30 / 173
episode2 おかしな三角関係
30
しおりを挟む
「うそぉ~」
頭を抱えてしまったつばさに、真理は尚も、耳打ちした。
「あーあ、黒沢が可哀そう。幽霊とは言え、あんたが
男と一晩を明かした、なんて知ったら卒倒しちゃう」
一晩を明かしたなどと、艶めかしい言い方を
されて、つばさはさらに動揺する。
「違うって!涼介は見守ってくれてただけだし、
斗哉とは、まだそんなんじゃないし!!」
「ふうん。まだ、ねぇ……」
さて、と真理は腰を上げて大きく伸びをした。
うっかり声を大にしてつばさが喋ってしまったせいで、
布団の中のクラスメイトが、もぞもぞと動いている。
どうやら、起こしてしまったようだ。
「真理ぃ……」
情けない顔で、真理を見上げるつばさに、くるりと
振り返ると、真理はピシッ、と鼻先を指さして言った。
「とにかく、あんたは自分の気持ちをしっかり持つこと。
生身の男も幽霊も一緒。男は男だからね!ふらふら
してると、付け込まれちゃうよ?」
そう言って、ばさ、と真理が髪を払った時、
部屋の入り口の方から声がした。
「うるさいなぁ……なに騒いでんのよ」
一番廊下側に寝ていたより子が、むくりと起き上
がって眼鏡をかけている。つばさは、口元に人差し
指をあてて、しぃ、と微笑んだ真理に頷くと、どさ、
と枕に顔を埋めた。
「でね、その加奈子って言う涼介の彼女に、
私が似てるんだって」
修学旅行二日目。
つばさは眠い目を擦りながら、隣に並んで歩く
斗哉に一部始終を話していた。現地を自由散策する
という時間だが、何となく斗哉と土産屋を覗いて歩いて
いるだけで、まったく楽しくない。それもそのはずだった。
とてつもなく、斗哉の機嫌が悪い。
涼介がカーテンを閉めてくれて、一晩、付き添っていてくれた、
という話をした辺りから、斗哉は口を噤んでしまったのだ。
つばさは、無表情のまま、まっすぐ前を向いて歩く斗哉の
袖をぐい、と掴んだ。いつもなら、つばさの歩幅に合わせて
歩いてくれるのに、今日は追いつくのがやっとだ。
「ねぇ、もうちょっと、ゆっくり歩いてよ」
息を切らしながら不平を言ったつばさに、斗哉はピタリと
立ち止まった。
「お前さ、今日もそいつに、側にいてもらうつもり?」
前を向いたままの斗哉から、いつもより低い声が聴こえる。
つばさは、逸らされた斗哉の顔を覗き込みながら、
少し考えて頷いた。
「たぶん。でも、本当に、涼介は見守ってくれてる
だけだし、昨日だって涼介が側にいてくれたから、
私も安心して眠れたんだし……」
「つばさが寝てる間に、そいつが変な気起こしたら
どうするんだよ?幽霊って言っても、男だぞ?」
斗哉が眉を吊り上げて、つばさを見た。
12年以上付き合ってきて、斗哉がこんなに
怖い顔をしたのは初めてだ。
「そんな事言われたって……斗哉は、私がどんな
怖い思いしたかわかんないから、そういう風に
言えるんだよ。涼介はいい奴だし、涼介が側に
いてくれるだけで、本当に安心できるんだから!」
斗哉の目が一層怖いものに変わって、つばさは
思わず握っていた袖を離した。斗哉がため息をつく。
「あっそ。じゃあ、ずっとその男に守ってもらえば?
どうせ俺じゃ何の役にも立たないしな」
突き放すようにそう言って、斗哉は歩き始めた。
頭を抱えてしまったつばさに、真理は尚も、耳打ちした。
「あーあ、黒沢が可哀そう。幽霊とは言え、あんたが
男と一晩を明かした、なんて知ったら卒倒しちゃう」
一晩を明かしたなどと、艶めかしい言い方を
されて、つばさはさらに動揺する。
「違うって!涼介は見守ってくれてただけだし、
斗哉とは、まだそんなんじゃないし!!」
「ふうん。まだ、ねぇ……」
さて、と真理は腰を上げて大きく伸びをした。
うっかり声を大にしてつばさが喋ってしまったせいで、
布団の中のクラスメイトが、もぞもぞと動いている。
どうやら、起こしてしまったようだ。
「真理ぃ……」
情けない顔で、真理を見上げるつばさに、くるりと
振り返ると、真理はピシッ、と鼻先を指さして言った。
「とにかく、あんたは自分の気持ちをしっかり持つこと。
生身の男も幽霊も一緒。男は男だからね!ふらふら
してると、付け込まれちゃうよ?」
そう言って、ばさ、と真理が髪を払った時、
部屋の入り口の方から声がした。
「うるさいなぁ……なに騒いでんのよ」
一番廊下側に寝ていたより子が、むくりと起き上
がって眼鏡をかけている。つばさは、口元に人差し
指をあてて、しぃ、と微笑んだ真理に頷くと、どさ、
と枕に顔を埋めた。
「でね、その加奈子って言う涼介の彼女に、
私が似てるんだって」
修学旅行二日目。
つばさは眠い目を擦りながら、隣に並んで歩く
斗哉に一部始終を話していた。現地を自由散策する
という時間だが、何となく斗哉と土産屋を覗いて歩いて
いるだけで、まったく楽しくない。それもそのはずだった。
とてつもなく、斗哉の機嫌が悪い。
涼介がカーテンを閉めてくれて、一晩、付き添っていてくれた、
という話をした辺りから、斗哉は口を噤んでしまったのだ。
つばさは、無表情のまま、まっすぐ前を向いて歩く斗哉の
袖をぐい、と掴んだ。いつもなら、つばさの歩幅に合わせて
歩いてくれるのに、今日は追いつくのがやっとだ。
「ねぇ、もうちょっと、ゆっくり歩いてよ」
息を切らしながら不平を言ったつばさに、斗哉はピタリと
立ち止まった。
「お前さ、今日もそいつに、側にいてもらうつもり?」
前を向いたままの斗哉から、いつもより低い声が聴こえる。
つばさは、逸らされた斗哉の顔を覗き込みながら、
少し考えて頷いた。
「たぶん。でも、本当に、涼介は見守ってくれてる
だけだし、昨日だって涼介が側にいてくれたから、
私も安心して眠れたんだし……」
「つばさが寝てる間に、そいつが変な気起こしたら
どうするんだよ?幽霊って言っても、男だぞ?」
斗哉が眉を吊り上げて、つばさを見た。
12年以上付き合ってきて、斗哉がこんなに
怖い顔をしたのは初めてだ。
「そんな事言われたって……斗哉は、私がどんな
怖い思いしたかわかんないから、そういう風に
言えるんだよ。涼介はいい奴だし、涼介が側に
いてくれるだけで、本当に安心できるんだから!」
斗哉の目が一層怖いものに変わって、つばさは
思わず握っていた袖を離した。斗哉がため息をつく。
「あっそ。じゃあ、ずっとその男に守ってもらえば?
どうせ俺じゃ何の役にも立たないしな」
突き放すようにそう言って、斗哉は歩き始めた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ
桜庭かなめ
恋愛
高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。
あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。
3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。
出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!
※特別編5が完結しました!(2025.7.6)
※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる