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10.切り捨てるべきもの
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私はリオレス殿下とともに、国王様の前にいた。
王城において、未曾有の問題が起こっている最中ではあるが、私達は話し合いの場を設けていた。いやこれは、問題が起こっているからこそのものなのだが。
「父上、お忙しい中時間を割いていただきありがとうございます。手短に僕の考えを話します」
「うむ……」
「兄上を捕まえることは難しいでしょう。それなら兄上は切り捨てるべきです」
「……なるほど」
リオレス殿下は、端的に言葉を発した。
国王様もそれに、短く頷く。今のやり取りだけで、二人はそれなりに通じ合ったようだ。
「ラウヴァン兄上は、強引な手を使ってソネリア嬢を侍女として迎え入れました。それを理由として、王家から排除していたということにしましょう。それで納得してもらえるとは思えませんが、何もしないよりはマシでしょう」
「せめてもの体裁を保てるように動くべきということだな。わかった。今の状況でとれる最善の策を取るとしよう」
リオレス殿下の提案に類することは考えていたか、あるいは一国の統治者だからか、国王様はなんとも冷静なものであった。
ともあれラウヴァン殿下は、切り捨てられることになった。ただそれはそこまで強い効果が見込めるものではない。体裁を取り繕うためのものだということは、明白だからだ。
「それから僕とユーリア嬢との婚約を認めていただきたい。兄上の行動によって、ラスタード王国は弱ることでしょう。今こそヤウダン公爵家との結束が必要です」
「ふむ……ユーリア嬢、君には申し訳ないが、そうしてもらえるか?」
「もちろんです」
国王様からの質問に、私は力強く頷いた。
ラスタード王国の危機は、ヤウダン公爵家の危機である。協力を惜しむつもりなどはない。
お父様には事後報告になってしまうが、その辺りも問題はないだろう。ソネリアの件に関しては、私が判断するように言われている。今は少しずれてしまったが、それでもその範疇だ。
「それならば迅速にそれらの事実を公表しなければならない……ラウヴァンの捜索も打ち切るとしよう」
「……兄上が見つかるというなら話は少し変わってきますが」
「可能性は低いだろう。それに見つかったとしても大筋は変わらん。このようなことをした以上、奴を王家から追い出さない訳にはいかん。もちろん、見つかった場合は監視の目を光らせてのことにはなるが」
ラウヴァン殿下は、もう王家としてここには戻って来られない。彼はそれだけのことをしたのだ。恐らくソネリアに関して、セルダン子爵家も同じ対応を取るだろう。
とはいえ、それは二人には関係がないことだ。そもそも戻ってくるつもりなどないからこそ、駆け落ちなどという大それたことをしたのだろうし。
王城において、未曾有の問題が起こっている最中ではあるが、私達は話し合いの場を設けていた。いやこれは、問題が起こっているからこそのものなのだが。
「父上、お忙しい中時間を割いていただきありがとうございます。手短に僕の考えを話します」
「うむ……」
「兄上を捕まえることは難しいでしょう。それなら兄上は切り捨てるべきです」
「……なるほど」
リオレス殿下は、端的に言葉を発した。
国王様もそれに、短く頷く。今のやり取りだけで、二人はそれなりに通じ合ったようだ。
「ラウヴァン兄上は、強引な手を使ってソネリア嬢を侍女として迎え入れました。それを理由として、王家から排除していたということにしましょう。それで納得してもらえるとは思えませんが、何もしないよりはマシでしょう」
「せめてもの体裁を保てるように動くべきということだな。わかった。今の状況でとれる最善の策を取るとしよう」
リオレス殿下の提案に類することは考えていたか、あるいは一国の統治者だからか、国王様はなんとも冷静なものであった。
ともあれラウヴァン殿下は、切り捨てられることになった。ただそれはそこまで強い効果が見込めるものではない。体裁を取り繕うためのものだということは、明白だからだ。
「それから僕とユーリア嬢との婚約を認めていただきたい。兄上の行動によって、ラスタード王国は弱ることでしょう。今こそヤウダン公爵家との結束が必要です」
「ふむ……ユーリア嬢、君には申し訳ないが、そうしてもらえるか?」
「もちろんです」
国王様からの質問に、私は力強く頷いた。
ラスタード王国の危機は、ヤウダン公爵家の危機である。協力を惜しむつもりなどはない。
お父様には事後報告になってしまうが、その辺りも問題はないだろう。ソネリアの件に関しては、私が判断するように言われている。今は少しずれてしまったが、それでもその範疇だ。
「それならば迅速にそれらの事実を公表しなければならない……ラウヴァンの捜索も打ち切るとしよう」
「……兄上が見つかるというなら話は少し変わってきますが」
「可能性は低いだろう。それに見つかったとしても大筋は変わらん。このようなことをした以上、奴を王家から追い出さない訳にはいかん。もちろん、見つかった場合は監視の目を光らせてのことにはなるが」
ラウヴァン殿下は、もう王家としてここには戻って来られない。彼はそれだけのことをしたのだ。恐らくソネリアに関して、セルダン子爵家も同じ対応を取るだろう。
とはいえ、それは二人には関係がないことだ。そもそも戻ってくるつもりなどないからこそ、駆け落ちなどという大それたことをしたのだろうし。
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