私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗

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19.伯爵の狙い

 スラッドさんと話した後も、私はフレイル様とともに村を見回っていた。
 色々な人と話したが、それらの反応は悪いものではなかったように思える。私の思い込みという可能性もあるが、恐らくは問題ないはずだ。

「……お祖父様の狙いというものが、なんとなくわかったような気がします」
「え?」

 次の場所へと向かう道中、フレイル様はゆっくりと言葉を呟いた。
 バルフェルト伯爵の狙い、それはつまり、私を同行させて理由ということだろうか。
 それは明白なものである。何かがしたいと思う私に、役目を与えてくれたというだけのことだ。

「お祖父様は、アルティア嬢の持つ気高さというものに注目しているのでしょうね」
「気高さ、ですか?」
「ええ、村の人達の反応を見て、それがわかりました。アルティア嬢には高貴さというものがあります。それはもしかしたら、僕達バルフェルト伯爵家に足りないものかもしれない」
「……そのようなことは、ないと思いますが」

 フレイル様の言葉に、私はすぐに反論していた。
 それは、バルフェルト伯爵家の人達に高貴さがないということに対する否定だ。私は、フレイル様の中に根付いている誇りを知っている。あれは正しく、高貴さというものだろう。

「いえ……僕達バルフェルト伯爵家は、威厳というものが少し足りていません。その自覚は、お祖父様も含めて全員が持っているものです」
「それは……まあ、皆さん優しい方ですからね」
「民の方々から、親しみやすさを覚えてもらえていることは、良いことであるとも思っています。しかし、時には威厳というものが必要です。言い方は悪いかもしれませんが、平民の方々に舐められたら終わりですからね」

 フレイル様の言葉に、今度は反論することができなかった。
 威厳というものがバルフェルト伯爵家に足りていないことには、少し納得できてしまったのだ。柔和で優しい人達なので、それに関してはどうしてもそうなってしまうのだろう。
 それは別に、欠点という訳でもない。領地の民に慕われているということには、利点もある。そしてそれは、恐れられているよりもずっと良い。

「この村の人達の様子から、舐められているようには思えませんが……」
「多くの人達に関しては、そうだと思います。ただ平民の方の中には――いえ、貴族でもなんでも変わりませんが、悪い人はいます」
「そういった人達に付け入る隙を与えることになる、ということですか?」
「ええ、正しくその通りです」

 フレイル様は、真剣な顔をしていた。
 そういった表情からは、やはり高貴さというものは感じられる。
 ただ威厳に関しては、なんとも言えない。そこはかとなく優しい彼からは、それは確かに感じ辛いものだった。
感想 19

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