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13.さらなる秘密

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「父上に言われて、ジグルドさんが関係を持っていた女性達のことを調べていたけど、どうやらこちらも大変みたいだ」
「あら、そうなの?」

 弟のイルギアは、私とエルクドさんに対して苦い顔をしていた。
 その表情からは、嫌悪のような感情が伝わってくる。それは恐らく、ジグルド様に対するものであるだろう。

「ああ、若い女性の方は妊娠しているようだ」
「それは……ややこしいことになりそうな事実ね」
「まったくだよ。正直、ジグルドさんのことは軽蔑してしまうね」

 イルギアは、ジグルド様に対してかなり辛辣な口振りだった。
 気持ちは私も同じである。ジグルド様は、本当に最低な人だ。

「……血は争えないということでしょうかね?」
「エルクドさん……」
「マルディード伯爵と同じように女性に手を出して、子供を作って、一体どれだけの過ちを犯せば気が済むのか……」

 エルクドさんは、とても悲しそうな目をしていた。
 マルディード伯爵の子供である彼は、きっと色々と苦労してきたのだろう。理由もわからず父親がいないというのは、きっととても辛いことだったはずだ。

「その女性と子供を、ジグルド様はどうするつもりなのかしら? その辺りについては、わかっていないの?」
「ああ、ただ、その女性の周りに例のチンピラ達がうろついているという報告を受けている」
「それは……」
「それがジグルドさんの指示なのか、また指示であってもどういうことなのかはわからない。ただそういう報告は受けているとだけ伝えておくよ」

 イルギアからの情報は、現状では判断がつかないものだった。
 最悪の場合は、ジグルド様がその女性のことも抹殺しようとしているということだろうか。彼女が妊娠したことを疎んで、彼がそういうことをする可能性がないという訳ではない。
 ただ、そう断言できる要素もないため、今は頭の片隅に留めておくとしよう。

「その人の安全については、確保しているのよね?」
「ああ、それはもちろんだ。これ以上、ジグルドさんの被害者を増やすつもりはない。こちらも色々と対策させてもらっているよ」
「心強い限りだわ」

 お父様やイルギアのおかげで、こちらは万全の状態である。
 頼りになる身内がいるというのは、私にとってはとても幸運なことだといえるだろう。私一人だったら、エルクドさんを助けられたかどうかは怪しいものだ。

「まあ、後はマルディード伯爵からの返信待ちといった所かな。父上は諸々のことも含めて手紙を出している訳だし、僕からがこれからどうするかの判断は、返信があってからだ」
「ええ、いい返事が返って来るといいのだけれど……」

 私は、イルギアの言葉にゆっくりと頷いた。
 マルディード伯爵は、悪い人ではないというのが私の見解だ。そんな彼なら、エルクドさんのことも悪いようにはしないと思える。
 ただ、ジグルド様のように油断が本性を隠しているという可能性もあるし、安心することはできない。とにかく、彼からの返答を待つことにしよう。
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