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episode2 おかしな三角関係
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怒っているような、傷付いているような顔をして
真理がつばさに言う。つばさは、はっ、としたように
顔を上げて唇を噛んだ。この友人は、誰よりも勘が
鋭くて、誰よりも自分のことを案じていてくれて、
だから、いま、こんな眼差しを自分に向けている。
つばさは、真理の気持ちが嬉しくて、同時に、とても
胸が苦しかった。
「うん。全部、真理の言う通りだよ。
今まで、黙っててごめん」
つばさは、じっと真理の目を見た。傍らで、涼介が
心配そうな顔をして二人を見守っている。
真理は、やっぱり、と息をついて、布団から抜け出した。
カーテンが閉じられている壁に背を預け、膝を抱える。
そうして、ポンポン、と隣に座るよう、つばさを促した。
「本当のことを話したら、私が離れていくとか、思ってた?」
部屋に眠る、他のクラスメイトを起こさないように
真理が声を潜める。つばさは、触れ合った肩から伝わる
真理の温もりにほっ、としながら頷いた。
「怯えさせちゃったり、気味悪がられたりするかも、
とは思ってた。でも、それは真理のことを信じてない
わけじゃなくて、今までそういうことがあったから、
真理に嫌われちゃったら嫌だなって……思った
からで……だから……」
真理が大事だから。という気持ちを上手く言葉に
出来なくて、つばさは言葉を詰まらせる。すると、
こつん、と真理の頭がつばさの頭を小突いた。
「わかってるって、そんなの。私もさ、もっと早くに
切り出せばよかったんだけど、意地になってたって
いうか……どうしても、つばさの口から言って欲し
かったんだよね。だから、気付かないフリしちゃった」
ぺろ、と舌を出して笑う。その顔はいつもの真理の
もので、つばさはつられて頬を緩めた。
「で、何があったの?ここに来てからの、あんたの
挙動不審ぶりは酷いからね。さっきのカーテンだって、
きっとあんたには原因がわかってるんでしょう?」
すべてお見通し、と言わんばかりの真理の物言いに、
つばさは思わず涼介と目を合わせた。涼介は、
ぽりぽり、と人差し指でこめかみを掻いている。
つばさは、小さく息を吐くと、まずは涼介との出会い
から順に、真理に話し始めた。
「ふうん。で、その涼介って男は、いま、そこにいるわけね?」
真理は、傍から見れば誰もいない空間に目をやって、
髪を掻き上げた。つばさと涼介が同時に頷く。
事の顛末を話しているうちに、すっかり夜が明けてしまい、
カーテンの隙間からは細く朝日が漏れている。そろそろ、
皆が起きる時間だ。
「どんな感じなの?その涼介って」
「えっとね、茶色い髪を短く刈り上げた……
お兄さん、って感じかな?イケメンだよ」
まじまじと涼介の顔を見ながら、そう言ったつばさの肩を、
涼介が照れながらパシッ、と叩く。痛いなぁ、とつばさは
口を尖らせ肩をさすった。
「イケメンねえ……」
真理が誰もいない空間をじろり、と睨む。
涼介はたじろいだ様子で、躰を硬くした。
「つばさ、あんた、気を付けなさいよ。その涼介って
男は、あんたが死に別れた恋人に似てるって言って
るんでしょう?」
「うん、まあ」
「それって、あんたが彼の好みのタイプ、って
いうことよね?」
「好みの、タイプ?」
つばさは、真理の言葉を反芻して首を傾げた。
が、その言葉を理解した瞬間、あんぐり口を開ける。
「えっっ!!私が!!?」
自分を指差して身を乗り出したつばさに、真理が
やれやれと首を振った。まさか、と思いながら涼介を
見れば……顔を赤くして天井を仰いでいる。
真理がつばさに言う。つばさは、はっ、としたように
顔を上げて唇を噛んだ。この友人は、誰よりも勘が
鋭くて、誰よりも自分のことを案じていてくれて、
だから、いま、こんな眼差しを自分に向けている。
つばさは、真理の気持ちが嬉しくて、同時に、とても
胸が苦しかった。
「うん。全部、真理の言う通りだよ。
今まで、黙っててごめん」
つばさは、じっと真理の目を見た。傍らで、涼介が
心配そうな顔をして二人を見守っている。
真理は、やっぱり、と息をついて、布団から抜け出した。
カーテンが閉じられている壁に背を預け、膝を抱える。
そうして、ポンポン、と隣に座るよう、つばさを促した。
「本当のことを話したら、私が離れていくとか、思ってた?」
部屋に眠る、他のクラスメイトを起こさないように
真理が声を潜める。つばさは、触れ合った肩から伝わる
真理の温もりにほっ、としながら頷いた。
「怯えさせちゃったり、気味悪がられたりするかも、
とは思ってた。でも、それは真理のことを信じてない
わけじゃなくて、今までそういうことがあったから、
真理に嫌われちゃったら嫌だなって……思った
からで……だから……」
真理が大事だから。という気持ちを上手く言葉に
出来なくて、つばさは言葉を詰まらせる。すると、
こつん、と真理の頭がつばさの頭を小突いた。
「わかってるって、そんなの。私もさ、もっと早くに
切り出せばよかったんだけど、意地になってたって
いうか……どうしても、つばさの口から言って欲し
かったんだよね。だから、気付かないフリしちゃった」
ぺろ、と舌を出して笑う。その顔はいつもの真理の
もので、つばさはつられて頬を緩めた。
「で、何があったの?ここに来てからの、あんたの
挙動不審ぶりは酷いからね。さっきのカーテンだって、
きっとあんたには原因がわかってるんでしょう?」
すべてお見通し、と言わんばかりの真理の物言いに、
つばさは思わず涼介と目を合わせた。涼介は、
ぽりぽり、と人差し指でこめかみを掻いている。
つばさは、小さく息を吐くと、まずは涼介との出会い
から順に、真理に話し始めた。
「ふうん。で、その涼介って男は、いま、そこにいるわけね?」
真理は、傍から見れば誰もいない空間に目をやって、
髪を掻き上げた。つばさと涼介が同時に頷く。
事の顛末を話しているうちに、すっかり夜が明けてしまい、
カーテンの隙間からは細く朝日が漏れている。そろそろ、
皆が起きる時間だ。
「どんな感じなの?その涼介って」
「えっとね、茶色い髪を短く刈り上げた……
お兄さん、って感じかな?イケメンだよ」
まじまじと涼介の顔を見ながら、そう言ったつばさの肩を、
涼介が照れながらパシッ、と叩く。痛いなぁ、とつばさは
口を尖らせ肩をさすった。
「イケメンねえ……」
真理が誰もいない空間をじろり、と睨む。
涼介はたじろいだ様子で、躰を硬くした。
「つばさ、あんた、気を付けなさいよ。その涼介って
男は、あんたが死に別れた恋人に似てるって言って
るんでしょう?」
「うん、まあ」
「それって、あんたが彼の好みのタイプ、って
いうことよね?」
「好みの、タイプ?」
つばさは、真理の言葉を反芻して首を傾げた。
が、その言葉を理解した瞬間、あんぐり口を開ける。
「えっっ!!私が!!?」
自分を指差して身を乗り出したつばさに、真理が
やれやれと首を振った。まさか、と思いながら涼介を
見れば……顔を赤くして天井を仰いでいる。
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