家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗

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5.お兄様とお姉様

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 私には、お兄様とお姉様がいる。
 お兄様の名前は、イルフェン。お姉様の名前は、ウェリーナだ。

「お兄様、お姉様、おはようございます」
「ああ、おはよう。エルミナ」
「おはよう、エルミナ。今日も元気そうね」

 私は、二人と朝の挨拶を交わした。
 二人とも、私に笑顔を見せてくれている。

 両親と同じく、二人も私のことをとても愛してくれている。
 家族全員仲が良く、私に愛を向けてくれているのだ。

 それは、ゲームとは正反対の状況である。
 どうしてこんなにも違うのか。それはよくわからない。
 そもそも、この世界とあのゲームの世界、それは関係しているのだろうか。それすらも、よくわからなくなってくる。

 ただわかるのは、私が今幸せであるということだ。
 こんな家族に囲まれているのだから、歪むなんてあり得ない。それは、はっきりとわかる。

「父上や母上とは、もう会ったのか?」
「あ、はい。会いましたよ」
「そこで何か言われたりしたか?」
「え? えっと……特別なことは言われていないと思います」

 そこで、イルフェンお兄様は、私にそのような質問をしてきた。
 その質問の意図が、私にはよくわからない。何かあったのだろうか。

「お兄様、そんな聞き方をしたら、エルミナが心配してしまいます」
「む……そうか」
「ごめんなさいね、エルミナ。今は言えないのだけれど、私達はあなたに関するとある秘密をお父様とお母様から教えてもらっているの」
「とある秘密?」

 ウェリーナお姉様の言葉に、私は首を傾げる。
 これは一体、どういうことなのだろうか。

「まったく、お兄様はいつもそうですよね……探りを入れるにしても、もう少し上手い言い方があると思うのですけど」
「……それはすまなかった」
「まあ、それがお兄様の美徳でもあるのですけど……」

 お姉様のお兄様に対する評価に関しては、私も同意である。
 彼は、とても真っ直ぐな人だ。その真っ直ぐさは、長所でも短所でもある。

 お兄様のそういう所が、私は嫌いではない。
 だが、先程のように不利に働くことがあるのも事実である。

「えっと……それで、その秘密の内容というものは、まだ聞かせてもらえないのですか?」
「ええ……そうね。それはお父様やお母様が言うことでしょうし。もっとも、今日の内には知らされるのではないかしら」
「そうなんですね……」

 二人がどのような秘密を抱えているのか。それは少し気になった。
 だが、恐らくそれは悪いことではないのだろう。二人の様子からは、そう考えられる。

 それなら、私はお父様やお母様が知らせてくれるまで待つだけだ。
 今日の内には知らせてもらえるようなので、それ程そのことについて悩むこともないだろう。

「さて、そろそろ朝食に向かいましょうか。いつまでも話していたら、食事が冷めてしまうわ」
「あ、そうですね」
「うむ……」

 お姉様の言葉に、私とお兄様はゆっくりと頷いた。
 こうして、私達は三人揃って食堂に向かうのだった。
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