寵愛していた侍女と駆け落ちした王太子殿下が今更戻ってきた所で、受け入れられるとお思いですか?

木山楽斗

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14.平和な村で

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 私とリオレス殿下は、ネルチャム村の中を歩き回っていた。
 これは一応視察ということになっている。民の生活を知るということは、上に立つ者にとっても大事なことだ。
 とはいえ、私達のような身分の者達が来訪して、普通通りに生活できる訳でもない。周囲の視線は、こちらに集中している。

「この村の方々は、ヤウダン公爵家に対して何も思っていないものなのでしょうか?」
「そうですね……まあ、ヤウダン公爵家は合流する前から、王国と激しく争っていた訳でもありませんからね。少なくともこの村の方にまで被害が及ぶようなことはなかったはずです。ご年配の方々としても、敵意を抱く理由はないでしょう」

 ネルチャムは、ヤウダン公爵家などの領地から考えるとかなり離れた場所にある。立地から考えても、二国の争いとは離れているということだろう。
 それは私にとって、都合が良いことだった。今はとにかく、こちらを受け入れてもらわなければならない状況だ。敵意などがない者達からの指示はとりあえず受けておきたいものだ。

「まあ、リオレス殿下の存在も大きいのでしょうね……」
「そうかもしれません。皆さんは僕のことを慕ってくれています。僕は王家として当然のことをしたまでなのですが……」
「王家として当然であることは、簡単なことではありませんよ……あら?」

 リオレス殿下と話していた私は、そこで足を止めることになった。
 それは一人の幼い少女を見つけたからだ。その少女は周囲を何度か見渡した後、こちらに近づいてきた。視線からして、恐らく目的は私だ。
 その瞬間、村の空気が重くなった。理由は明白だ。少女によって問題が起こるかもしれない。皆それが頭に過ったのだろう。

「……あなたはだあれ?」

 近づいてきた少女は、私に対して首を傾げた。
 彼女はきっと、リオレス殿下の隣にいる女性のことが気になって仕方ないのだろう。興味津々といった感じだ。

「……私の名前はユーリアよ。私に何か用かしら?」
「きれい……」
「え?」

 私の返答に、少女は頬を赤くした。
 それはつまり、私の顔を見てそうなったということだろうか。
 私はリオレス殿下の方を見る。すると彼も目を丸めていた。

「ノーラ、どうしたんだい?」
「リオレスさま、ユーリアさまはリオレスさまのおよめさんなの?」
「え? ああ、そうだけれど……」
「すごい……びなんびじょだ……」

 ノーラと呼ばれた少女はなんとも楽しそうにしていた。そういうお年頃、ということなのだろうか。私達の関係について、きゃあきゃあ言っている。
 それに私とリオレス殿下は、顔を見合わせて笑顔を浮かべた。なんとも平和なものだ。ここ最近は良くないことが続いていたが、なんだかとても心が落ち着いた。

「ノーラちゃん、これからよろしくね」
「うん……ふふふ」
「どうしたの?」
「おともだちがふえちゃった……」
「お友達……ふふ、そうね」
「す、すみません!」

 私がノーラと戯れていると、慌てた様子でやってきた女性が彼女の体を持ち上げた。
 それはどうやら、母親であるらしい。彼女は私達に頭を何度も下げてきた。私達はそれを笑って許すのだった。
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