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 ドルビン様と婚約破棄してから、私はしばらくゆっくりとしていた。
 そろそろ、お父様も私の婚約について考えている頃だろう。だから、私も行動を開始するべき時である。

「失礼します」
「む……入ってもいいぞ」
(カルミラか……何かあったのか?)

 私は、再びお父様の執務室を訪れていた。
 ここで、彼に色々と助言するのが私の目的なのである。

「お父様、私の婚約に関して少々話したいことがあるのです」
「話したいこと?」
(ほう? カルミラからそれを言ってくるとは……)
「私は、とある人物を婚約者にしたいと思っています。少し話を聞いてもらえますか?」
「……わかった。話してくれ」
(婚約者にしたい人物? まさか……)

 私の言葉に、お父様は少しだけ驚いていた。
 しかし、それは私が思っていた反応ではない。もっと、驚くと思っていたのである。
 もしかして、お父様は私が何を言い出すか察しているのだろうか。心の声が聞こえる訳でもないのに、そこまで予測していたなら、それはとてもすごいことである。

「ロウィードはどうでしょうか?」
「ロウィードか……」
(やはり、ロウィードか……)

 本当に、お父様は私の心を見抜いていたようだ。
 恐らく、前回のアピールからそう予想していたのだろう。だが、それは構わない。私も、ばれていいつもりでそう言ったからだ。

「彼は、私のことをいつも助けてくれました。そんな彼と、私は婚約したいと思っています」
「それは……」
(それは……)
「私は婚約破棄しました。複雑な立場にあります。そんな私の婚約者は、中々見つからないでしょう。ですが、ロウィードなら受け入れてくれます。彼の両親は、私と彼が結ばれるのを望んでいるようですから……」
「ふむ……」
(我が娘ながら、中々恐ろしいな……まさか、そこまで考えての提案とは……)

 お父様は、私の思考に感心していた。
 だが、私は別にすごいことをしている訳ではない。心の声が聞こえているから、この思考に至っているだけである。最も、この能力がすごいといえるのかもしれないが。

「確かに、お前の言っていることは正しい。その婚約の選択肢は、私も考えていたからだ」
(ふむ……ここは、話に乗ってもいいか。どうなるかはわからないが、そこまで悪くない選択だろう)
「そうですか」
「とりあえず、そういう風に話を進めておこう。近日中には、動きがあるはずだ」
(さて、これからどうなるか。まあ、進めてからだな……)
「はい、わかりました」

 お父様は、私の話を受け入れてくれた。
 とりあえず、話を進めてみるという感じだ。
 それなら、私も構わない。結局は、あちらの同意が得られなければならないので、それは望む所である。
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