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 私は、自分の提案を納得してもらうための説得を始めることにした。
 お父様を説得するのは、難しいだろう。それなりに、考えながら話す必要がある。

「嫌がっている彼女を嫁がせるよりも、私を嫁がせる方が賢明だとは思いませんか?」
「それは……しかし、それはあちらに対して、失礼なことだ。婚約者を変えたいという提案だけでもそうだが、婚約破棄されたお前に変えたいなどというのは……」
「ウェルリフ伯爵には、悪評がついています。誰かに流されたとしても、その悪評を彼は覆せていません。それは、彼の貴族としての落ち度であるといえるはずです。その落ち度から、こちらのある程度の提案は受け入れてもらえるのではないでしょうか?」
「彼に、落ち度などない」

 お父様は、頑なな態度だった。
 あくまで、彼に対して誠実に対応したいと思っているようだ。
 それは、人間としては美徳なのかもしれない。だが、貴族としては少しだけおかしい点もある。
 その点を突くことで、お父様には私の提案を受け入れてもらうことにしよう。多少強引でも、その方がいいはずだ。

「お父様、私達は貴族です。あくまで、利益を得られるように動くべきです。相手に攻められる部分があるなら、それを攻め立て、こちらが有利になるように仕向けるべきではありませんか?」
「貴族として生きてきた私に、貴族としての生き方を説こうというのか?」
「これから、私の婚約で苦心することになるかもしれません。そうなるくらいなら、負債を持っているウェルリフ伯爵に私を押し付ける方が賢明だとは思いませんか?」
「負債など……」
「背負っているのです。悪評があるということは、明らかな負債です。その結果、私は婚約を破棄されたのですよ? それが、世間の評価というものなのです。その責任を彼にとってもらうのは、そこまでおかしいことでしょうか?」
「む……」

 そこで、お父様の表情が少し変わった。
 恐らく、私の理論にある程度納得してしまったのだろう。

「……確かに、お前の言うことには一理ある」
「……そうでしょう?」
「仕方ない……ウェルリフ伯爵に、そのように提案することにしよう」

 お父様は、私の提案を受け入れてくれた。
 私は、少しだけ安心する。これで、後はウェルリフ伯爵が納得してくれるかどうかだ。

「お姉様……」
「リスリナ、心配しないで。私は、大丈夫だから……」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていいの。私は、本当に大丈夫だから……」

 リスリナは、しおらしくしていた。
 私に血塗れ伯爵を押し付けることを、申し訳ないと思っているのだろう。
 しかし、これでいいいのだ。彼女よりも、私がウェルリフ伯爵に嫁ぐ方が、エルフィード子爵家にとって一番いいことなのである。
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