彼にはみえない

橘 弥久莉

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episode3 転入生  神崎 嵐

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「緊張してる?」

いつもより、言葉少なに躰を硬くしているつばさの肩を抱いて、

斗哉が顔を覗き込んだ。

「緊張してる。……すごく」

そんなことを言っても、この場から斗哉は逃がしてくれないだろう

と、心の中で思いながら言った。

「なんかズルイ。私ばっかり緊張してて、斗哉はぜんぜん平気で」

口を尖らせてそう言ったつばさに、斗哉はつばさの手を掴んで

自分の胸にみちびいた。触れた胸は硬く、けれど、とくとくと、

速い鼓動を伝えている。もしかしたら、つばさの鼓動よりも速いの

ではないだろうか?

「俺だって緊張してるよ。わかるだろ?心臓の音」

「ほんとだ。すごく、速い」

斗哉の胸に触れながら、つばさは上気した顔を上げた。



斗哉の瞳の中に、自分が映り込む。顔を上げなければよかった、

なんて、そう思ったところで、もう遅い。触れてしまいそうなほどに、

斗哉の唇がすぐそこにある。

「…とう…や」

たまらずに、名前を呼んだつばさの唇に、斗哉が唇を重ねた。

「ん…っ」

さっきされたキスよりも激しく、斗哉の濡れた唇が、舌が、

つばさの口の中を蹂躙していく。苦しすぎる息に、どうして

いいかわからず斗哉の胸を押しても、斗哉の腕が強く躰を

抱いていて離さない。2人の唾液が混ざりあって、ぬるぬるに

なった唇を、また斗哉が吸う。その度に、足の付け根のあたりが

じんと痺れて、つばさは強く目を閉じた。

「っは…っ」

ようやく、斗哉の唇から解放されて大きく息を吐いた。

そのまま、ベッドに押し倒されて、ぼんやりした頭で斗哉を

見上げる。そこに、よく見知った幼馴染の顔はなく、恋人の

顔をした斗哉が、瞳に熱を宿してつばさを見下ろしていた。

「好きだ。つばさ……」

熱に浮かされたようにそう言うと、斗哉がバスローブの紐を解いて、

つばさの肌を晒した。そして、すぐに与えられた刺激に、つばさは

シーツを掴んで顔を埋めた。



「やっ………あっ、斗哉っ」

ぬろ、と柔らかく生ぬるい感触が、つばさの胸の頂きを包んでいる。

斗哉が口に含んでいるのだと、理解した次の瞬間には、別の場所に

斗哉の手が伸びてきて、ショーツの中に入り込んだ。

「まって、やっ……あっ!」

自分でも信じられないような、甘い声が唇から漏れて、その声が

斗哉の愛撫を加速させてしまう。温かな唇が、舌が、つばさの肌を

這いまわりながら、痕を残しながら、斗哉の指がぬる、とつばさの

中に押し込まれた。

「あっ!!」

躰をのけぞらせたつばさの、胸の頂きを、また斗哉が口に含む。

どろどろとした快楽と、息苦しさで涙を滲ませているつばさの

躰の中を、ぴちゃぴちゃと音をさせながら、斗哉の指が擦りあげる。

痛いのに、それだけではない不思議な感覚が躰中を突き抜けて、

つばさは泣きそうな声で名前を呼んだ。



「……斗哉っ!」

愛撫の手をとめて、斗哉がつばさの頭を抱く。

荒い息をしながら斗哉が耳元で聞いた。

「ごめん、痛かった?」

斗哉の甘い声とは対照的に「すごく痛い」と低い声でつばさが

答えると、斗哉は困ったように笑って躰を起こした。

「少しでも解しておかないと……お前が辛いだろうと思って」

しゅる、とバスローブの紐を解いて、斗哉が脱ぎ捨てる。


薄暗い視界の中に、斗哉の逞しい躰が浮かび上がった。

そうして、おそるおそる視線を下にずらしたつばさは、

声にならない悲鳴を上げた。


「!!!!」



斗哉は-----パンツを履いていなかった。



しかも、どこから登場させたのか………

アルミのパッケージから蛍光色のゴムを取り出して、

するすると屹立きつりつしたに被せている。

まさか、あんなものを、いまから、自分に入れるのだろうか?



そもそも、ここはビジネスホテルで、避妊具などの備えは

ないはずだった。
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