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 私は、イルファー様とともに、客室にいた。
 ルヴィドは、レルミアの道を正すために、彼女の部屋に行っている。妹と、色々と話しているだろう。

 彼がどのような話をしているか。それは、まったくわからない。
 だが、その話をきっと妹はきちんと聞いているはずだ。ルヴィドの言葉なら、耳に届くはずである。

「ルヴィドのことが心配か?」
「いえ、心配はしていません」
「ほう?」
「私は、彼がレルミアときちんと話し合えると信じています。わがままな妹ですが、長い間いなくなっていた兄に対してなら、少し態度も和らぐでしょう」

 彼は、このフォルフィス家の人間でありながら、この家にいなかった。そんな彼だからこそ、妹を変えられるのではないか。私は、そのように思っているのだ。
 レルミアも、流石にルヴィドのことは心配していた。だから、彼に対してまで、あのわがままな態度は取らないだろう。きっと、ゆっくりと話し合えるはずだ。

 イルファー様の予想が正しければ、あの妹は拗ねているという面もある。だが、その拗ねも、ルヴィド相手には発生しないはずだ。
 とにかく、ルヴィドでなければ、今の妹を正しい道に導くことはできないのだろう。彼には色々と申し訳ないが、頑張ってもらいたい。

 最も、それは今回一回で実現できるわけではないだろう。
 長年で固まった妹の考えを変えるには、きっと時間はかかるはずだ。その間、二人をきちんと支えれるように、私達も色々と考えていかなければならない。

「でも、イルファー様はすごいですね……」
「私がすごい?」
「ええ、だって、レルミアの気持ちを理解していたでしょう? そんなことは、私達はまったく気づいていませんでした……」

 そこで、私はイルファー様を称賛した。
 あの妹の複雑な心情を理解していたというのは、驚くべきことである。
 そんなことは、私も両親もまったく気づいていなかった。それを見抜いていた彼が、心からすごいと思うのだ。

「それは、当然のことだ。身内から見るのと、外から見るのでは人の評価とは変わるものだ。お前達がわからなかったということが、理解できない訳ではない」
「そうなのでしょうか?」
「ああ……だが、私はそれでも、お前達はあの妹の心情を慮るべきだったとは思っているがな。それができていれば問題がなかったのだ。特に、お前の両親に対しては、厳しい評価を下すしかない」
「はい……」

 イルファー様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 確かに、外から見てわかることを、私達が理解していなかったことは問題だ。
 それを理解して、レルミアと向き合えていれば。もしかしたら、彼女ももっと違う人生を歩めていたかもしれないのだ。
 それが、難しいことでも、私達はできなければならなかった。あの妹の家族として、できなければならなかったのだ。
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