上 下
14 / 48

14.禁忌の魔法

しおりを挟む
「先程言った通り、闇の魔法は禁忌とされているものです。とても危険な魔法で、後世に伝えるべきではないとされた魔法なのです」
「……一体、どのような危険があるのですか?」
「魔力が汚染されるのです」
「汚染?」

 エルムルナ様の言葉に、私は首を傾げた。
 魔力が汚染される。それは、まったく聞いたことがない表現だ。どういう現象なのか、想像がつかない。

「実は、魔力というものには、光と闇の性質というものがあるのです。私達が普段扱っているのは、光の魔力……難しいでしょうが、そう認識してください」
「光の魔力……」
「その魔力は、正しい形です。正常な状態なので、何も問題ありません。しかし、闇の魔法を使うと、それが闇に染まっていくのです」
「……闇に染まると、どうなるのですか?」
「闇の魔力は、肉体と精神を破壊します。大抵の場合は、それが原因で死に至るものなのです」
「そんな……」

 光の魔力や闇の魔力、初めて聞く単語に私は色々と混乱していた。
 魔法を使って、体の魔力が変化してやがて死に至る。それは、とても恐ろしいことだ。
 確かに、それを封印するのは理解できる。そんなものを誰もが使えば、間違いなく破滅するからだ。

「でも、そんなものは誰も使わないのではありませんか? わざわざ死の危険を冒してまで、その魔法を使う必要がないと思うのですけど……」
「闇の魔法は、とても強力なものが多いのです。しかも、少ない魔力でも行使できる。その性質上、手を伸ばす人が多かったようです」
「なるほど……」

 私が思いついた疑問は、すぐに解消された。
 当然のことではあるが、優れた魔法を使うためには多大な魔力が必要である。それが少ない魔力で実行できるというなら、手を伸ばす人も少なくはないだろう。
 よく考えてみれば、ホーネリアはそこまで魔力を持っていなかった。そんな彼女が、私から魔力を奪い続けるなどという魔法を使っている時点で、その魔法の性質に気づくべきだっただろう。

「あなたの妹は、どこかでその魔法が記述された魔導書を見つけたのでしょうね……これは、大きな問題です。できることなら、その魔導書は処分したいものです」
「そうですね……もしも、それが広まってしまえば……」
「手がつけられなくなるでしょう。厄介なことに、人から魔力を奪うことができるものですから、私やあなたでもなす術がないかもしれません」

 ホーネリアが見つけた魔導書は、思っていた以上に凶悪なものだったようだ。
 その魔法が広まるようなことがあってはならない。闇の魔法が広まれば、待っているのは破滅でしかないからだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

令嬢はまったりをご所望。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,575pt お気に入り:21,440

婚約破棄を宣告された公爵令嬢は猶予をもらった。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:116

俺の妹になってください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:9

どうやら我が家は異世界と繋がったらしい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1,233

憂鬱喫茶

ホラー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:0

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:348

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:0

処理中です...