生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。

木山楽斗

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1.子爵家での立場

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 レヴィトン子爵家の長女であった母は、ある日私を身籠ったことを家族に告白したらしい。
 婚約によって他家と信頼関係を築く貴族にとって、そのような突然の妊娠は許されることではなかった。さらに母の場合は、相手を明かせないという事情も付随した。レヴィトン子爵家の面々からは、かなりの顰蹙を買ったらしい。

 それでも母は、私を産んだ。私にとってはお祖父様にあたると当時のレヴィトン子爵も、最終的には認めたらしい。お祖母様とともに、私のことはそれなりに可愛がってくれていたそうだ。
 しかし母の兄、私にとっては伯父様にあたるラーゼン様がレヴィトン子爵を継いでからは、事情が変わった。彼及びその妻は、私のことを認めなかったのである。

「そもそもの話、父親がどこの誰かもわからないような娘をこのレヴィトン子爵家に置いているということが間違いです」
「お母様の言う通りだわ。ルシェーラ、あんたはここで暮らすべき存在ではないということよ? お父様の温情でここにいられるということを、よく覚えておきなさい」

 伯母様といとこであるリリアナ様は、いつものように私をなじってきた。
 それは私にとっては、日常的なことである。今のレヴィトン子爵家の面々は、一人を除いて私をストレス解消の道具としか思っていないのだ。

 本人達は、私がここにいることを間違いだと言っているが、それは別に私が望んでいることではない。できることなら私だって、ここにはいたくないと思っている。
 しかしレヴィトン子爵家は、それを許してはくれない。それは表向きには血筋の者を保護するためだが、本当は恐らく私といういくらでも叩ける相手を手放したくないということなのだろう。

「あなたなんか、生まれてこなければ良かったのに……」
「ふん、あの子は本当に愚かな女でした。ともに生まれ育ったあの人も言っていました。昔からわがままな女だったと……あなたは生まれたことが間違いです」
「……母上、姉上、そこまでにしてもらいましょうか」
「うん?」
「あら……」

 レヴィトン子爵家の歪さを私が感じていると、その場に一人の男性がやって来た。彼は、私のもう一人のいとこロナード様である。
 彼は、伯母様とリリアナ様を睨みつけている。自身の母と姉の行動を咎めているのだ。

「ロナード……また、私の邪魔をするつもりなの?」
「姉上、見苦しい真似はどうかおやめください。レヴィトン子爵家の淑女として、姉上はもっと寛大であるべきです」
「知ったような口を聞いて……」
「リリアナ、やめなさい」
「お母様……」

 リリアナ様は、ロナード様の言葉に激昂していた。
 この姉弟は、仲が良いとは言い難い。顔を合わされば、いつも言い争っているような気がする。
 しかしそんな姉弟の喧嘩を、伯母様は止めた。最愛の娘と息子が言い争うことは、許容することができないということだろう。どうやらこの場は収めてくれそうだ。
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