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16.揺れる伯爵家
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ソルリア嬢は、ヴァルガド伯爵家の屋敷に未だに留まっているらしい。
ローガルと添い遂げる。彼女はそのつもりなのだ。そんな彼女の元に、私とゼルフォン様は何人かの同行者とともに訪れていた。
「こ、これは一体……」
当然のことながら、屋敷にはローガルがいる。
彼は、私達の来訪に固まっていた。それは当然のことだろう。私達の周りには、彼がよく知っている人達がいるのだから。
「ローガル様……」
「隣の女性は、誰ですか?」
商人の娘ナラテアとヴァルガド伯爵家の領民ルノエラは、それぞれローガルと関係を持っていた女性達だ。
私との婚約が破談になったことによって、二人は自分がローガルと結ばれるものだと信じ込んでいた。そんな彼女達に浮気を認めさせるために、ここに連れてきた。これで二人とも、ローガルの本性がわかっただろう。
「ローガル様、この二人は誰ですか?」
「ああ、いや……」
二人の来訪によって、ソルリア嬢も揺れていた。
それは当然のことだろう。ローガルに親しそうに接近する二人の女性のことは、彼女の立場からすれば、とても気になるだろう。
「友人……だよ」
「友人? ローガル様、私は友人なんですか?」
「私に言ってくれたあの言葉は、嘘だったのでしょうか?」
ローガルの言葉に、ナラテアとルノエラの二人も駆け寄った。
彼女達からしても、この状況は理解できないだろう。ローガルの愛を、ソルリア嬢も含めて疑っているようだ。
「え、えっと……」
ローガルは、段々と言葉を詰まらせるようになっていった。
彼としては、何も言い返せない状況だ。それも仕方ない。
「ローガル様、まさかこの二人とも関係を持っていたというのですか? ひ、ひどいです! あなたの愛が真に向けられているのは、私ではなかったのですか!」
「ソ、ソルリア、落ち着いて……」
「……愚かなものだな」
目に涙を浮かべながら言葉を発しているソルリア嬢に対して、私の隣にいるゼルフォン様はため息をついていた。
ソルリア嬢の判断に、心底呆れているのだろう。今の彼女は、本当に滑稽だ。
「これは皆さんに言えることですが……私と婚約していると知っていながら、ローガルと関係を持った上で、彼の愛が自分にだけ向けられていると考えたのが間違いでしたね。既に浮気をしている人なのですから、他に浮気をしていてもおかしくないでしょうに……」
「まあ、彼女達も今回の件でよくわかったでしょう。ローガル伯爵令息が、信用に足る人物ではないということを……」
私達の目の前で、一人の男性と三人の女性は言い争っている。それは見るに堪えない光景だ。修羅場というのは、こういう場のことをいうのだろう。
その修羅場において、ローガルは絶望した表情を浮かべている。ただ、それは彼の自業自得だ。自分が蒔いた種というものである。
ローガルと添い遂げる。彼女はそのつもりなのだ。そんな彼女の元に、私とゼルフォン様は何人かの同行者とともに訪れていた。
「こ、これは一体……」
当然のことながら、屋敷にはローガルがいる。
彼は、私達の来訪に固まっていた。それは当然のことだろう。私達の周りには、彼がよく知っている人達がいるのだから。
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「私に言ってくれたあの言葉は、嘘だったのでしょうか?」
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彼女達からしても、この状況は理解できないだろう。ローガルの愛を、ソルリア嬢も含めて疑っているようだ。
「え、えっと……」
ローガルは、段々と言葉を詰まらせるようになっていった。
彼としては、何も言い返せない状況だ。それも仕方ない。
「ローガル様、まさかこの二人とも関係を持っていたというのですか? ひ、ひどいです! あなたの愛が真に向けられているのは、私ではなかったのですか!」
「ソ、ソルリア、落ち着いて……」
「……愚かなものだな」
目に涙を浮かべながら言葉を発しているソルリア嬢に対して、私の隣にいるゼルフォン様はため息をついていた。
ソルリア嬢の判断に、心底呆れているのだろう。今の彼女は、本当に滑稽だ。
「これは皆さんに言えることですが……私と婚約していると知っていながら、ローガルと関係を持った上で、彼の愛が自分にだけ向けられていると考えたのが間違いでしたね。既に浮気をしている人なのですから、他に浮気をしていてもおかしくないでしょうに……」
「まあ、彼女達も今回の件でよくわかったでしょう。ローガル伯爵令息が、信用に足る人物ではないということを……」
私達の目の前で、一人の男性と三人の女性は言い争っている。それは見るに堪えない光景だ。修羅場というのは、こういう場のことをいうのだろう。
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