのは、この国の王太子であり、私のいとこでもあるアドルヴ殿下だ。
「うん? ああ、あの落ちこぼれっていう……」
「そうそう。その落ちこぼれのことだよ」
舞踏会の会場にて聞こえてきた声に、私は思わず足を止めることになった。
ラルリア・バレリア、その人物について私はよく知っている。なぜなら、そのラルリアとはこの私だからだ。
「可哀想な人だよなぁ。公爵家に生まれたっていうのに、才能がないなんて」
「言えてるな。バレリア公爵家といえば、国王様の弟君の弟君の家だろう? そんな家に才能もなく生まれたなんて、ともすれば不幸なことかもしれないな」
私について話しているのは、二人の男性だった。
そんな二人の口振りからは、私に対する侮蔑の感情が読み取れる。
私とあの二人との間には、特に面識なんてものはない。私は彼らの名前も知らないくらいだ。
それなのにどうしてここまで嫌われているのか、その理由はなんとなく想像できる。
あれは恐らく、やっかみというものだ。下位の貴族の中には、上位の貴族に対して憎しみのような思いを抱いている者がいる。彼らもその一員であるということだろう。
彼らは気に入らない上位の貴族を批判する話の種として、私のことを利用している。恐らくはそんな所なのだろうが、当人である私からしたら溜まったものではない。
とはいえ、当然二人も私が聞いているなんて思ってはいないだろう。二人が話を止めることはない。友人間の戯れとして、二人は私のことをひどく馬鹿にする。
「そういう人に上に立たれているとさ、俺達としては気が気ではないよなぁ。ただ公爵家に生まれただけで偉くなるなんておかしな話だ」
「まあ、せめて能力くらいは上であって欲しいよなぁ。ほら、ラルリア嬢の妹、リルルナ嬢なんかはすごいんだろう?」
「よくわからないけど、そうみたいだな。でも、それも結局公爵家の権力によって誇張されているだけなんじゃないか?」
「ああ、そうか。そうだよなぁ。まったく、公爵家ってのはなんでも望み通りになる訳か」
二人は支離滅裂なことを言いながら、笑い合っていた。
公爵家の権力で望み通りになるのなら、私は落ちこぼれなんて言われていない。そんな簡単なことも、わからないということだろうか。
しかしながら、それも仕方のないことだといえる。二人が言っているのは、所詮やっかみだ。要するに私達公爵家のことを否定できるなら、何でも良いということなのだろう。
「……何やら楽しそうですね」
「うん?」
「誰だ? って、あ、あんたは……」
そんな風に呑気に話をしていた二人は、自分達の後ろから近づけて来ている人がいるとは気付かなかったようだ。
その人物の顔を見て、二人は驚いている。そこにいたのは、この国の王太子であり、私のいとこでもあるアドルヴ殿下だ。
589
あなたにおすすめの小説
殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。
二人ともに愛している? ふざけているのですか?
ふまさ
恋愛
「きみに、是非とも紹介したい人がいるんだ」
婚約者のデレクにそう言われ、エセルが連れてこられたのは、王都にある街外れ。
馬車の中。エセルの向かい側に座るデレクと、身なりからして平民であろう女性が、そのデレクの横に座る。
「はじめまして。あたしは、ルイザと申します」
「彼女は、小さいころに父親を亡くしていてね。母親も、つい最近亡くなられたそうなんだ。むろん、暮らしに余裕なんかなくて、カフェだけでなく、夜は酒屋でも働いていて」
「それは……大変ですね」
気の毒だとは思う。だが、エセルはまるで話に入り込めずにいた。デレクはこの女性を自分に紹介して、どうしたいのだろう。そこが解決しなければ、いつまで経っても気持ちが追い付けない。
エセルは意を決し、話を断ち切るように口火を切った。
「あの、デレク。わたしに紹介したい人とは、この方なのですよね?」
「そうだよ」
「どうしてわたしに会わせようと思ったのですか?」
うん。
デレクは、姿勢をぴんと正した。
「ぼくときみは、半年後には王立学園を卒業する。それと同時に、結婚することになっているよね?」
「はい」
「結婚すれば、ぼくときみは一緒に暮らすことになる。そこに、彼女を迎えいれたいと思っているんだ」
エセルは「……え?」と、目をまん丸にした。
「迎えいれる、とは……使用人として雇うということですか?」
違うよ。
デレクは笑った。
「いわゆる、愛人として迎えいれたいと思っているんだ」
美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。
ふまさ
恋愛
「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」
そう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。
真剣な顔で問いかけられたセシリーは、固まった。からかいや嫌味などではない、心からの疑問。いくら慣れたこととはいえ、流石のセシリーも、カチンときた。
「…………ぷっ」
姉のカミラが口元を押さえながら、吹き出す。それにつられて、広間にいる者たちは一斉に笑い出した。
当然、サイラスがセシリーを皮肉っていると思ったからだ。
だが、真実は違っていて──。
【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中
【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
さこの
恋愛
婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。
そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。
それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。
あくまで架空のゆる設定です。
ホットランキング入りしました。ありがとうございます!!
2021/08/29
*全三十話です。執筆済みです
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。
ふまさ
恋愛
小さくて、可愛くて、庇護欲をそそられる姉。対し、身長も高くて、地味顔の妹のリネット。
ある日。愛らしい顔立ちで有名な第二王子に婚約を申し込まれ、舞い上がるリネットだったが──。
「あれ? きみ、誰?」
第二王子であるヒューゴーは、リネットを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。
理想の妻とやらと結婚できるといいですね。
ふまさ
恋愛
※以前短編で投稿したものを、長編に書き直したものです。
それは、突然のことだった。少なくともエミリアには、そう思えた。
「手、随分と荒れてるね。ちゃんとケアしてる?」
ある夕食の日。夫のアンガスが、エミリアの手をじっと見ていたかと思うと、そんなことを口にした。心配そうな声音ではなく、不快そうに眉を歪めていたので、エミリアは数秒、固まってしまった。
「えと……そう、ね。家事は水仕事も多いし、どうしたって荒れてしまうから。気をつけないといけないわね」
「なんだいそれ、言い訳? 女としての自覚、少し足りないんじゃない?」
エミリアは目を見張った。こんな嫌味なことを面と向かってアンガスに言われたのははじめてだったから。
どうしたらいいのかわからず、ただ哀しくて、エミリアは、ごめんなさいと謝ることしかできなかった。
それがいけなかったのか。アンガスの嫌味や小言は、日を追うごとに増していった。
「化粧してるの? いくらここが家だからって、ぼくがいること忘れてない?」
「お弁当、手抜きすぎじゃない? あまりに貧相で、みんなの前で食べられなかったよ」
「髪も肌も艶がないし、きみ、いくつ? まだ二十歳前だよね?」
などなど。
あまりに哀しく、腹が立ったので「わたしなりに頑張っているのに、どうしてそんな酷いこと言うの?」と、反論したエミリアに、アンガスは。
「ぼくを愛しているなら、もっと頑張れるはずだろ?」
と、呆れたように言い捨てた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる