商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう？

２（アルシーナ視点）

　私の名前は、ファルテリナ・ロガルサ。ウェンシィ王国の公爵令嬢である。
　私には、ドルビニス公爵家の三男であるバルガインという婚約者がいる。はっきりと言って、彼はあまり褒められる人間ではない。
　バルガインは、博打好きだった。賭博施設に通っては、その金を使い果たすようなろくでもない人間だったのだ。
　当然のことながら、そんな男とは結婚したくない。個人的にも嫌だし、ロガルサ公爵家の未来を考えても避けるべきである結婚であることは明白だ。

　そう思って、私は何度も彼との婚約を破棄するべきだと進言してきた。
　だが、お父様やお母様は断固としてそれを認めず、彼を受け入れるべきだと言ってきた。もし彼が博打に嵌っているというなら、それをやめさせる努力をしろと言ってきたくらいである。

　どうして、両親がここまであの男との婚約に拘るのか。それには、ある理由があった。
　ロガルサ公爵家には、私と妹しか子供が生まれていない。そんなロガルサ公爵家にとって、バルガインとの婚約は不可欠であるようだ。
　ドルビニス公爵家は、ロガルサ公爵家と親類の関係にあるらしい。二つの家の血を辿ると、同じ血筋に辿り着くそうだ。
　貴族というものは、血を重要視する。そのため、ロガルサ公爵家と同じ血を引いているあの男と婚約することは、とても重大なことであるらしい。

　だが、そんな事情があったとしても、バルガインという男をロガルサ公爵家に迎え入れるというのは避けるべきことである。
　あの男がこの公爵家にもたらすのは破滅でしかない。私はそれを確信していた。必ず後悔することになる。両親にはそう何度も言ってきた。
　しかし、両親を説得することは難しかった。二人とも、断固として婚約破棄を認めてくれなかったのだ。

「ファルテリナ・ロガルサ公爵令嬢、あなたにはとある嫌疑がかけられている」
「え？」
「エムリア・ルフォーリ伯爵令嬢への暴行罪だ」

　そんなことで悩んでいるある日、私に信じられない知らせが届いた。それは、私がとある令嬢に危害を加えたという知らせである。
　当然、私にそんな覚えはない。意味がわからない知らせに、私は困惑することしかできなかった。