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episode3 転入生 神崎 嵐
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「さっき、ナースステーションで預かってきたんだ。持ち主
不明の、落し物の箱に置いてあった。これ、あんたが
あの女の子にあげたものだろう?まだ思い出せない?」
黒曜石のような真っ黒な瞳を細めて、嵐が斗哉に問いかける。
斗哉は黙ってそのキーホルダーを受け取ると、古い記憶を
手繰り寄せるように、じっと見つめた。
「もしかして………杉山 恵ちゃん、か?」
斗哉が顔を上げて嵐の顔を覗く。嵐は、正解、と言いた
げに、口元で笑んだ。
「確か……4年生の時だ。彼女は心臓が悪くて、いつも
学校を休みがちで、だからクラス委員だった俺は、何度か
プリントを届けに行った。このキーホルダーも、遠足に
行けなかった彼女へのお土産に買ってきたんだけど……
ずっと、大事に持っててくれたんだな。5年になってクラスが
分かれてからは、ずっと会ってなかったから、忘れてたよ」
ところどころ、塗装が剥げたキーホルダーを眺めて、
斗哉が唇を噛む。斗哉の話を聞いたつばさも、
ずっと記憶の奥底に眠っていた光景が、脳裏に甦った。
「斗哉っ!ドッジ行こうぜっ!!」
放課後の教室で、帰り支度をしている斗哉に、
ボールを脇に抱えたつばさが声をかけた。
つばさの後ろには数人の男子が、急くような眼差しを
向けて、待っている。真っ黒な髪は、男子と見間違える
ほどのショートヘアで、タンクトップや半ズボンから
伸びる手足は、見事に小麦色に焼けている。男子の中に
混ざれば、どこから見ても健康的な男の子にしか
見えなかったが、そのことで、つばさが悩んだことは一度も
なかった。
そんなつばさとは対照的な容姿をしていたのが斗哉だ。
如何にも、ガリ勉らしい黒のセルフフレームの眼鏡に、
ひょろ、っとした細い躰。まるで、太陽を知らないかのような
白い肌は、その辺の女子よりも透き通っていて、もう少し髪が
長ければ、きっと女子に間違えられていただろう。その斗哉が、
ランドセルの留め具をかけながら、首を振る。
「ごめん。今日は恵ちゃんの病院に届け物があるから、
遊べないんだ。また、今度仲間に入れてくれるかな?」
「そっか。じゃあ、また今度な!」
そう答えると、つばさは他の男子と背中を並べ、バタバタと
廊下を走りグランドに飛び出していった。勢いよく飛び交う
ボールを交わしながら、目で追いながら、一人、遊歩道を歩く
斗哉の後ろ姿を、盗み見た記憶がおぼろげに残っている。
「うん。私も思い出した。同じクラスだったのに、ほとんど学校
来なかったから忘れてたけど……いたね。杉山恵ちゃん」
じっと鈴を眺めていた斗哉の顔を見て、つばさは頷いた。
「その杉山恵って子が、先週亡くなってるんだ。どうして、
怨霊になったとか、どうしてあんたに執着してるとか、
彼女の心の内までは霊視できないけど、たぶんまた来るよ。
この病院にいる間にね」
つばさと斗哉の顔を交互に見て、嵐が腕を組んだ。
つばさは、どうしよう、と呟いて、無意識に斗哉の腕を掴む。
不明の、落し物の箱に置いてあった。これ、あんたが
あの女の子にあげたものだろう?まだ思い出せない?」
黒曜石のような真っ黒な瞳を細めて、嵐が斗哉に問いかける。
斗哉は黙ってそのキーホルダーを受け取ると、古い記憶を
手繰り寄せるように、じっと見つめた。
「もしかして………杉山 恵ちゃん、か?」
斗哉が顔を上げて嵐の顔を覗く。嵐は、正解、と言いた
げに、口元で笑んだ。
「確か……4年生の時だ。彼女は心臓が悪くて、いつも
学校を休みがちで、だからクラス委員だった俺は、何度か
プリントを届けに行った。このキーホルダーも、遠足に
行けなかった彼女へのお土産に買ってきたんだけど……
ずっと、大事に持っててくれたんだな。5年になってクラスが
分かれてからは、ずっと会ってなかったから、忘れてたよ」
ところどころ、塗装が剥げたキーホルダーを眺めて、
斗哉が唇を噛む。斗哉の話を聞いたつばさも、
ずっと記憶の奥底に眠っていた光景が、脳裏に甦った。
「斗哉っ!ドッジ行こうぜっ!!」
放課後の教室で、帰り支度をしている斗哉に、
ボールを脇に抱えたつばさが声をかけた。
つばさの後ろには数人の男子が、急くような眼差しを
向けて、待っている。真っ黒な髪は、男子と見間違える
ほどのショートヘアで、タンクトップや半ズボンから
伸びる手足は、見事に小麦色に焼けている。男子の中に
混ざれば、どこから見ても健康的な男の子にしか
見えなかったが、そのことで、つばさが悩んだことは一度も
なかった。
そんなつばさとは対照的な容姿をしていたのが斗哉だ。
如何にも、ガリ勉らしい黒のセルフフレームの眼鏡に、
ひょろ、っとした細い躰。まるで、太陽を知らないかのような
白い肌は、その辺の女子よりも透き通っていて、もう少し髪が
長ければ、きっと女子に間違えられていただろう。その斗哉が、
ランドセルの留め具をかけながら、首を振る。
「ごめん。今日は恵ちゃんの病院に届け物があるから、
遊べないんだ。また、今度仲間に入れてくれるかな?」
「そっか。じゃあ、また今度な!」
そう答えると、つばさは他の男子と背中を並べ、バタバタと
廊下を走りグランドに飛び出していった。勢いよく飛び交う
ボールを交わしながら、目で追いながら、一人、遊歩道を歩く
斗哉の後ろ姿を、盗み見た記憶がおぼろげに残っている。
「うん。私も思い出した。同じクラスだったのに、ほとんど学校
来なかったから忘れてたけど……いたね。杉山恵ちゃん」
じっと鈴を眺めていた斗哉の顔を見て、つばさは頷いた。
「その杉山恵って子が、先週亡くなってるんだ。どうして、
怨霊になったとか、どうしてあんたに執着してるとか、
彼女の心の内までは霊視できないけど、たぶんまた来るよ。
この病院にいる間にね」
つばさと斗哉の顔を交互に見て、嵐が腕を組んだ。
つばさは、どうしよう、と呟いて、無意識に斗哉の腕を掴む。
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