彼にはみえない

橘 弥久莉

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episode2 おかしな三角関係

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斗哉が俯いて、手の平にあるお守りを見つめる。その眼差しは

どこか憂いを含んでいて、つばさはまだ、言葉が足りないだろうか?

と、口を開きかけた。

「そうだな。同じものを見てやれなくても、お前にしてやれることは、

沢山あるよな」

独り言のような斗哉の言葉に、つばさは大きく頷く。その顔を

見て、斗哉は微かに口元を緩めると、不意につばさの目を

手の平で覆った。


「これから先、もし、お前が怖いものを見て怯えたら、

こうやって俺が目を隠してやるよ。怖いものが聴こえた時は、

耳を塞いでやるし、怖くて歩けない時は、俺が手を引いてやる。

だから……」

斗哉が言葉をとぎって、つばさを見つめる。つばさは、斗哉に

両耳を手で覆われたまま、自分の鼓動が早くなるのを聞いた。

「だから、つばさも、俺から離れるな」

擦れた声で、そう言った斗哉の顔が近づく。キスされる。

そう思ったつばさは、唇に息がかかった瞬間、瞼を閉じた。

ふわ、と柔らかな唇が重なって、斗哉の温もりが染みる。

いつかされた、不意打ちのキスとは違う。本物のキスだ。

触れたのはほんの数秒で、斗哉の唇が一度離される。

斗哉が伺うようにつばさの目を覗く。その眼差しを逸らすことなく、

つばさが受け止めると、耳を塞いでいた手が、撫でるように

つばさの首筋を押さえて、引き寄せた。もう一度、キスされる。

つばさは、大きくなりすぎた胸の鼓動を意識しながら、

再び目を閉じた。



----その時だった。



じゃり、と砂を踏む音がして、つばさと斗哉はびくりと躰を止めた。

恐る恐る、音のした方に首を向ければ、低学年ほどの男の子

二人が、こちらをじっと見ている。すっかり忘れていたが、

ここは街中の公園で、いまは、休日の真昼間まっぴるまだ。


「!!!!」


つばさは、飛び跳ねるように斗哉から離れると、

ぎこちない笑顔を男の子たちに向けた。

「ねぇ、チューしないの?」

野球帽を被った男の子が、にんまり笑って、鼻を擦る。

つばさは、斗哉と顔を見合わせた。

「……逃げようか?」

「うん。逃げよう」

斗哉の提案に、つばさは二つ返事で頷くと、

差し出された手を取って、足早に公園を出て行った。



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