派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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106.存在する差

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「友達、ですか……」
「メルティナ? どうかしたの?」

 私とアルフィアの会話を聞いてから、メルティナはゆっくりとそう呟いた。彼女は少し考えるような表情をしている。私達の会話に、何か思う所があるようだ。

「いえ……すみません。友達ということに関して、色々と難しいものだと思いまして」
「難しいもの? そうかな?」

 メルティナの言葉の意味が、私にはわからなかった。
 友達というのは、そんなに難しいものだろうか。確かに、人間関係に難しい部分はある。だが、そこまでのことなのだろうか。

「シズカさんの世界は、確か貴族や身分といったものは、そこまでないのですよね?」
「うん、まあ、時代や国によって、そういうのもあるけど、少なくとも私が住んでいる国では、あまりそういうものはないかな?」
「そうですか……だから、シズカさんは誰にでも分け隔てなく接することができるのかもしれませんね」
「え?」
「私達は常に身分というものを思い浮かべてしまいます。平民と貴族、貴族の中でも身分に差はあります。そういう線引きがあるのです」

 私は、メルティナの言葉の意味がやっと理解できた。
 こちらの世界には身分の差というものが存在する。その差がある中で友達になるというのは、確かに難しいことかもしれない。
 私は、そういうのがない世界から来て、こちらの世界では地位が高い公爵令嬢として過ごした。だから、そういうことをあまり認識できていなかったのだろう。
 だが、言われてみれば理解できる。身分の差というものがあるのは、それなりに深刻な問題だろう。

「身分の差……確かに、そうよね」

 メルティナの言葉で理解したのは、私だけではなかったようだ。アルフィアも、同じように驚いていたのである。
 彼女は、公爵令嬢だ。そのため、メルティナや他の者達よりも、そういうことの認識は薄かったのだろう。

「メルティナも、それにファルーシャもそうなの?」
「え? 私ですか?」

 アルフィアは、そこでファルーシャに言葉を向けた。彼女は、それに困惑している。自分に話が来るとは思っていなかったのだろう。

「そうですね……どちらかというと、私もアルフィア様と同じような立場ですから……」
「聞き方が悪かったわね。私のことをそういう風に思っているの?」
「それは……そうですね。意識していない訳ではありません」

 アルフィアの言葉に、ファルーシャはゆっくりと頷いた。それに対して、アルフィアは少し暗い表情になる。
 恐らく、彼女は対等を求めているのだろう。取り巻き達のことを話していた時のことから、それが伺える。
 だが、この世界ではやはりそれは難しいのだろう。身分の差、私はそれを改めて実感する。
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