私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗

文字の大きさ
19 / 48

19.伯爵の狙い

しおりを挟む
 スラッドさんと話した後も、私はフレイル様とともに村を見回っていた。
 色々な人と話したが、それらの反応は悪いものではなかったように思える。私の思い込みという可能性もあるが、恐らくは問題ないはずだ。

「……お祖父様の狙いというものが、なんとなくわかったような気がします」
「え?」

 次の場所へと向かう道中、フレイル様はゆっくりと言葉を呟いた。
 バルフェルト伯爵の狙い、それはつまり、私を同行させて理由ということだろうか。
 それは明白なものである。何かがしたいと思う私に、役目を与えてくれたというだけのことだ。

「お祖父様は、アルティア嬢の持つ気高さというものに注目しているのでしょうね」
「気高さ、ですか?」
「ええ、村の人達の反応を見て、それがわかりました。アルティア嬢には高貴さというものがあります。それはもしかしたら、僕達バルフェルト伯爵家に足りないものかもしれない」
「……そのようなことは、ないと思いますが」

 フレイル様の言葉に、私はすぐに反論していた。
 それは、バルフェルト伯爵家の人達に高貴さがないということに対する否定だ。私は、フレイル様の中に根付いている誇りを知っている。あれは正しく、高貴さというものだろう。

「いえ……僕達バルフェルト伯爵家は、威厳というものが少し足りていません。その自覚は、お祖父様も含めて全員が持っているものです」
「それは……まあ、皆さん優しい方ですからね」
「民の方々から、親しみやすさを覚えてもらえていることは、良いことであるとも思っています。しかし、時には威厳というものが必要です。言い方は悪いかもしれませんが、平民の方々に舐められたら終わりですからね」

 フレイル様の言葉に、今度は反論することができなかった。
 威厳というものがバルフェルト伯爵家に足りていないことには、少し納得できてしまったのだ。柔和で優しい人達なので、それに関してはどうしてもそうなってしまうのだろう。
 それは別に、欠点という訳でもない。領地の民に慕われているということには、利点もある。そしてそれは、恐れられているよりもずっと良い。

「この村の人達の様子から、舐められているようには思えませんが……」
「多くの人達に関しては、そうだと思います。ただ平民の方の中には――いえ、貴族でもなんでも変わりませんが、悪い人はいます」
「そういった人達に付け入る隙を与えることになる、ということですか?」
「ええ、正しくその通りです」

 フレイル様は、真剣な顔をしていた。
 そういった表情からは、やはり高貴さというものは感じられる。
 ただ威厳に関しては、なんとも言えない。そこはかとなく優しい彼からは、それは確かに感じ辛いものだった。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

ご存知ないようですが、父ではなく私が当主です。

藍川みいな
恋愛
旧題:ご存知ないようですが、父ではなく私が侯爵です。 タイトル変更しました。 「モニカ、すまない。俺は、本物の愛を知ってしまったんだ! だから、君とは結婚出来ない!」 十七歳の誕生日、七年間婚約をしていたルーファス様に婚約を破棄されてしまった。本物の愛の相手とは、義姉のサンドラ。サンドラは、私の全てを奪っていった。 父は私を見ようともせず、義母には理不尽に殴られる。 食事は日が経って固くなったパン一つ。そんな生活が、三年間続いていた。 父はただの侯爵代理だということを、義母もサンドラも気付いていない。あと一年で、私は正式な侯爵となる。 その時、あなた達は後悔することになる。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。

藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。 バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。 五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。 バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。 だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。 そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。 しかしその婚約は、すぐに破談となる。 ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。 メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。 ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。 その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。

処理中です...