23 / 44
23.穏やかな伯爵
しおりを挟む
「えっと……あなたが、アルシエラさんですか?」
「あ、はい。私がアルシエラです。アルシエラ・エルシエット、アルシャナの娘です」
目の前の男性は、私の顔をじっと見てきた。
見るからに穏やかそうな見た目をしたその男性は、このランバット伯爵家の現当主である。
もっとも、彼は母にとっては義理の兄にあたる人物だ。要するに、彼はランバット伯爵家にとってはお婿さんにあたる。つまり、母との血の繋がりはない。
「なるほど、確かにアルシャナの面影があるような気がします。もっとも、私は彼女とそこまで深く関わっていた訳ではありませんから、断定することはできませんが……」
「そうですか……」
「しかしながら、あなた方が嘘をついているとは思っていませんよ。そちらにおられるギルバートさんのことは私も知っています。ラナキンス商会の重役が、まさか詐欺の片棒を担いでいるなんてことはないでしょうからね」
ランバット伯爵は、私よりもむしろギルバートさんに注目しているようだった。
領地の有力者が同行していることによって、私の話の信憑性は高まったようである。
少々複雑な気持ちではあるが、信じてもらえているなら問題はない。私はとにかく、母のことが聞ければそれでいいのだから。
「それで、母とランバット伯爵家に関することなんですけれど……」
「その話ですか……しかしそれは、私よりも妻に聞いた方がいいでしょう。色々とあったとは聞いていますが、所詮私は部外者に近しい存在です。問題の根底にあるのは、どうやら妻とアルシャナの間にあるようですから」
私の質問に対して、ランバット伯爵は少し困ったような様子でそう答えてくれた。
詳しいことを、彼は本当に知らないのだろう。その困惑からは、それが読み取れる。
「えっと、それなら夫人はどちらにいらっしゃるのですか?」
「妻は今、ボランティア活動に参加しています。帰って来るのは恐らく夕刻になるでしょう。申し訳ありませんが、その活動の場所に行くか、後日改めて訪ねていただくか、ということになるでしょうな……」
「ボランティア……」
「活動……」
「おや……」
ランバット伯爵の説明に、私とギルバートさんは顔を見合わせた。
私達にとって、夫人がやっていることは非常に既視感があったからだ。
もちろん、貴族たるものそういう活動に参加するのはむしろ当たり前といえるのかもしれない。しかし理想がそこまで実現できていない中で、その二人の一致はなんというか繋がりを感じさせるものだった。
「あ、はい。私がアルシエラです。アルシエラ・エルシエット、アルシャナの娘です」
目の前の男性は、私の顔をじっと見てきた。
見るからに穏やかそうな見た目をしたその男性は、このランバット伯爵家の現当主である。
もっとも、彼は母にとっては義理の兄にあたる人物だ。要するに、彼はランバット伯爵家にとってはお婿さんにあたる。つまり、母との血の繋がりはない。
「なるほど、確かにアルシャナの面影があるような気がします。もっとも、私は彼女とそこまで深く関わっていた訳ではありませんから、断定することはできませんが……」
「そうですか……」
「しかしながら、あなた方が嘘をついているとは思っていませんよ。そちらにおられるギルバートさんのことは私も知っています。ラナキンス商会の重役が、まさか詐欺の片棒を担いでいるなんてことはないでしょうからね」
ランバット伯爵は、私よりもむしろギルバートさんに注目しているようだった。
領地の有力者が同行していることによって、私の話の信憑性は高まったようである。
少々複雑な気持ちではあるが、信じてもらえているなら問題はない。私はとにかく、母のことが聞ければそれでいいのだから。
「それで、母とランバット伯爵家に関することなんですけれど……」
「その話ですか……しかしそれは、私よりも妻に聞いた方がいいでしょう。色々とあったとは聞いていますが、所詮私は部外者に近しい存在です。問題の根底にあるのは、どうやら妻とアルシャナの間にあるようですから」
私の質問に対して、ランバット伯爵は少し困ったような様子でそう答えてくれた。
詳しいことを、彼は本当に知らないのだろう。その困惑からは、それが読み取れる。
「えっと、それなら夫人はどちらにいらっしゃるのですか?」
「妻は今、ボランティア活動に参加しています。帰って来るのは恐らく夕刻になるでしょう。申し訳ありませんが、その活動の場所に行くか、後日改めて訪ねていただくか、ということになるでしょうな……」
「ボランティア……」
「活動……」
「おや……」
ランバット伯爵の説明に、私とギルバートさんは顔を見合わせた。
私達にとって、夫人がやっていることは非常に既視感があったからだ。
もちろん、貴族たるものそういう活動に参加するのはむしろ当たり前といえるのかもしれない。しかし理想がそこまで実現できていない中で、その二人の一致はなんというか繋がりを感じさせるものだった。
153
あなたにおすすめの小説
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる