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14.似てない家族
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私はルベート様とともに、客室に来ていた。
リヴルム様がペルファ嬢と話している間、そこで待機することになったのだ。
「申し訳ないね。こんなことになってしまって」
「ごめんなさいね。あなたにも迷惑をかけてしまって」
そこにやって来たのは、ニーベル伯爵夫妻だった。
二人は、私に対して本当に申し訳なさそうな顔をしている。
それは当然といえば当然だ。ペルファ嬢の件は、私にとっては失礼なことであるし、その原因はニーベル伯爵家側にあるのは間違いない。
しかしそれでも、ここまで申し訳なさそうにするということには、ニーベル伯爵夫妻が人が良いからとしか言いようがないだろう。
表面上は謝っていても、明らかに悪いと思っていないような人を私は何度も見てきた。だが夫妻は、そういう感じではない。それが演技であるなら見事なものではあるのだが。
「……なんというか、不思議な顔をしていますね?」
「え? あ、その……」
「……わかりますよ。兄上のことでしょう?」
「まあ……」
そこでルベート様が、私に小声で話しかけてきた。
彼の言う通り、私はニーベル伯爵夫妻の様子にリヴルム様のことを思い出していた。
ルベート様と接した時にも思ったが、リヴルム様とニーベル伯爵夫妻の纏う雰囲気は、まったく違うものである。
彼は紳士的な人物であるのだが、どこか刺々しさがあった。しかし、夫妻やルベート様からはそれがまったく伝わってこない。
もしかすると、リヴルム様はニーベル伯爵家にとってはイレギュラーな存在なのだろうか。
他の家族の態度に、私はそんなことを思っていた。
「……失礼します」
「む……なんだ?」
私が色々と考えていると、部屋の戸が叩かれた。
その直後、焦ったような顔をしたメイドが部屋の中に入ってくる。
それは明らかに、問題があったというような顔だ。まさか、リヴルム様とペルファ嬢の話がこじれているのだろうか。
「何かあったのかね?」
「それがその……またお客様が来られて」
「客?」
「はい。リヴルム様に会わせて欲しいと懇願していて……」
「何?」
メイドの言葉に、ニーベル伯爵は眉をひそめていた。
私とルベート様も、顔を見合わせている。リヴルム様への客人、それが重なるなんて変な話だ。一体今度は、どのような客人なのだろうか。
「一体、どこの誰がやって来たのだ?」
「わかりません。ただ、身なりからして平民だと思います。お腹が大きかったですから、恐らく妊婦さんかと」
「妊婦……嫌な予感がするな」
ニーベル伯爵は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
その気持ちは、よく理解できる。私もなんとなく状況が見えてきた。これは恐らく、ニーベル伯爵家にとって良くないことが起きているということなのだろう。
リヴルム様がペルファ嬢と話している間、そこで待機することになったのだ。
「申し訳ないね。こんなことになってしまって」
「ごめんなさいね。あなたにも迷惑をかけてしまって」
そこにやって来たのは、ニーベル伯爵夫妻だった。
二人は、私に対して本当に申し訳なさそうな顔をしている。
それは当然といえば当然だ。ペルファ嬢の件は、私にとっては失礼なことであるし、その原因はニーベル伯爵家側にあるのは間違いない。
しかしそれでも、ここまで申し訳なさそうにするということには、ニーベル伯爵夫妻が人が良いからとしか言いようがないだろう。
表面上は謝っていても、明らかに悪いと思っていないような人を私は何度も見てきた。だが夫妻は、そういう感じではない。それが演技であるなら見事なものではあるのだが。
「……なんというか、不思議な顔をしていますね?」
「え? あ、その……」
「……わかりますよ。兄上のことでしょう?」
「まあ……」
そこでルベート様が、私に小声で話しかけてきた。
彼の言う通り、私はニーベル伯爵夫妻の様子にリヴルム様のことを思い出していた。
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彼は紳士的な人物であるのだが、どこか刺々しさがあった。しかし、夫妻やルベート様からはそれがまったく伝わってこない。
もしかすると、リヴルム様はニーベル伯爵家にとってはイレギュラーな存在なのだろうか。
他の家族の態度に、私はそんなことを思っていた。
「……失礼します」
「む……なんだ?」
私が色々と考えていると、部屋の戸が叩かれた。
その直後、焦ったような顔をしたメイドが部屋の中に入ってくる。
それは明らかに、問題があったというような顔だ。まさか、リヴルム様とペルファ嬢の話がこじれているのだろうか。
「何かあったのかね?」
「それがその……またお客様が来られて」
「客?」
「はい。リヴルム様に会わせて欲しいと懇願していて……」
「何?」
メイドの言葉に、ニーベル伯爵は眉をひそめていた。
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