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episode3 転入生 神崎 嵐
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「それでは、今年度に引き続き、次期生徒会長に
就任が決まりました2年A組、黒沢 斗哉さんに
ご挨拶をお願いします!!」
全校生徒から盛大な拍手を送られながら、斗哉が壇上
にあがる。その風格は、他の立候補者がまったく太刀打ち
出来ないほどの投票数を獲得しただけあって、堂々たるものだ。
つばさは、落ち着いて一礼をし、全校生徒に微笑を向ける
幼馴染の姿を、講堂の座席からじっと見守った。
「現会長の黒沢です。この青山中央高校の生徒会長として、
二期目の任期を務めることとなりました。私がこの一年で……」
耳に心地よい斗哉の声が、講堂に響きわたる。滑らかな
日本語を語る形の良い唇を眺めながら、つばさは、数日前の
出来事に思い耽った。
-----斗哉とキスをした。
それも、不意打ちではない、本物のキスだ。
つばさは、斗哉にキスをされたことが、少しも嫌じゃなかった
ことに驚いていた。涼介に迫られたあの夜、斗哉じゃなきゃ
嫌だと思ったあれは、つまり、そういうことなのだ……
つばさは、急激に変わってゆく自分の気持ちを、認めざるを
得なかった。
「また、来年も忙しくなっちゃうね。黒沢」
就任式を終え、講堂からの地下道を教室に戻りながら、
真理がつばさに言った。つばさは、まあね、と頷く。
「でも斗哉は小学校の頃からずっとクラス委員だの、
代表委員だのやってるから、忙しくしてるのが苦じゃない
んだよ。勉強も学年でトップだし、斗哉だけ一日が
24時間じゃないんじゃないかと思うもん」
実際、活動は少ないものの科学部にも所属していて、その
部長もやっている。生徒会長に、クラス委員に、クラブ部長。
この3つを熟しながら、最近は週1でコンビニの
アルバイトも始めたのだ。つばさには、とても真似できない。
真理は、ふーん、と鼻を鳴らすと、ところでさ、と声を潜めた。
「まだ黒沢には言われてないの?」
「何が?」
「だから、付き合おうって言われてないのか?
って、聞いてんの」
周囲を歩く女子に目をやりながら、真理がつばさの肩を突いた。
「う、うん。特には……」
何となく、気になっていることを訊かれて、つばさの声の
トーンが落ちる。涼介が成仏したあの公園でキスをした日から、
すでに2週間が過ぎている。期末試験があったとはいえ、
あまりに今までと変わらない斗哉の態度に、つばさ自身も
どうすればいいか、わからずにいた。
「もう。せっかく上手いこと煽ってやったのに。黒沢ってば、
本当に臆病なんだから」
ぱちん、と指を鳴らして、真理が口を尖らせる。
つばさは、何の事やらわからずに、真理の顔を覗き込んだ。
「上手く煽ったって……それ、なんの話?」
「ああ……実はね。少し前に、黒沢に教えてやったのよ。
D組の田口が、つばさに告るって言ってるよ、ってさ」
「はあっ!?何でそんな嘘ついたのっ」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでくれる?田口本人から
私が相談されたんだから、嘘でも何でもないってば!」
真理が眉を顰めて、つばさを睨む。つばさは、ごめん、と
肩を竦めながら、田口って、いったい誰だ?と首を傾げた。
「あんた、まったく自覚してないけど、結構男子に人気あるのよ」
「いやいやいや。それはないって。
だって私、誰からも告白されたことないもん」
ばさ、と髪を払いながらそう言った真理に、ひらひらと顔の前で
手を振って、つばさが笑い飛ばす。その顔を横目で睨んで、
真理は首を振った。
「そんなの、あれだけハイスペックな男ががっちりガードしてりゃ、
告白なんてできっこないでしょうよ。すでに、あんたたちがデキてる、
って噂も何度か流れてるし、よっぽど勇気のあるヤツか、空気
読めない馬鹿じゃないと告白なんてできないって」
就任が決まりました2年A組、黒沢 斗哉さんに
ご挨拶をお願いします!!」
全校生徒から盛大な拍手を送られながら、斗哉が壇上
にあがる。その風格は、他の立候補者がまったく太刀打ち
出来ないほどの投票数を獲得しただけあって、堂々たるものだ。
つばさは、落ち着いて一礼をし、全校生徒に微笑を向ける
幼馴染の姿を、講堂の座席からじっと見守った。
「現会長の黒沢です。この青山中央高校の生徒会長として、
二期目の任期を務めることとなりました。私がこの一年で……」
耳に心地よい斗哉の声が、講堂に響きわたる。滑らかな
日本語を語る形の良い唇を眺めながら、つばさは、数日前の
出来事に思い耽った。
-----斗哉とキスをした。
それも、不意打ちではない、本物のキスだ。
つばさは、斗哉にキスをされたことが、少しも嫌じゃなかった
ことに驚いていた。涼介に迫られたあの夜、斗哉じゃなきゃ
嫌だと思ったあれは、つまり、そういうことなのだ……
つばさは、急激に変わってゆく自分の気持ちを、認めざるを
得なかった。
「また、来年も忙しくなっちゃうね。黒沢」
就任式を終え、講堂からの地下道を教室に戻りながら、
真理がつばさに言った。つばさは、まあね、と頷く。
「でも斗哉は小学校の頃からずっとクラス委員だの、
代表委員だのやってるから、忙しくしてるのが苦じゃない
んだよ。勉強も学年でトップだし、斗哉だけ一日が
24時間じゃないんじゃないかと思うもん」
実際、活動は少ないものの科学部にも所属していて、その
部長もやっている。生徒会長に、クラス委員に、クラブ部長。
この3つを熟しながら、最近は週1でコンビニの
アルバイトも始めたのだ。つばさには、とても真似できない。
真理は、ふーん、と鼻を鳴らすと、ところでさ、と声を潜めた。
「まだ黒沢には言われてないの?」
「何が?」
「だから、付き合おうって言われてないのか?
って、聞いてんの」
周囲を歩く女子に目をやりながら、真理がつばさの肩を突いた。
「う、うん。特には……」
何となく、気になっていることを訊かれて、つばさの声の
トーンが落ちる。涼介が成仏したあの公園でキスをした日から、
すでに2週間が過ぎている。期末試験があったとはいえ、
あまりに今までと変わらない斗哉の態度に、つばさ自身も
どうすればいいか、わからずにいた。
「もう。せっかく上手いこと煽ってやったのに。黒沢ってば、
本当に臆病なんだから」
ぱちん、と指を鳴らして、真理が口を尖らせる。
つばさは、何の事やらわからずに、真理の顔を覗き込んだ。
「上手く煽ったって……それ、なんの話?」
「ああ……実はね。少し前に、黒沢に教えてやったのよ。
D組の田口が、つばさに告るって言ってるよ、ってさ」
「はあっ!?何でそんな嘘ついたのっ」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでくれる?田口本人から
私が相談されたんだから、嘘でも何でもないってば!」
真理が眉を顰めて、つばさを睨む。つばさは、ごめん、と
肩を竦めながら、田口って、いったい誰だ?と首を傾げた。
「あんた、まったく自覚してないけど、結構男子に人気あるのよ」
「いやいやいや。それはないって。
だって私、誰からも告白されたことないもん」
ばさ、と髪を払いながらそう言った真理に、ひらひらと顔の前で
手を振って、つばさが笑い飛ばす。その顔を横目で睨んで、
真理は首を振った。
「そんなの、あれだけハイスペックな男ががっちりガードしてりゃ、
告白なんてできっこないでしょうよ。すでに、あんたたちがデキてる、
って噂も何度か流れてるし、よっぽど勇気のあるヤツか、空気
読めない馬鹿じゃないと告白なんてできないって」
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