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episode1 私、みえるんです
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不思議なもので、よくもまあ、ここまで整ったものだと
感心するような顔立ちも、子供の頃から毎日見ていると、
慣れてしまう。それでも、長身で細身の躰に、ほどよく
筋肉がついた、引き締まった躰は、さすがに、ちょっと
どきりとした。
「青のチェックですか」
「は?」
「今日のパンツ」
「ばーか」
斗哉が鼻で笑う。つい最近、小学6年までは、
お風呂だって一緒に入っていたのだ。二人きりの
部屋で、斗哉が裸になったところで艶やかなムード
にはならない。なる、わけがない。つばさは何となく、
そのことが面白くなくて口を尖らした。
「ほら、宿題もってきたんだろ?早く出しなさい」
いつもの部屋着に着替えた斗哉が、床に胡坐をかいて、
とんとん、と指先でガラステーブルを叩く。
つばさの宿題の面倒を見る時は、いつもテーブルで
顔を突き合わせて勉強するのだ。そして、つばさを家に
帰してから、斗哉は予習と称して、難しい参考書を広げる。
深夜を過ぎても、灯りが消えない斗哉の部屋を、
つばさは時々、自室のベッドから眺めていた。
「わかってるって」
もたもたと、一問も解けていない綺麗なプリントを広げる
つばさをよそに、シャーペンを手にした斗哉はさくさくと問題を
解いていく。つばさは、そーっと、首を伸ばして斗哉の答えを
盗み見た。そして高2になって、彼と同じクラスになれたことを
感謝した。
「お前、考える気あるの?」
つばさの視線に気付いた斗哉が、あきれた眼差しを向ける。
「だって、全然わかんないんだもん」
つばさは肩を竦めて、へへっ、と笑った。
「ごめん。私、台本覚えるからさ。それ終わったら、
斗哉のプリント見せて」
顔の前で手を合わせて、斗哉様、と拝む。
斗哉は、この展開を予想していたように、はいはい、
と視線をプリントに戻した。
「学際の台本も、しっかり覚えろよな。来週だぞ。
俺もつばさも、主役なんだから。セリフ入ってなかったら
洒落になんないだろ」
すらすら、と問題を解きながら、斗哉がボヤく。
「そうだけど。『白雪姫』だったらさ、セリフ度忘れしても、
アドリブ利きそうじゃない?ストーリーは頭に入ってる
んだし、きっちり暗記しなくても何とかなるよ」
ぺら、と台本をめくりながら、つばさは頬杖をつく。実際、
演劇の後半は毒リンゴを食べて眠っている時間だってある。
前半のセリフさえしっかり頭に入れておけば、大丈夫だ。たぶん。
ホントだな?と懐疑的な目を向けて、斗哉が息をついた。
そして、仕方なさそうに、そう言えば、と話題を変えた。
「今日は、来るの遅かったみたいだな。
俺よりずいぶん早く帰ったのに、何かあったのか?」
斗哉にちら、と顔を覗かれて、つばさは肩を竦める。
いつもいつも、目の前にいる幼馴染は、勘がいい。
「うん、まあ。いつもの感じで、ちょっと……ね」
つばさの言うところの“いつもの感じ”を理解できるのは、
家族以外で斗哉だけだ。そして、斗哉がそのことを
心配してくれているのも、つばさは知っている。
だから、何となく歯切れが悪くなってしまう。
「いつも言ってるけど、あんまりそういうのに
関わると、いつか痛い目に合うぞ。何かあったって、
澄子さんは遠くに住んでるんだし、俺だって……」
そこまで言った斗哉の言葉を、つばさは堪らず遮った。
感心するような顔立ちも、子供の頃から毎日見ていると、
慣れてしまう。それでも、長身で細身の躰に、ほどよく
筋肉がついた、引き締まった躰は、さすがに、ちょっと
どきりとした。
「青のチェックですか」
「は?」
「今日のパンツ」
「ばーか」
斗哉が鼻で笑う。つい最近、小学6年までは、
お風呂だって一緒に入っていたのだ。二人きりの
部屋で、斗哉が裸になったところで艶やかなムード
にはならない。なる、わけがない。つばさは何となく、
そのことが面白くなくて口を尖らした。
「ほら、宿題もってきたんだろ?早く出しなさい」
いつもの部屋着に着替えた斗哉が、床に胡坐をかいて、
とんとん、と指先でガラステーブルを叩く。
つばさの宿題の面倒を見る時は、いつもテーブルで
顔を突き合わせて勉強するのだ。そして、つばさを家に
帰してから、斗哉は予習と称して、難しい参考書を広げる。
深夜を過ぎても、灯りが消えない斗哉の部屋を、
つばさは時々、自室のベッドから眺めていた。
「わかってるって」
もたもたと、一問も解けていない綺麗なプリントを広げる
つばさをよそに、シャーペンを手にした斗哉はさくさくと問題を
解いていく。つばさは、そーっと、首を伸ばして斗哉の答えを
盗み見た。そして高2になって、彼と同じクラスになれたことを
感謝した。
「お前、考える気あるの?」
つばさの視線に気付いた斗哉が、あきれた眼差しを向ける。
「だって、全然わかんないんだもん」
つばさは肩を竦めて、へへっ、と笑った。
「ごめん。私、台本覚えるからさ。それ終わったら、
斗哉のプリント見せて」
顔の前で手を合わせて、斗哉様、と拝む。
斗哉は、この展開を予想していたように、はいはい、
と視線をプリントに戻した。
「学際の台本も、しっかり覚えろよな。来週だぞ。
俺もつばさも、主役なんだから。セリフ入ってなかったら
洒落になんないだろ」
すらすら、と問題を解きながら、斗哉がボヤく。
「そうだけど。『白雪姫』だったらさ、セリフ度忘れしても、
アドリブ利きそうじゃない?ストーリーは頭に入ってる
んだし、きっちり暗記しなくても何とかなるよ」
ぺら、と台本をめくりながら、つばさは頬杖をつく。実際、
演劇の後半は毒リンゴを食べて眠っている時間だってある。
前半のセリフさえしっかり頭に入れておけば、大丈夫だ。たぶん。
ホントだな?と懐疑的な目を向けて、斗哉が息をついた。
そして、仕方なさそうに、そう言えば、と話題を変えた。
「今日は、来るの遅かったみたいだな。
俺よりずいぶん早く帰ったのに、何かあったのか?」
斗哉にちら、と顔を覗かれて、つばさは肩を竦める。
いつもいつも、目の前にいる幼馴染は、勘がいい。
「うん、まあ。いつもの感じで、ちょっと……ね」
つばさの言うところの“いつもの感じ”を理解できるのは、
家族以外で斗哉だけだ。そして、斗哉がそのことを
心配してくれているのも、つばさは知っている。
だから、何となく歯切れが悪くなってしまう。
「いつも言ってるけど、あんまりそういうのに
関わると、いつか痛い目に合うぞ。何かあったって、
澄子さんは遠くに住んでるんだし、俺だって……」
そこまで言った斗哉の言葉を、つばさは堪らず遮った。
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