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15.新たな客人
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私は、ルベート様とニーベル伯爵夫妻とともに屋敷の玄関までやって来ていた。
そこには、お腹の大きな若い女性がいる。その女性は、不安そうな顔をしながら、周囲を警戒していた。
それは当たり前のことだ。身なりからして、彼女はまず間違いなく平民である。そんな彼女がこんな所に来て、平静でいられる訳ではない。
しかしそれでも彼女がここに来たということには、大きな意味があるはずだ。それは恐らく、彼女の身に宿っている新しい命が関係しているのだろう。
「……お嬢さん、私はニーベル伯爵家の当主であるラフォルドだ。君はどうやら、我が息子リヴルムに用があるらしいが、リヴルムは今来客に対応している。まず、私に用件を聞かせてもらえないだろうか?」
ニーベル伯爵は、穏やかに女性に話しかけていた。
警戒はしているが、高圧的ではない。その態度からは、彼が紳士であることがわかる。
平民に対する強い差別的意識は、リヴルム様特有のものということなのだろう。やはり彼は、ニーベル伯爵家の中でも特殊なのかもしれない。
「ニーベル伯爵、私はフォルナと申します。ペソットという村から、私はやって来ました」
「ペソットか……そんな所から、そんな体でここまでやって来るのは大変だっただろう」
「はい。しかし私は、どうしてもリヴルム様に会いたかったのです。彼はこの子の父親ですから」
「なるほど……」
フォルナという女性の言葉に、ニーベル伯爵は唸っていた。
彼女が話したことは、概ね私達の予想していた通りのことである。
どうやらリヴルム様は、ペルファ嬢以外の女性とも関係を持っていたらしい。それも、彼が見下しているはずの平民と。
「つまり君は、リヴルムと関係を持っていたということか?」
「はい。もう三年くらいになります」
「それで、妊娠したと?」
「ええ……迷いましたが、この子の将来のためにもお伝えしに来ました」
「ふむ……」
ニーベル伯爵は、明らかに困っていた。
それは当然のことである。息子が平民を妊娠させていたなんて、どう考えても困った事実だ。
そしてその事実は、私にとっても考えなければならないことだった。
このニーベル伯爵家の不祥事は、婚約を考え直さなければならない程の事実である。
今回の婚約は、破棄するべきだ。私の頭の中には、そんな考えが過ってきた。
恐らくこれには、お父様も納得してくれるだろう。既に隠し子がいる伯爵令息なんて、いくらなんでも婚約相手として不適切だ。私がここで判断したとしても、そこまで責められはしないだろう。
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ニーベル伯爵は、穏やかに女性に話しかけていた。
警戒はしているが、高圧的ではない。その態度からは、彼が紳士であることがわかる。
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「ニーベル伯爵、私はフォルナと申します。ペソットという村から、私はやって来ました」
「ペソットか……そんな所から、そんな体でここまでやって来るのは大変だっただろう」
「はい。しかし私は、どうしてもリヴルム様に会いたかったのです。彼はこの子の父親ですから」
「なるほど……」
フォルナという女性の言葉に、ニーベル伯爵は唸っていた。
彼女が話したことは、概ね私達の予想していた通りのことである。
どうやらリヴルム様は、ペルファ嬢以外の女性とも関係を持っていたらしい。それも、彼が見下しているはずの平民と。
「つまり君は、リヴルムと関係を持っていたということか?」
「はい。もう三年くらいになります」
「それで、妊娠したと?」
「ええ……迷いましたが、この子の将来のためにもお伝えしに来ました」
「ふむ……」
ニーベル伯爵は、明らかに困っていた。
それは当然のことである。息子が平民を妊娠させていたなんて、どう考えても困った事実だ。
そしてその事実は、私にとっても考えなければならないことだった。
このニーベル伯爵家の不祥事は、婚約を考え直さなければならない程の事実である。
今回の婚約は、破棄するべきだ。私の頭の中には、そんな考えが過ってきた。
恐らくこれには、お父様も納得してくれるだろう。既に隠し子がいる伯爵令息なんて、いくらなんでも婚約相手として不適切だ。私がここで判断したとしても、そこまで責められはしないだろう。
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