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episodeFinal 永遠のワンスモア
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そうして、久しぶりに姉と入った風呂の中で、つばさはすべてを
ぶちまけた。嵐に好きだと言われたことも、キスをされたことも、
そのキスで濡れたことを嵐に確かめられてしまったことも。
「どうしよう。斗哉が赦してくれなかったら……」
つばさは、スン、と鼻を啜りながら言った。また、泪が零れ落ちそう
になってしまったつばさに、ふふ、月子の笑い声が聴こえる。
つばさは顔をあげて、姉を向いた。待っていた月子の視線に、
鏡越しに捉えられる。
「大丈夫よ、斗哉は。そんな簡単にあんたから離れたりしない
から。あいつは、あんたのこと全部分かったうえで、ちょっと
お灸を据えるために辛くあたったのよ」
「全部分かったうえ……って、どういう意味?」
目を丸くしたつばさに、月子は躰を洗う手を止めて言った。
「その言葉の通り、全部よ。あんたの気持ちがちゃんと自分に向い
てることも、その嵐って男に対するあんたの気持ちも、あんたが
不器用すぎることも、あの場所であんたが泣いてることも。全部、
承知のうえで、斗哉は私に迎えに行かせたんだから。大丈夫。
斗哉はあんたから離れたりしないわ。でもね……つばさ」
そこで言葉を途ぎると、月子はつばさを向いた。
「どんなにあいつの愛情が深くても、その愛情の上に胡坐を
かくようなことは、しちゃダメ。愛されてることが当たり前すぎると、
つい忘れてしまいがちだけど、目に見えないような小さな傷だって、
いくつもいくつも重なればやがてそれが大きな亀裂になって壊れて
しまうものなの。グラスが割れるようにね。だから、傷付けないように、
いつも、一番に斗哉のことを考えてあげなきゃダメ。おねーちゃんが
言ってる意味、わかる?」
「……うんっ……」
濡れた前髪の向こうから、強い眼差しを向けてそう言った月子に、
つばさは泪声で頷いた。自分はきっと、無意識のうちに斗哉の愛情に
甘えていたのだと、気付く。だから、斗哉が好きだと思いながら、
こんな風に、傷付けることになってしまったのだ。
そしてもう、同じことを繰り返さないために、考えなければならない。
自分が選ぶのは斗哉なのだと、決まっているのだから……。
ぽたぽた、と、湯船に泪を落とし始めたつばさに、月子が、もう、
と言って眉を顰める。
「わかったなら、泣かなくていいの。これ以上傷付けないように、
あんたがしっかりすればいいんだから」
「で、でもね……私まだ、斗哉に言ってないことがあるんだよ?」
「何を?」
「あっ、嵐に……あそこ触られちゃった、って……まだ、言ってない」
顔を真っ赤にしながらそう言ったつばさに、月子は思いきり口を
への字にすると、じゃーーっ、と湯桶に水を溜めて、くるりと
つばさを向いた。そして、ザバッと頭からつばさに水をぶちまけた。
「きゃっ!!!何すんの、おねーちゃん!!!」
「禊よ、禊。これで、あんたの罪は水に流されたんだから、
余計なこと斗哉に言うんじゃないわよ。悪かったと思うなら、早く嵐って
男に自分の気持ち伝えて、自覚なさい。あんたに触れるのは斗哉
だけなんだって」
ぽたぽた、と冷たい水を髪から滴らせるつばさに、月子は腰に手をあてて、
胸を張る。目の前で揺れる2つの豊かな膨らみに、目を白黒させながら
つばさが頷くと、月子はいつもの笑みに戻って言った。
「おねーちゃんは、断然、斗哉推しなの。だって、斗哉はあんたと一緒に
いるために受験する高校変えて、あんたに他の男を寄せ付けないために、
眼鏡をコンタクトに替えたんだから。あいつの世界はあんたを中心に
回ってるの。やっとあんた達がくっついてくれて安心してたんだから、
あんまり心配させないで」
自分の目を覗き込んで笑みを深めた月子に、呆けたままで頷くと、
つばさは斗哉の温かな眼差しを思い出して、また、泣きそうになった。
ぶちまけた。嵐に好きだと言われたことも、キスをされたことも、
そのキスで濡れたことを嵐に確かめられてしまったことも。
「どうしよう。斗哉が赦してくれなかったら……」
つばさは、スン、と鼻を啜りながら言った。また、泪が零れ落ちそう
になってしまったつばさに、ふふ、月子の笑い声が聴こえる。
つばさは顔をあげて、姉を向いた。待っていた月子の視線に、
鏡越しに捉えられる。
「大丈夫よ、斗哉は。そんな簡単にあんたから離れたりしない
から。あいつは、あんたのこと全部分かったうえで、ちょっと
お灸を据えるために辛くあたったのよ」
「全部分かったうえ……って、どういう意味?」
目を丸くしたつばさに、月子は躰を洗う手を止めて言った。
「その言葉の通り、全部よ。あんたの気持ちがちゃんと自分に向い
てることも、その嵐って男に対するあんたの気持ちも、あんたが
不器用すぎることも、あの場所であんたが泣いてることも。全部、
承知のうえで、斗哉は私に迎えに行かせたんだから。大丈夫。
斗哉はあんたから離れたりしないわ。でもね……つばさ」
そこで言葉を途ぎると、月子はつばさを向いた。
「どんなにあいつの愛情が深くても、その愛情の上に胡坐を
かくようなことは、しちゃダメ。愛されてることが当たり前すぎると、
つい忘れてしまいがちだけど、目に見えないような小さな傷だって、
いくつもいくつも重なればやがてそれが大きな亀裂になって壊れて
しまうものなの。グラスが割れるようにね。だから、傷付けないように、
いつも、一番に斗哉のことを考えてあげなきゃダメ。おねーちゃんが
言ってる意味、わかる?」
「……うんっ……」
濡れた前髪の向こうから、強い眼差しを向けてそう言った月子に、
つばさは泪声で頷いた。自分はきっと、無意識のうちに斗哉の愛情に
甘えていたのだと、気付く。だから、斗哉が好きだと思いながら、
こんな風に、傷付けることになってしまったのだ。
そしてもう、同じことを繰り返さないために、考えなければならない。
自分が選ぶのは斗哉なのだと、決まっているのだから……。
ぽたぽた、と、湯船に泪を落とし始めたつばさに、月子が、もう、
と言って眉を顰める。
「わかったなら、泣かなくていいの。これ以上傷付けないように、
あんたがしっかりすればいいんだから」
「で、でもね……私まだ、斗哉に言ってないことがあるんだよ?」
「何を?」
「あっ、嵐に……あそこ触られちゃった、って……まだ、言ってない」
顔を真っ赤にしながらそう言ったつばさに、月子は思いきり口を
への字にすると、じゃーーっ、と湯桶に水を溜めて、くるりと
つばさを向いた。そして、ザバッと頭からつばさに水をぶちまけた。
「きゃっ!!!何すんの、おねーちゃん!!!」
「禊よ、禊。これで、あんたの罪は水に流されたんだから、
余計なこと斗哉に言うんじゃないわよ。悪かったと思うなら、早く嵐って
男に自分の気持ち伝えて、自覚なさい。あんたに触れるのは斗哉
だけなんだって」
ぽたぽた、と冷たい水を髪から滴らせるつばさに、月子は腰に手をあてて、
胸を張る。目の前で揺れる2つの豊かな膨らみに、目を白黒させながら
つばさが頷くと、月子はいつもの笑みに戻って言った。
「おねーちゃんは、断然、斗哉推しなの。だって、斗哉はあんたと一緒に
いるために受験する高校変えて、あんたに他の男を寄せ付けないために、
眼鏡をコンタクトに替えたんだから。あいつの世界はあんたを中心に
回ってるの。やっとあんた達がくっついてくれて安心してたんだから、
あんまり心配させないで」
自分の目を覗き込んで笑みを深めた月子に、呆けたままで頷くと、
つばさは斗哉の温かな眼差しを思い出して、また、泣きそうになった。
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