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第三章:雨の中で
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(喜んでもらえてよかった。5つも食べ
られるのか心配してたけど、その様子なら
大丈夫ですね。というか、足りますか?)
くすくす、と肩を揺らしながら、携帯に
文字を綴って見せる。彼女の白身魚も、
タルタルがたっぷりかかっていて、美味し
そうだ。一口味見したいな、などという考え
が頭を擡げたけれど、さすがにそれは言えな
かった。
僕たちは広い芝生を眺めながら、時々、
言葉を交わしながら、コッペパンを食べた。
最後に、デザート代わりに食べたきな粉
あげパンは、小学校のころに給食で食べた
ものより数倍美味しくて、次に来た時も必ず
注文しようと、心に誓った。
5つのコッペパンを完食し、少し温くなった
アイスコーヒーを喉に流し込む。彼女も黒蜜
きな粉を完食して、ほうじ茶で喉を潤していた。
さわ、と吹いた風が彼女の髪を揺らして、
左耳の補聴器を僕に見せる。
ふと、あることが気になって、僕は彼女に
訊いた。
それは、朝から気になっていたことだった。
(もしかして、指文字話しづらい?)
そう言いながらも、ぎこちなく指を動かし
て見せる。せっかく覚えたのだから、有効に
使って彼女と話したいと思っているのだけれ
ど、彼女は圧倒的に、手話や指文字よりも
携帯に文字を打つことの方が多かった。
一瞬、彼女の目が逸らされて、不安になる。
そしてやはり、彼女は携帯を手に取り、
文字を打った。
(ぜんぜん、そんなことないです。
羽柴さん、指文字ちゃんと出来てるし、
手話も上手です。でも、慣れない指文字で
話すの疲れるだろうし、周囲の人から変な目
で見られるの、気になるんじゃないかと
思って)
小首を傾げるように、彼女がまた視線を
泳がせる。
-----ああ、だからか。
僕は朝からの、彼女の様子に合点がいって、
小さく息をついた。
彼女は、自分と手話や指文字を使って話す
僕が、好奇の目に晒されるのではないかと、
気にかけていたのだ。だから、意識して携帯
を使っていた。
確かに、時折、ちらほらと、視線を感じる
ことはあったのだけど……
僕は小さく首を振って、彼女を見た。
(人の目なんか気にならないよ。
まったくね。僕は手話でも、指文字でも、
何でも、市原さんとしゃべれるなら嬉しいし、
早く上手に手話を使えるようになりたいと
思って、毎日勉強してるんだから。だから、
気にせず話そうよ)
そう携帯に綴った文章を見せると、彼女は
少しだけ頬を染め、白い歯を見せた。
(ありがとう、嬉しいです。羽柴さん、
やさしいですね)
僕にわかるように、簡単な言葉を選んで、
手話で話してくれる。
られるのか心配してたけど、その様子なら
大丈夫ですね。というか、足りますか?)
くすくす、と肩を揺らしながら、携帯に
文字を綴って見せる。彼女の白身魚も、
タルタルがたっぷりかかっていて、美味し
そうだ。一口味見したいな、などという考え
が頭を擡げたけれど、さすがにそれは言えな
かった。
僕たちは広い芝生を眺めながら、時々、
言葉を交わしながら、コッペパンを食べた。
最後に、デザート代わりに食べたきな粉
あげパンは、小学校のころに給食で食べた
ものより数倍美味しくて、次に来た時も必ず
注文しようと、心に誓った。
5つのコッペパンを完食し、少し温くなった
アイスコーヒーを喉に流し込む。彼女も黒蜜
きな粉を完食して、ほうじ茶で喉を潤していた。
さわ、と吹いた風が彼女の髪を揺らして、
左耳の補聴器を僕に見せる。
ふと、あることが気になって、僕は彼女に
訊いた。
それは、朝から気になっていたことだった。
(もしかして、指文字話しづらい?)
そう言いながらも、ぎこちなく指を動かし
て見せる。せっかく覚えたのだから、有効に
使って彼女と話したいと思っているのだけれ
ど、彼女は圧倒的に、手話や指文字よりも
携帯に文字を打つことの方が多かった。
一瞬、彼女の目が逸らされて、不安になる。
そしてやはり、彼女は携帯を手に取り、
文字を打った。
(ぜんぜん、そんなことないです。
羽柴さん、指文字ちゃんと出来てるし、
手話も上手です。でも、慣れない指文字で
話すの疲れるだろうし、周囲の人から変な目
で見られるの、気になるんじゃないかと
思って)
小首を傾げるように、彼女がまた視線を
泳がせる。
-----ああ、だからか。
僕は朝からの、彼女の様子に合点がいって、
小さく息をついた。
彼女は、自分と手話や指文字を使って話す
僕が、好奇の目に晒されるのではないかと、
気にかけていたのだ。だから、意識して携帯
を使っていた。
確かに、時折、ちらほらと、視線を感じる
ことはあったのだけど……
僕は小さく首を振って、彼女を見た。
(人の目なんか気にならないよ。
まったくね。僕は手話でも、指文字でも、
何でも、市原さんとしゃべれるなら嬉しいし、
早く上手に手話を使えるようになりたいと
思って、毎日勉強してるんだから。だから、
気にせず話そうよ)
そう携帯に綴った文章を見せると、彼女は
少しだけ頬を染め、白い歯を見せた。
(ありがとう、嬉しいです。羽柴さん、
やさしいですね)
僕にわかるように、簡単な言葉を選んで、
手話で話してくれる。
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