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41.不穏な気配

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 私とアグナヴァン様は、大樹の元まで来ていた。
 そこには、先生がいる。やはり、大樹を調査しているようだ。

「先生、少しいいですか?」
「おや……」
「うん?」

 声をかけてから、私は少し違和感に気づいた。
 この大樹からは、闇の魔力は完全に払ったはずだ。それなのに、闇の魔力の気配がする。

「……え?」

 そこで、私はその闇の魔力がどこから発生しているかを理解した。
 闇の魔力の気配は、先生の方からしているのだ。

「失礼します」
「くっ……」
「なっ……!」

 私は、即座に先生に手を伸ばした。
 突然の行動だったためか、彼は抵抗することもなかった。そのため、そのまま私の魔力が彼の体を包み込む。

「ぐあっ!」
「フェルーナ殿、何を?」
「アグナヴァン様、大丈夫です。ただ、先生の体を汚染している闇の魔力を払っているだけですから」
「何?」

 私の言葉に、アグナヴァン様は目を丸めていた。
 彼は、闇の魔力を感じ取れない。この状況をすぐに理解する方が無理だろう。

「……フェルーナ嬢、どうやらあなたに感謝しなければならないようですね」
「……先生、正気に戻ったのですね?」
「え、ええ……自分では、先程までも正気のつもりでしたが」

 しばらくして、私は先生の体を蝕んでいた闇の魔力がなくなったことを感じた。
 それと同時に目が覚めたのか、先生は目を丸くしている。

「なんということでしょうか……まさか、この私が再び大樹を闇の魔力で汚染しようとするなんて」
「先生、何があったのですか?」
「わかりません。ですが、気づいたら、そうしようとしていました……休む前は、なんともなかったのですが」
「……それなら、先生が休んでいた部屋に本があるのかもしれません」
「本……?」
「えっと……実は、その本が全ての元凶である可能性があって」
「なんですって?」

 先生は、恐らく本によって闇の魔力で汚染されたのだろう。
 それなら、本はまだ彼が休んでいる部屋にあるかもしれない。やっと手がかりらしい手がかりが見つかったのである。

「……詳しいことは、後で話します。先生は、とりあえず休んでいてください。私達は、先生が休んでいた部屋に向かいますから」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。私の実力は、先生も知っているでしょう?」
「それは、そうですが……」

 私の言葉に、先生は苦笑いしていた。
 魔法の実力では、私の方が上である。それを理解しているため、そんな表情をしているのだろう。
 心配する気持ちが、それで拭えるものではないことは私もわかっている。しかし、今は一刻も早く行動したいので、少し嫌な言い方ではあるが、こういうしかない。

「フェルーナ殿、兵士の一人にパストマン教授が休んでいた部屋へ案内してもらうように頼んでおいた」
「アグナヴァン様……ありがとうございます」

 私の話を聞いたアグナヴァン様は、すぐに動いてくれた。
 こうして、私達は先生が休んでいた部屋に行くことにするのだった。
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