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48.平和な日常
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「アグナヴァン様、本当に色々とありがとうございます」
「どうしたのだ、急に?」
私は、ふとアグナヴァン様にお礼を述べていた。
スウェンド王国の王城に帰って来てから、私はエルムルナ様の補助を続けていた。
次期聖女として期待されながらも、平和な日々を送っていた私は、今日もいつも通りアグナヴァン様と夕食を取っていたのだ。
「あなたのおかげで、私の命は助かりました。それに、ドルマニア王国を救い、妹と和解することができました」
「別に、それは俺のおかげという訳ではない」
「いえ、あなたのおかげです」
アグナヴァン様のおかげで、私には色々といいことがあった。
それについて正式にお礼を言いたくなったのだ。
ちなみに、妹のホーネリアは現在こちらの国で暮らしている。彼女にとって、私を見捨てた両親の元に帰るというのはあまり気が進まないことであったらしく、私についてくることにしたようだ。
「それで、ですね……その改めてアグナヴァン様に言いたいことあるのです」
「それはお礼ではないことなのか?」
「ええ、そうですね……」
私は自然と食事の手を止めていた。
それを見たからのなのか、アグナヴァン様もその手を止めてくれる。
なんというか、いささかタイミングを見誤ったような気がする。もう少し、いい場があったのではないだろうか。そう思わなくはない。
とはいえ、私とアグナヴァン様が一日の間で接することができるのは、この場くらいだ。お互い忙しい身であるため、仕方ないと思うことにしよう。
「……私は、あなたの婚約者となれたことを心から嬉しく思っています。あなたのような方に愛していただけているという現状は、私にとってとても幸福なことです」
「む……そうか、そう言ってもらえるのはこちらとしても嬉しい限りだ」
「……はっきりと言って、私はあなたに心惹かれています。順番としては、あべこべになってしまっているかもしれませんが、そう思っているのです」
「……ありがとう」
私の言葉に、アグナヴァン様はゆっくりとお礼の言葉を呟いた。
彼の頬は少し赤くなっている。私の言葉に照れているようだ。
その口から出たのが単調なお礼であるというのもそれの証明だろう。今の彼は恐らく、動揺しているのだ。
「その……どうか、これからもよろしくお願いします。アグナヴァン様が望むなら、私は大丈夫ですよ。いつでも覚悟はできていますから」
「それは……」
「……さあ、食べるのを再開しましょう。いつまでも手を止めていると料理が冷めてしまいますから」
「いや、だが……」
私は、照れ隠しに料理を口に運んだ。
そんな私に対して、アグナヴァン様はぽかんとしている。
こうやって見ていると、彼の凛々しい王子としての一面が嘘のようだ。そんな一面もあるからこそ、私は彼のことが好きになったのだろうとは思っているのだが。
そんなことを考えながら、私はアグナヴァン様とともに生きるこれからの幸福な日々に思いを馳せるのだった。
「どうしたのだ、急に?」
私は、ふとアグナヴァン様にお礼を述べていた。
スウェンド王国の王城に帰って来てから、私はエルムルナ様の補助を続けていた。
次期聖女として期待されながらも、平和な日々を送っていた私は、今日もいつも通りアグナヴァン様と夕食を取っていたのだ。
「あなたのおかげで、私の命は助かりました。それに、ドルマニア王国を救い、妹と和解することができました」
「別に、それは俺のおかげという訳ではない」
「いえ、あなたのおかげです」
アグナヴァン様のおかげで、私には色々といいことがあった。
それについて正式にお礼を言いたくなったのだ。
ちなみに、妹のホーネリアは現在こちらの国で暮らしている。彼女にとって、私を見捨てた両親の元に帰るというのはあまり気が進まないことであったらしく、私についてくることにしたようだ。
「それで、ですね……その改めてアグナヴァン様に言いたいことあるのです」
「それはお礼ではないことなのか?」
「ええ、そうですね……」
私は自然と食事の手を止めていた。
それを見たからのなのか、アグナヴァン様もその手を止めてくれる。
なんというか、いささかタイミングを見誤ったような気がする。もう少し、いい場があったのではないだろうか。そう思わなくはない。
とはいえ、私とアグナヴァン様が一日の間で接することができるのは、この場くらいだ。お互い忙しい身であるため、仕方ないと思うことにしよう。
「……私は、あなたの婚約者となれたことを心から嬉しく思っています。あなたのような方に愛していただけているという現状は、私にとってとても幸福なことです」
「む……そうか、そう言ってもらえるのはこちらとしても嬉しい限りだ」
「……はっきりと言って、私はあなたに心惹かれています。順番としては、あべこべになってしまっているかもしれませんが、そう思っているのです」
「……ありがとう」
私の言葉に、アグナヴァン様はゆっくりとお礼の言葉を呟いた。
彼の頬は少し赤くなっている。私の言葉に照れているようだ。
その口から出たのが単調なお礼であるというのもそれの証明だろう。今の彼は恐らく、動揺しているのだ。
「その……どうか、これからもよろしくお願いします。アグナヴァン様が望むなら、私は大丈夫ですよ。いつでも覚悟はできていますから」
「それは……」
「……さあ、食べるのを再開しましょう。いつまでも手を止めていると料理が冷めてしまいますから」
「いや、だが……」
私は、照れ隠しに料理を口に運んだ。
そんな私に対して、アグナヴァン様はぽかんとしている。
こうやって見ていると、彼の凛々しい王子としての一面が嘘のようだ。そんな一面もあるからこそ、私は彼のことが好きになったのだろうとは思っているのだが。
そんなことを考えながら、私はアグナヴァン様とともに生きるこれからの幸福な日々に思いを馳せるのだった。
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あれ、バカ王子はどうなったんですか?
感想ありがとうございます。
彼も、自分の愚行を反省していると思います。
44話、闇の魔力が一ヶ所病みになっている。
ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。
あの王のことだし、罪人だから我が国で引き取るとか無理やり連れていきそう。
感想ありがとうございます。
今後の展開に、ご期待いただけると幸いです。